第4話 バテレン追放令


俺は、九州の案内人であるディエゴ神父から譲り受けた馬、黒鹿毛くろかげにまたがり、島津しまづ領の薩摩国から、肥前国(のちの長崎県)の平戸ひらど島に向かうことになった。


「で?なんで平戸ひらどなんですか?」

「追放令が出てから、宣教師はみんな、平戸に潜伏しているのです」

「長崎のオームラ様は?」


俺は、ゴアでも聞き及んでいた、キリシタン大名の大村純忠おおむらすみただについて尋ねた。


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大村純忠(おおむらすみただ)

洗礼名:バルトロメオ

肥前国三城さんじょう城主であり、大村氏の第12代当主。


日本初のキリシタン大名で、長崎港を開港した人物。

イエズス会宣教師がポルトガル商人に絶大な影響力を持つことを把握していたため、布教の許可と住居の提供など便宜をはかり、宣教師や商人が多く集う地になった。

自身は勿論、領民にもキリスト教信仰を奨励。最盛期の領内のキリスト教信者は6万人を越えることに。


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「昨年、バテレン追放令の出る前月にお亡くなりになられました」

「オームラ様が?」


死の航海中に日本の状況変わりすぎだろ!!!!!!!!!!宣教師は追放で、宣教師を保護していた一番の大名が亡くなるなんて!!


「オームラ様のあとの殿様は?」

「オームラ様の息子が後を継いだのですが、追放令を機に、イエズス会の同志たちを追い出したのです」

「マジっすか~」

「マ……なんと?」

「あ、つい日本語が出ちゃいました」

「なんと。ユーリさんは日本語に精通しているのですか?」

「え?あ、まぁ、日本語には自信があります」


29年ガッツリ日本人だったんで、とは言わなかった。


「平戸は離島ですので、日本国内の情勢が落ち着くまで細々と潜伏しよう、という方針になっております」

「なんですって?え、ハハハあの、落ち着くまでっていつですか?」

「それは、わかりません」

「そんな!!!!!!!!!!!!!」


俺は感情的になり、無意識に馬の腹を蹴ってしまった。


ブルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!


「え?!」


黒鹿毛が突如の蹴りに驚き、全速力で走り出す!!


「ユーリさん!?」


ディエゴ神父の声かけに答える間もなく、馬は俺を乗せて、目的地だという方向と真反対に走り出してしまう。ちょっと待って!?俺、九州の土地勘ゼロよ!?スマホも地図もないのよ!?


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