第十二話

    二十七


「ねぇ」

 こうは、藪から棒に切り出した。

 躊躇とまどいが、空気を蝕み始めようとしていると、間髪が入らぬ間

「なんだい」と、先に返したのは、福山氏であった。

 うさぎも反応はしていたが、意図を探るために、心の眼で確認しようとしたから出遅れていた。想い余って吐き出す言葉に群がるものは、悪意と割り切って居たために出遅れて終ったのだった。

 まいが興味を持っていることを確信した刹那に

「神武天皇の最期を視ることはできないわよ」

「神武天皇? 神と云われる、初代天皇陛下の、なにが気になったのだ」

「どうやって導きだしたの、まいは」

「装置で経験したスクリーンは、心と同化したあかしなんだよ。赤瞳の記憶が造り出した妄想だから、敗戦後の影は臨場感を出すために削除去れていたからね」

「どうしてあの時、云わなかったんだい」

「人の心が繊細、と云われる所以ゆえんを理解していれば、赤瞳の配慮に気付けるはずだからね」

「私たちが傷付かないための配慮ね。だとしてもあの時想像したものは、私たちの自由なはずよね」

「だね。でもね、人が人を喰らう時代は想像できないはずよね」

「人が、共食いしていた?と、云うのか」

「獣だけが、里に降りてくる?と、勘違いしているようだね。人間も獣だった記憶は、薄められたわけではなく、失くしたようだわね」

「現実は甘くない?と、でも云いたいようだな」

「ホモサピエンスが獣であったことは明白だけど、居住区域は解明できていないわ」

「大型の猿なんだから、山じゃないかな」

「ならば、猿が山に居る理由を、こうなりに解明してみてよ」

「木の上を縄張りとしたから、腕や手が発達したはず? だよね」

「四足歩行から進化した理由を紐解いたんだね。だ、とするなら、雑食種として、猪が敵対した?とでも云いたくなるわよね。そういう観念的な発想をするのが人間なんだろうけれど、山犬や山猫、狼等は、どう視るのよ」

「地を駆け抜けるけものたち?」

「鳥類にしても、爬虫類にしても、共存しているはずだよな? 敵味方の観点は、山を追われたことに関係があるかも知れんな」

「巣という観念は、働かないようね」

「大自然と云われる所以ゆえんは、費やす時間を凌駕するでしょうからね。洞窟どうくつ洞穴ほらあなの支配権があったとしても、事実として捕えられないよ?普通は。負けて追われたのか?と、訊かれれば、想像はつくけれども」

「自ら、身をひいた? その恩賞が、知恵とも考えられるよな」

「疎開した婦女子が、敵機に竹槍を向けた理由は、肉親を戦争に駆り出された恨みでしょうかね」

「赤瞳さんは、平和を奪われた、怨恨かも知れない?と、考えたわけね。そうなると、死者に手向けた可能性も否めないよね」

「植民地の解放という旗印は、偽りの正義? だとしたならば、やはり、力への対抗心なのかな」

「強欲の罰? と、切り離して考えたなら、国民としての忠誠心となるわよね。無謀の極みかも知れないけれども」

「そうでしょうか? 肉親の無事帰還を祈るあまり、犠牲すらも覚悟した。そう考えると、早期和解への期待心がさせた行動となります。繋げることに困窮するのは、言葉にしない心意気だと、赤瞳は想います」

「その想いも見えないから、風潮に相当するわけなんだね。想いを語る上で必要なことは、自分の視方や考え方が、一説でしかないことの自覚だもんね」

「個人の見解とするなら? だけれどね」

「思いに想像が入り込むのだから、見識かも知れないぞ」

「炉の女神である卑弥呼さんは、各方位の存在を考えて、口をつぐみます。本来、正面に位置おざすはずのプロメテウスさんは、六弟ゼウスさんに追われましたからね」

「正面に座るはずの夫の不在は、帰らぬ息子を待つ親心と同じ?と、云うわけなんだな」

「親の背中をみて育つ? 見えない背中は、空っ風に打たれ、それを繕う表情は、愛くるしい笑顔をみせている? 背負った責任は、家族を護る使命感ということになるはずよね」

「赤瞳が独身貴族と罵られることに耐えられたから、爪弾きにあっても耐えられた理由と繋げられれば、景色も同様になるわよね」

「バツイチと公表しているけれど、浮いた話しがない? 理由だったのね。曰くなんて云われるものは、みかたを変えれば、妬みと云いたのね? まいは」

「第一印象が虚像を造り上げる現在は、隠した者たちが、なにを隠したのか忘れて終ったように繕っているだけだしな」

「それをもじったから、忘れ物が多いのが人間と綴ったのよ。こうも読んだでしょう」

「大事なものと、そうでないものが、世間にはあるわ。私は、言葉尻をとることを、卑しい人間という判断の基準にしていたけれど、違ったのね」

「大切なものを隠すから、宇宙の中心は点でなくてはダメなんです。点を箱と表現できる福山さんは、必要不可欠な存在ということにあたいします。巷ではとんちんかんに落とし込まれて終ったことを、はぐらかされた感から好色に宛がい、曖昧に誤魔化しますよね」

「第一印象を貫く心を持っているから、神は見えないと、云いたいのね」

「紀行の初体験の時に、見えないことは教えたけれども、非実体に去れて終った神々が見たいなら、話しは別なんだけれどね」

「だとしたら、この時間移動の紀行で得るものは、存在するものを実写するだけの心だな? 神々から与えられる神の眼に対抗するだけの一品いちもつとなれば、進歩に価するもんな。実に面白い発想だ」

「裸族たちのような視力と、想いの息吹きを重ねられれば、神の眼の進化形となりますから、努力のご褒美なんです。この世の常識すら凌駕するほどの眼力ですから、宇宙の中心まで視ることができる?一品と、成ることも夢ではありません」

「神の上をいくのだから、こうが、創成人になれるかも知れないわよ」

「遠慮しておく。身近に居る誰かを見習って、死の概念を上塗りしたいわ。それくらいなら、私にもできるでしょうからね。大切な人を、いつまでも想い焦がれるのは、卑弥呼さんにかなわないだろうからね」

 その場に居た男性おとこふたりは、ひきつった苦笑いで、大気と同化したい様であった。

 

 女性の持つ寛大な母性には、怖さも入り交じっている。少しずつ、馴染むまでの時間も、楽しみに変換して欲しいから、非実体の存在は魔法と云う術を使って魅せるのである。

 人間が好みの異性の色合いに染まることから、本能に刻まれている?と、考えたならば、人間も魔法を使っていることにあたいする。科学者が躍起になっても見つけられない図解式があるはずで、変化を遂げて進歩して欲しいから、誘うのであった。



    二十八


 幾ばくの当たり前を通過したのか解らなくなった頃。

 再び顕れた装置は、形容し難い変化を遂げていた。間口は変わらず量子だが、カチカチと組み替えられる微周波音は、ロボットを連想させていた。

 こうが、石橋を渡る心境にさせられたのは、用心する慣習を持ったからである。当たり前と流さずに、世間の風に身を潜ますものが悪意?と、認識できる様になっていた。

 おもむろに開いたドアは、見えない二重式になっていて、隔たり(壁)もない空間に、発行ボードが顕れると、点灯で存在を顕にし、合成コンピューター音声が、意図を説明し始めていた。その声に導かれるように中に入ると

「新型らしい。外観よりも広い内部は、概念を捨てても、実に快適空間になっている。開いた自動扉の先にある空間は、ブラックホールを再現したらしいよ」内心を震わす声を発したのは福山氏と脳の理解を経て、アニメに出てくる戦闘服を着ている姿があらわれた。

「趣味の分野まで参考にされた衣服は、錯覚を利用したらしい。裸の王様ではないが、透明な仕様だから、眼で捉えることはできないだろうが、うさぎ氏の娘と環奈嬢も居るよ」

「宇宙の外気の中に潜む?危険因子を、寄せ付けないなにか?を、発見した、ということなんだね。で、当の本人は、居ないの」

「長い間植物人間になっていたから、甦り中?と説明されたわよ」

「まいはお役御免?になって、終ったのかしら」

「人間仕様に変換中で、挿入部位の使い方を完了できないと、檻から出られないのよ」

「お楽しみは、お預けということです。猫の進化版ですから、本領を発揮できる場面まで? お預けです」

「楓花さんと環奈さんね。姿を現さない理由はなに?かしら」

「地球上の空気中では、光の反射方向によりできる影を利用しているから、確認できないだけです。時間に逆行し始めれば、突出するから、速く中まで進んで下さい」

 姿の見えぬ、環奈の説明に従い、こうは自動扉らしいしきいを飛び越えた。すると、人感センサーが働き扉を閉じ、装置は宇宙船のようにゆらゆらとしてから、視界から消え去った。中に居るものは、そんなことも知らず(G的圧迫感もなく)、時間の隙間に溶け込んでいる。

赤瞳ちちは、見えないものを見えるようにするために、地球上にない元素の合成(分子)で、防御服を完成しました」

「その服のお陰で、環奈わたしたちの同行も許されました。実戦経験にまさる学識はない?ということらしいです」

「いつぞやは、私の命を掬っていただき、ありがとうね」

「当たり前のことを、したまでです」

「施しと想われずに、使命と定めて下さいませ。多くの犠牲者たちを掬い出すことが、あたしたちの使命なんですからね」

「楓花さん? だね。気心を許さないなら、仕様がないけれど、仲間意識という感性を解放してみないかい」

「そうですね? ですが、赤瞳とうさんのような知識を持ち合わせていませんから、復活までの間、しばしご容赦下さい」

 取り敢えず、と、云わんばかりに笑顔を携えた一同は、挨拶の代わりに、言葉を交わしたのであった。


 新型の装置は、居住空間を備える、団欒を兼ね備えていた。(前装置は、複雑に交換する配線のために、ベンチシートの長いすを置くのが精一杯であった)


「新型は科学の推移により、ゆとりの空間ということなんだな」

「地球的見解を失くすために取り入れたものが、あるはずよね? 永い植物人間の経験が、当たり前を気にしなくなったのかしら」

「たぶんですが、魂という観点が生まれたんでしょうね? 大事な仲間を気遣う意思はあったのでしょうが、人が夢にすがる性分たちだから、変更を余儀なくした、ということだと想います」

「?」 

「何か? 云いたいみたいだね」

「正確なのか解らないが、心が揺らぎを感じた」

「揺らぎ? 空いた穴が萎んだだけなんじゃないの」

「不規則に空く風穴が、整理? されたんじゃないの」

「そういう観点で説明するならば、序列が定まった感じかな」

「卑弥呼さんの祝福?かしら」

「どういうことなの? 環奈さん」

「認められたから、疎通が出きるようになったのかも」

「正確には、福山氏あなたのステージが、人の限界を越えたのよ」

「どういうことよ、まい」

 受信エラーに発生する歪みの中から現れたまいは、猫人間キャットウーマンの出立ちを晒していた。

「スターウォーズに出てくるような船艦だから、機動力を必要としなくなったみたいだね」

「機動力? 二足歩行に移行した理由は、争いに加わることを義務付けたのかもよ」

「武器は爪しかないから、殺傷能力も低いしね」

「飼い主の御内みうちだと云っても、義理はないから、試してみる?」

「冗談よ」

「それよりも、その身形プロポーションのモデルは、誰かしらね」

「スコティッシュフォールドだから、英国ブリテンなんじゃないかな」

「名は体を表すと云うから、白石麻衣さんかもな」

赤瞳ちちは、渡辺麻衣さんのファンだったみたいだよ」

「移り気な老人の、細やかな期待を、弄ばないで下さい」

「これで揃ったの?」

「ハイテクを要した理由を考えると、ニュートンや、ガリレオも必要なんじゃないか?」

「六姉弟神を入れても、ゆとりがあるよね」

「米国の友達が観る夢を、現実にするためなんです」

「地球脱出計画に参画するつもりなの?」

「凄い発想ですね」

「夢を夢で終わらせない信念に好感を持ちましたから、友達になって頂きました。限界になっている、今見つけられていない元素の存在を知って頂くためです」

「もしかして、まい。貴方を解放したのは、赤瞳さんなんじゃないの」

「やっと解ったのかい」

「どうしてよ」

「見えなくても、数に従えば解るだろう」

「数を数える為に、環奈さんと云ったわけなの」

「揺らぎの真相を知るためなんだがな」

「計算高い?ようね。でも、それを見抜けないほど、赤瞳とうさんは、唐変木じゃないわよ」

「? だから、衝撃波を計算させられたのね」 

「もう、試されていたのね」

「環奈さんも? だったのね」

「試したんじゃないわよ」

「どういうことよ、まい」

「神の侵食。非実体になった理由は、人間の悪意なのは冊子に残って要るわよね」

「だから、表裏一体が成り立つのか」

「般若にしても、仏を守護まもる役割だよね」

「そういうことか」

「ひとりで理解してないで、説明しなさいよ」

「神の守護を司る者が存在する、ということだよ」

「こうさんに解るように発明すると、鬼子母神や天の邪鬼と云って、鬼という悪魔が居るから、神が正義に君臨できる?と、なるのよ」

赤瞳わたしが、神々を尊敬していない、と云われるのは、それを知ってしまったからです」

「と、云うことは、赤瞳さんに世直しの指示をだしたのは、創成主様? だから、徘徊を自由に出きるわけね」

「生身という欠陥を克服させる為に、神々に守護させたのだろうな」

「実体を結界に置かなかった本当の理由は、分析させないため? だから、心という無い臓器ものに降臨させるのか」

「だとすると、血に宿る記憶を操作できない理由が、有耶無耶になるぞ」

「神々に判明できない化学反応があり、それが自然の摂理だから、キリスト様は預言者の存在を残しています」

「だから、己を神と見定める人間たちに爪弾きに合うらしいわよ」

「大分理解度を上げたようですが、神の部首が完成されたものでは無いことを立証しています」

「だとすると、この装置に入ることはないな」

「その為に、電磁衝撃波を生み出せる装置にしたんですからね」

「そして、この装置の中の会話を疎通に乗せないようにもしているのよ」

「なら、まいの進化も知られない?と、云うことだね」

「地球脱出計画に、食の確保が難問になるけれど、当面は凌げるよね」

「いきなり宇宙食に切り替える必要がなくなるしね」

 と、云った、楓花と環奈が、姿を顕にしていた。笑う門には福来る、そんな冒険の始まりなら、人間に取ってさい先が良いものとなるはずであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る