新ユニフォーム検討会
「①番は襟と袖口が安っぽい。②番は配色が古臭い。③番はデザインこそ悪くないが、トータル性に欠ける」
会議室内で行われているのはクルーの新ユニフォームの検討会で、現在財前は客室乗務員(CA)のユニフォームをチェックしている。
『和』をコンセプトに、これまで他社で扱わなかったような斬新さを求めている財前は、容赦なくバッサリと言い切る。
「『和』をテーマにすると、黒赤金銀といった色が多用されるが、それでは他社と何ら変わりない。何度も言うが、うちは他社では扱わないような斬新かつ日本を代表するような、そんなイメージを定着させたい。……次っ!」
「はいっ」
デザインチーム責任者の岩淵は財前の凄みに圧倒されながらも、用意したサンプルの服を着た最後のモデルを手招きする。
「こちらは柏餅をイメージしたデザインです。柏の葉をイメージした色味は、抹茶色に近いくすんだうぐいす色が和の高級感を感じさせ、淡い桜色を合わせると柔らかい感じになります。緑と赤は補色ですが、この色味は和柄ではよく取り入れられる配色で、一年を通して好まれる色というデータがあります」
「ん、……続けて」
「外国の方が日本に対するイメージは『桜』が最もポピュラーなので、ここは外せないかと」
「ん、色味はいいな。質感は……」
この日初めて財前が顔を立てに振った。
制服を着ているモデルスタッフの元に歩み寄り、自ら指先で感触を確かめる。
「悪くない」
「ありがとうございます!」
「全体的にもう少し発色のある感じに仕上げるのと……」
財前は岩淵が手にしているファイルを取り上げ、モデルスタッフの目の前に立った。
「俺の手からこれを取ってみろ」
「はい?」
突然目の前にイケメン御曹司の財前が立ちはだかり、手にしているファイルを頭上に掲げたのだ。
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