俺のスキル〈召喚〉は、どうやら美少女しか召喚できないらしい。
ねくしあ@7時9分毎日投稿
第一章:英雄の序章
1:〈召喚〉したら美少女がやってきた
コツ、コツ……と硬い地面を歩く音が響く。
「初めてのダンジョン、無事に帰還されることを願っています」
ロビーで男性職員が俺にかけた言葉が、脳裏にこびりついて離れない。
「ついに……来てしまった。ダンジョンに……!」
辺りは明るい。壁には等間隔で照明が設置してあり、見通しもいい。
横幅は人が四人並べるくらいで、見た目は石の通路――洞窟といった感じだ。その静けさが不気味な雰囲気を醸し出している。
……さて、なぜ俺がダンジョンに来ているのか。
それは、何を隠そう今日が特別な日だから。
「待ちわびていた日が――俺のスキル〈召喚〉を試す日が来たっ!」
胸の内から、恐怖と、それを上回る好奇心が湧き上がる。
そもそも。この俺が生きる現代世界にはダンジョンと呼ばれる地下迷宮や、数多の「スキル」と呼ばれる異能のようなものが存在する。
しかも、ダンジョンにはそのスキルを持った人々、通称
数十年前に起こった
スキルと呼ばれる異能の効果や種類は千差万別だ。
単にスキルと言っても一括りにはできず、人よって能力は異なり、魔法のような現象を引き起こせるものもあれば、現実離れした超能力を発揮するものも存在する。
もちろん、似たような、あるいは同じスキルを持つ人というもの大勢いる。
まさに、それらは常識を遥かに超えたとんでもない代物だ。
また、その獲得条件や入手時期にはまだまだ謎が多い。
誰にどんなスキルが現れるかは予測不能で、世界中の学者たちもそのメカニズムの解明に日々勤しんでいる。
その中でも群を抜いて、ランダム性があまりにも高すぎる効果を持つのがこの〈召喚〉だ。
魔物という恐ろしい生命体を召喚した人もいれば、食料や普通の動物、武器やロボットなど、もはや何の関係性もないものを召喚する人もいる。
言うなれば「闇ガチャ」のようなスキルなのだ。
超ハイリスクハイリターン。
もし敵対的なものが出てきた場合、俺は恐らく死ぬ。
その安全性のため、ダンジョンにやってきた。せめて誰にも迷惑をかけないように、と。
そんなスキルを今日、俺は初めて使う。人生15年生きて初めてだ。
危険度合いも、ランダム性も理解している。
そうなれば当然緊張もするだろう。
だが、少年の好奇心は止められないのだ。
「ここはD級ダンジョンで人はいない。土曜日の早い時間だからなおさら。ダメージをある程度防ぐ魔導具も持ってきた。つまり――」
――紛れもなく、千載一遇のチャンス!
「すぅ……はぁ……よし。では早速――〈召喚〉!」
すると直後。目の前の地面にキラキラと光る魔法陣が現れた。
そこには複雑な紋章が描かれており、一部がゆっくりと回転している。
SNSなどでしか見たことのない、いかにも幻想的な光景が目の前にあることが信じられない。一秒ごとに、胸の高鳴りも早まっていく。
そしてついに魔法陣の発する光が最高潮になり、目も開けられないほどに輝き始めた。
「おぉ……!」
美しい景色に思わず息を呑む。
時が経つにつれ、期待はどんどん高まっていく。
心臓の鼓動が早くなり、絶え間なく鳴り始めた刹那、視界は白い閃光で塗りつぶされた。
「——こ……ここは……?」
人の声……?
俺は、魔物やロボットや武器などではなく、人を——しかも「少女」を召喚したというのか?
「っ……!?」
視界の光がだんだん消えていき、ついにその姿を捉える。
——それは、絶世の美少女だった。
白磁の肌に浮かぶ青い瞳を持つその顔は、この世のものとは思えないほどに美しい。
首元まで伸びている純白の髪は、後ろでポニーテールになっている。
その髪と同じ白いブラウスの左の胸元には金色の紋章が付いており、大きすぎず小さすぎない双丘が存在を主張していた。
「あ、あの……そんなにジロジロ見られてると……恥ずかしいんだけどな」
「ごっ、ごめんなさい! あまりにも綺麗でつい……」
くそっ、自分が召喚したであろう存在なのに
あと普通に陰キャみたいで悲しい。ちくせう。
そして思ったが、声もとてもかわいかった。
心の奥までとろけるような優しい声色……たった一言だけでこんな気持ちにさせられたのは初めてだ。
と、そこで彼女がやけに冷静なことに気がつく。
召喚というのは、違う場所から対象を転移させるスキルだ。そんな事をされたのに、慌てることもなく普通に俺と話している。
そんな豪胆さを持つのは探索者の頂点たるS級くらいなものだと思えてしまうのはなぜだろうか。
「そ、そう? そんな慌てた様子で言われたことなんてないから、なんか新鮮かも」
そう言って彼女は、少し顔を赤らめて笑った。
か、可愛い……これはやばい、さっきとは違う意味で心臓がバクバクしている……!
「――そ、そうだ。名前……まだ名前を聞いていませんでしたよね! もしよければ聞いてもいいですか?」
これ以上この可愛さを享受してしまうとダメ人間になってしまいそうだな……そんな危機感から話題を変えることにした。もちろん聞きたかったのもある。
「分かった。じゃあ改めて」
その瞬間、纏う雰囲気が一変した。
さっきまでは若い少女といった感じだったのが、
まるで貴族のお嬢様のような。
歴戦の猛者のような。
全てを救う聖人のような。
そんな一つに定まらぬ気配になったのだ。
「――私の名前はシルフィア・アヴァイセル。異世界ではS級冒険者をやってたんだ」
誇らしげに、自慢をするような態度で彼女――シルヴィアは言った。
別にそれは嫌味ではなく、自分に自信があるタイプのそれだ。
俺は自分に自信がないので、「かなり羨ましい」なんて思っているしな。
それと同時に、S級冒険者――こちらで言う探索者のことだ――なんて肩書きが出てきたことに驚く。
とんでもない大物じゃないか! きっと、その強さはとんでもないものなのだろう。これは……もしかしたらとんでもない人を召喚してしまったんじゃないか? というか予想も的中してるし。
「つ、次は俺だな。俺は
S級という言葉の重みに動揺しつつも、なんとか取り繕って自己紹介をする。しかし敬語なのかタメ語なのかを迷って締まらないふうになってしまった。俺のメンタルボロボロだよ……
「あははっ、無理して敬語なんか使わなくてもいいよ。私、そういうの気にするタイプじゃないからね」
シルフィアは可愛らしく健気に笑った。
すごいな、もうこの状況を完全に受け入れてる。
俺はまだファンタジーすぎて実感ないのに……
「そ、それは良かった。すごく助かる」
「そんな緊張しなくたっていいのに。凶暴な魔物なんかじゃないからさっ」
俺の目には最初っから美少女に見えてますけどね!
……なんて言えるわけがない。そんな精神力はないのです。
「おっと、話を戻そっか。高校生……それはあっちで言う高等学院のことかな。まぁ、つまりは学生なんだね。どんな事を勉強してるの?」
それから俺は、しばらくシルフィアからの質問に答えていた。
勉強のこと、生活のことなど、この世界にまつわることを色々だ。
もちろんダンジョンの話もした。
彼女によれば、こちらの世界のダンジョンと向こうの世界――異世界のダンジョンは性質的に似たものらしい。今まであまりそういった証言は世に出回ってない——少なくとも俺は知らなかったため、かなり貴重な情報だと言える。
「そう言えばさ、ここってダンジョンじゃん」
「そうだな。俺みたいな初心者が使うD級のダンジョンではあるけど」
「だったら、ちょうどいいし魔物狩りして美味しいお肉でも食べない?」
「おっけー魔物狩りね……って、はぁ!?」
ついノリで返してしまったが、普通に考えて理解できない事を言っている。
気遣いをしたつもりが、なんで「ラーメン食べに行こう」みたいな軽さで魔物狩りしようとしてるのこの人!!! 俺怖い!!! 助けて!!!
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どうも、作者のねくしあです!
ちょくちょく(ほぼ全部かも)ここの部分で宣伝の下に作者の独り言など呟きます。乞うご期待?
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