第17話 見えないものに導かれて
「夕御飯も食べ終わったところで・・・こちらの世界のこと、少し話したほうが良いですよね?」
ひいかも私も大満足だった、夕食の皿を片付け終えたところで、クサカベが尋ねてくる。
「そうね。もう色々と楽しませてもらったし、無理のない範囲で構わないけれど。」
「はい、それではもう一つ有名なところを・・・」
彼女が机の上の道具を操作すると、その視線の先にある平たいものに、人や景色らしきものが浮かび上がった。
「これは、主にこの国で起きた大きな出来事を、皆に報せるものなんですが、この人達が別のところで話しているのを、遠くからでも見られるようになっています。」
「あら、便利ねえ。どうやっているのか分からないけれど。」
「それなんですが・・・皆さんの世界には『精神感応』があるんですよね?」
「ええ、私とみいかも出来るわよ。」
そう言って、ひいかが私の手を取り、指を絡めてくる。いや、そんなことをしなくても繋げられるでしょうに。
「それなら話が早いと思いますが、お二人が魔力を通して、声に出さなくとも思っていることを伝えられるように、そこに映っているものは、ここでは見えにくい別のものを通してやり取りされています。
魔道具に例えますと、うちにあるのが『受け取る』ための道具で、別のところにある『送る』ための道具が、すごく広い範囲に使われているようなものですね。」
「・・・なるほどね。なんとなく分かった気がするわ。」
「ひいか・・・それは分かっていないんじゃなくて? ところで、クサカベさん。あなたが賢者からの言伝を受け取っていた道具も、同じようなものかしら?」
「そうですね・・・やり方は少し違いますけど、大きな括りで言えば似ています。こちらの場合は、誰かが持っている同種の道具に向けて、声や文字を送ることが出来るんです。
一つ一つの道具には、識別するための数字みたいなものが付いているので、それをあらかじめ教え合って・・・大丈夫ですか?」
「ええ・・・なんとか付いていけているわ。この先まで理解できるかは分からないけれど・・・」
「あっ・・・この辺で止めさせていただきます!」
私達の表情を察したのか、クサカベが説明を中断した。
「うぇぶめーるとかえすえぬえすとか話したら、絶対に混乱するよね? ちょっと中途半端でも、これはもう仕方ないよね?」
彼女が何やら独り言をつぶやいているけれど、きっとそれで合っていると思う。
「ふう・・・便利なものではあっても、何も知らない所から理解するのは大変なのね。賢者もこんな苦労をしたのかしら。」
「えっと・・・すみませんが、私はその場に立ち会ったわけではないので、なんとも・・・」
お茶の残りを飲み、一息ついて口にするひいかに、クサカベが曖昧な表情で答えた。
「先輩からの又聞きだけど、賢者さんはほぼ初見で電話の相手を逆探知したとか、言わないほうがいいよなあ・・・」
うん、それは絶対に、ひいかに聞こえる声で言わないほうが良いと思う。
「あら、どこかで酷く雨が降っているのね。え、戦場ですって・・・!?」
「あの、思い浮かべている文字が違う気がするのですが・・・すごく高い所から見ると、雨の範囲が線のように細長くなっていまして・・・」
道具の詳しい仕組みは分からずとも、その便利さは私達にも伝わってきているようだ。
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