第2話
鏡の前に立った少女、莉子は、洋服を丁寧に脱ぎながら少し緊張した面持ちで浴衣を手に取った。今日のお祭りのために選んだ浴衣は、淡い紫色に桜の模様が散りばめられたもので、優雅さと可愛らしさが調和している。
「うまく着られるかな…」莉子は心の中で呟きながら、まずは浴衣を肩にかける。普段は慣れた洋服の感覚とは違い、さらりとした生地が肌に触れると、なんとも言えないひんやりとした感触が広がった。
次に、襟元を整えながら、左右の前身頃を合わせる。少し苦戦しながらも、何度か鏡を確認しつつ、帯を手に取り、ぎゅっと締める。帯の結び方は何度も練習したが、やはり実際にやってみると難しい。莉子は慎重に帯を巻き、手先に集中しながら帯結びを仕上げていく。
「よし、こんな感じでいいかな?」鏡に映る自分の姿を確認しながら、莉子は微笑んだ。浴衣姿の自分が少し大人びて見える気がして、心が弾む。襟元や帯の位置をもう一度確認し、最後に髪を整えると、莉子はゆっくりと部屋を出て、外へ向かった。
階段を下りる途中、浴衣の裾がふわりと揺れ、足元から心地よい風が感じられた。普段とは違う装いに少し緊張しつつ。
階段を下りる途中、浴衣の裾がふわりと揺れ、足元から心地よい風が感じられた。普段とは違う装いに少し緊張しつつも、莉子は心の中で期待と楽しみが交錯している。階段の一段一段を下りるごとに、浴衣の帯が微かに音を立て、彼女の心拍もそのリズムに合わせて高まっていく。
リビングに到着した莉子は、鏡で確認した通りに浴衣が整っていることに安心した。そこに、彼女の母親が温かい笑顔で立っていた。「莉子、素敵な浴衣ね。よく似合ってるわ。」
「ありがとう、お母さん。」莉子はにっこりと微笑みながら答える。母親からの褒め言葉は、彼女の自信をさらに高めてくれる。浴衣を着るのは初めてだったが、この時のドキドキ感がとても新鮮で心地よかった。
外に出ると、夕方の街は夕陽に染まり、祭りの雰囲気が漂っていた。通りに並ぶ屋台の灯りが、浴衣の華やかさを引き立てている。莉子はそのまま歩きながら、空気の中に漂う焼きそばやたこ焼きの香ばしい匂いを楽しんだ。風鈴の涼やかな音も、夏の夜をさらに引き立てていた。
お祭りの会場に近づくにつれて、浴衣姿の人々が増えてきた。莉子はちょっとした不安を感じながらも、笑顔で自信を持って歩き続ける。そのとき、ふと見覚えのある顔が視界に入った。それは、里子だった。
「里子!」莉子は嬉しそうに声をかけた。
里子は莉子に気づくと、少し驚いた表情を浮かべてからにっこりと微笑んだ。「莉子、浴衣似合ってるね!私はまだこれから着替えるんだけど。」
「ありがとう、里子。お祭りに一緒に行こうよ。」莉子は心からの提案をしてみた。
二人は一緒に屋台を巡り、夜空に輝く花火を見上げながら、夏の夜のひとときを楽しむことに決めた。莉子の浴衣姿が、夏の季節に重なる。
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