雪組隊長に就任
月のウサギに爆殺スイッチ
進学先をどこにするか、考えていた冬のある日。
「私は神です。聞こえていますか。」
「はい 聞こえています。神様どうもお久しぶりです。」
「あなたと合うのは、人間に転生してからウサギをあげて、いらいですね。ウサギは元気ですか。」
「はい 。とても元気です。ウサギは最初の頃は醜い化け物と思っていましたが、今では見た目も可愛く思えます。なぜてやったり、餌をやるとすごく気持がよくなります。」
吹雪は地球消滅の巻き添えをくらい消滅した衛星。「月」だった。
思春期真っ盛りの地球が仕事もせずに、真っ赤になったドロドロのマグマを毎日、吐き出しているのを見かねて、世界最初の女イブが男アダムの肋骨から生まれたように。太陽系神が原始地球を少し引きちぎり作ったものだった。
彼女は、自分が月であったということを自覚していた。
月の化身、まさに美を絵に描いたような少女だった。彼女は自分が月であったということを素直に受け入れ育っていた。衛星だったおかげで前世の記憶少なく、転生後にこぼれ落ちた記憶が少ない。
何より、スーパーパワー 『重力低下』の力は、まともなものだったから神を信じていた。
ーーーーー高校時代ーーーーーー
高校生になったある日。初めて、吹雪の前に太陽系神が現れた。
「私は神です。本当は手のかかる奴の前にだけ現れるんですが。あなたは毎日、純粋な生活を送っていて本当に素晴らしいです。どこかの誰かとは大違いです。
そこで、あなたの願いを一つかなえてあげましょう。」
子供のように跳びはねながら、吹雪はお願いした。「私 、兎さんが欲しいです。やっぱり月だったら兎がいないとね。」
「分かりました 。その願いかなえてあげましょう。さあ。下着を脱いで鏡の前で足を開きなさい。」
股間から、黒くてボールのように丸っこく、耳の短い、つぶらな目をした兎が、ひょっこり頭を出して鼻をひくひくさせていた。
あとになって調べてわかったが、ネザーランド・ドワーフという種類の兎に、どことなくにていた。おくびょうで、普段は鼻と口だけを外側に常に出して、クンクンと鼻を動かし周りを警戒している。
あまりの可愛さに頭をなでてやると、とてもうれしそうに頭をブルブル震わせた。
鼻をこすられるのが大好きなようで、自分から頭を突き出して、吹雪の手にグリグリとこすりつけてきた。
よほど嬉しいのか、鼻をカチカチに固くして、ダラダラと口から、糸を引く粘っこいヨダレをたらした。
ヨダレをぬぐうために、兎の口を、2本の指で「クパッ」と開いて驚いた。絶対にこれは兎ではない。化け物だ。
鼻の下にある口はおぞましいものだった。丸く ぽっかり空いたその口には、一本の歯もなく、内臓が直接見えていた。入口がゆっくり上下に開閉している。
人間の小腸にも見えるが、ネトネトの透明な粘液を分泌するピンクの肉壁は、血管がいく筋も通り赤くなり、無数のイボが突き出していた。
そして、さらに大きく口を開いてみてわかったが、奥にドーム状の白い突起があり、中央部の穴から、スッパイ臭いのする酸性の白い液体がにじみ出していた。
『コイツ本物の化け物だわ。 生きた獲物を噛み切らずに、一気に根元まで丸呑みして、肉壁を使って、万力ほどの力で上下から、はさみ込んで脱出できないようにする。
わざと息の根を止めないで、獲物が窒息して暴れ回るのを中で楽しむんだ。
そしてこの白い消化液で、ゆっくりゆっくり生きたまま溶かして吸収していく。飲み込まれた生き物にとっては、こんなのただの生き地獄よ。』
吹雪は懇願する。
「お願いします 。神様どうかこの兎を私の体から取り除いてください。」
「ごめんなさいね。一度かなえた願いは、キャンセルできないの。ぜひにということなら、新しい願いをかなえられる時が来て、そのように願ってくれれば、消してあげるわ。
この『ウサギ』は、兎と女性器をアレンジ合体して作った私の傑作なの。そのうちウサギが大好きになるわ。
サービスで、ウサギの胃袋にスイッチを仕掛けておいたわ。聞いたわよウサギとカメってすごく仲が悪いんでしょ。
いじめるカメが現れて、あなたのウサギを攻撃しても大丈夫よ。
カメがウサギの中に、白い消化液を流し込んだ瞬間、あなたの体内に仕掛けておいたスイッチが入って、そのカメを爆殺するようにしておきました。」
そう言って神は、高校生だった吹雪の前から消えていった。
それから、吹雪の生活は変わった。昼間は相変わらず、勉強もスポーツも一番の優等生だった。家族が寝静まってからは大きく違う。
初めは、ウサギを触れるのも嫌だったが、生き物である以上は愛情を、注いでやらなければならない。
彼女は目をつぶり、恐る恐る撫でてやった。ウサギはブルブル震えて喜んでいる。
とりあえず何か、食べさせなければと思ったが、生きたエサをやるのは、まだ抵抗があったので、無難に人参をやろうとしたが、自分からは食べようとしない。
しかたなく、無理矢理、ウサギの喉の奥まで、一気に人参を押し込んでみたら、ブチッと何かが破ける音がして、口から血を吐き出し大暴れして、手がつけられなくなった。
一度血を吐いた2日後からは、ウサギはスッカリ元気になり、何かが吹っ切れたように、ウサギの方からヨダレを垂れ流し、身もだえして欲しがってきたので、片っ端から食べられそうな棒状の物を与えてやった。
そのうち楽しくなってきた吹雪は、毎晩欠かさずウサギの世話を、一生懸命、世話するようになっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
回想シーンが終わり、神が話しかける。
「今日はあなたにお話ができました。」
「まさか!ウサギを返せって言いに来たんですか。」うなだれている吹雪だったが、神のひとことで、みるみる元気になった。
「ウサギの件はごめんなさい。落ち着いて考えれば、とんでもない事をしちゃいましたね。
いっぱい天敵がいるのに、カメ限定にしちゃって。
狐や猫に、おそわれたら大変ですね。
おわびにこれからは、あなたの愛する本物地球と生活できるようにしました。
学校と職場と住まいも、一緒になるように手配をしました。あなたは地球を周回する衛星。どれほど地球を愛していたか分かっています。
このメモに必要な事を書いています。」
珍しい事に太陽系神は、間違いが無いようにメモを書いて渡した。
「はい。ありがとうございます。エサを食べてる姿がとても可愛くて。
ヨダレをたらして喜ぶ姿を鏡で見ながら、何時間もエサをあげて可愛がっています。
何から何まで感謝です。」
「毎日、欠かさずウサギを可愛がってくださいね。」そう言って、神は消えていった。
吹雪は手を振って消えてゆく神を見送った。
無垢な乙女、吹雪は爆殺スイッチの恐ろしさに気づいていなかった。
ーーーーー18歳の誕生日ーーーーー
吹雪は
そこには、ワンちゃんやネコちゃん以上に、ウサギの飼い主たちがペット自慢の写真を投稿していた。
どのウサギの顔にも個性があり同じものはいなかった。性格だけは全部、とても臆病で鼻と口だけを外に出していた。
ネット動画を見て、男性は股間に、ペットのカメを飼っていて、ウサギの中で激しく『かけっこ』をして遊ぶ事を学んだ。
『皆んな凄く楽しそう。私も早く この人たちのように、ペットの気持ちが分かるようになってウサギと一緒に、万有のカメと、かけっこして遊びたいな。』と吹雪は思った。
吹雪はかけっこの、動画を見ながら、大笑いしていた。
「かけっこが終わって、ウサギの口からカメの白い消化液がいっぱい出てるのに、カメは爆殺されてないわ。
きっと私のウサギにも、爆殺スイッチをつけ忘れてるわね。
もう。本当に神様ったら、あわてんぼうね。
ウフフフ。」
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