もう一度、恋してもいいですか? 一歩踏み出すのが怖いけど

彼の話

 失恋しつれんをした。


 こい憶病おくびょうになった。


 彼女かのじょ傷付きずついていたんだ。

 それをおれ気付きづいていなくて。

 さらに傷付けて。

 もう、こわくて。こわくなって。


 彼女は以前いぜん告白こくはくゲームとかいう、ゲスなそれにハメられたことがあったそうだ。気丈きじょうな彼女だったから、それを笑顔えがおうらかくしていたんだ。

 

 おれはそれをらなかった。


 なにも知らずに……。


 俺は彼女のことがすごくきれいだとこころからおもっていた。

 外見がいけんじゃない。

 その小麦色こむぎいろはだもきれいだけれど、さっぱりしていて、そのくせやさしさもあるところがきだった。小気味こきみいいのに、繊細せんさいなところもあって。俺と趣味しゅみって、男友達おとこともだちはなすように話せたこともかった。きっと決定打けっていだがあったわけじゃない。次第しだいかれていったんだとおもう。


 好きだ。


 自覚じかくした。


 彼女と話すとドキドキする。

 もう普通ふつうかおて話をし、男友達のそれのような態度たいどれない。ぎこちないかえし。へんに思われていないだろうか。


 もうすぐ一年生いちねんせいわる。

 クラスえもある。

 かれてしまったら、もう二度にどと彼女とは話せないようながした。


 おもって、告白こくはくした。


 一瞬いっしゅんのマジな顔。

 そのつぎかなしい顔。


 そして、沈黙ちんもく


 俺は彼女がなんでそんな顔するのかからなかった。

 どうしていいのか分からなくなった。

 ずかしくて。

 いたたまれなくて。


「じょ、じょうだんだよ」


 いって、しまった。


「そ、そうだよね。そう。私なんか……」


「ち、ちがう」


「え?」


「いや、あの……。その……。と、友だちとしては好き、だから。もしもクラスがちがってもって……」


「あ……。そうか。そういうことか。うん! 友だち、私たちはずっと」


 それでも俺は、彼女のことがまだ……。


 クラスはやっぱり、べつになってしまった。


 そうなるとすれ違うばかりで、たまに挨拶あいさつするだけになってしまって。


 そのたびにむねがうずく。

 これは彼女を傷付けたから?

 それともまだ未練みれんがある?


 どちらともだろう。


 もう一度いちど

 ゆるしてもらえるならもう一度。

 今度こんどこそ、君のことが好きだと、本気ほんきなんだと、つたえたい。


 こわい。


 けれど、一歩いっぽみ出さないと。

 わらない。変えられない。もどせない。


 告白、ちゃんともう一度。

 して、みようかな。


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