第33話 新しい居候
マスコミ志望のドラゴンであるスーラネオラ姉さんの住居兼新聞社を解体中の俺達は、彼女の状態と記事の酷さに同情した結果、ドラゴン姉さんの面倒を見させてほしいと提案することになった。
「そういうことならお世話になろうかしら。やっぱり人って、自分が暮らしている場所の情報を欲しがるものよね。分かってはいたのよ。でも安全に行ける様な場所って無いし」
聞けばスーちゃんは800年以上もここに居るとのことだ。
彼女の言うことによれば、情報そのものの価値は、いずれは世界を
人を超える聡明さが予想外の方向へ
今のところ、人間の中でその重要性に気が付いているのは、国や教会の上層部と大商人ぐらいなものなのだ。
「気持ちは分かるぜ、スーちゃん。街にそのままで行ったら、外壁から大型
不思議な同居人が増えることについて余計なことを言うつもりは一切無い。俺だってマーちゃんの
スーちゃんにはヤバいことを書かないようにだけお願いした。人間にとって危険なことというのは、何も文化的なものや法的な内容だけではないのだ。
それから『突撃ご近所さん』という記事があるのだが、これも駄目出しをしておいた。
この記事は、下層の遺跡の守護者であるハーケンケイムとの不毛なやり取りが主な内容なのだが、通算9600回目の突撃取材でも徹甲弾と光学兵器で追い返されるという、いつもの
「スーちゃん、うっかりこいつを読むとな、探索者やら国の
「そうなのね!? 私、前にね、この月報を空から
俺達はそこに陣取って、茶を飲みながらスーちゃんの記事についての感想を
詰め所の遺跡の方は解体も終わりそうで、紙の製造設備と印刷機の収容もとっくの昔に終わっていた。
スーちゃんの住居については、俺の住んでいるカマクラ『気楽イン』から100メートル離れた場所に、巨大な
「スーちゃんの住む場所ってこったから、デケえだろうたぁ思ったけどよ。黒いし、光を反射してねえんじゃねえか?」
スーちゃん用のカマクラは全く
「これは大きいだけあって安全性が高いぞ。電磁波は光を含めて
うちの安全住宅姉さんからは、変わらぬ頼もしい回答が飛んできた。過剰な気もするが付近にある倉庫の中身も想像すると、ここまでの物件でも安心できない部分があるのが不思議だ。
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高強度保管ドーム『ハイランドデレンドラ』
あらゆる電磁波と放射線の影響を排除する保管ドーム。至近の超新星爆発の影響まで防御することが可能。
霊体でも侵入不可。内部の微生物の活動も極端に
内部に空気供給設備と給排水施設あり。
直径100メートル。
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つい鑑定を使用してしまったのだが、マーちゃんに教えられた通りの性能で、書き物も多いドラゴンのスーちゃんが生活するのに問題は無さそうだ。
スーちゃんには後で、直径14キロメートルの吹き抜けや、白い豆腐のような巨大倉庫に近付いてはいけないことを教えなくては。
このフロアは一応セーフハウスではなかっただろうか。
「スーちゃんには分かり
うちの世話焼き姉さんはこういうところに
「すごい……建物の表面が本当に全然光らないのね。中も見たけど、あの印刷機は良いものだわ。詰め所のやつはもらってくれて構わないから。そう言えばあそこには、地震計の予備と
スーちゃんも新しい住居に満足してくれたようで何よりだ。
今回の『詰め所遺跡』については、実は印刷機以外にも収穫があった。
「マーちゃん、印刷機と
大貴族から買うのは無理だろうが、街の内区にいる役人で金に困っている奴はそれなりに居るだろう。そういった家に渡りをつければ、そこそこの品を売ってもらうことは出来そうだった。
俺達には鑑定があるから、
ちなみにオストロラ・シーシオンという美術商の知り合いも居る。こいつは出し渋りで有名だが、マーちゃんに協力してもらえば
「ケンチ、
マーちゃんからは今回の成果について質問が返ってきた。
「そう思うのも仕方がねえよな。実はあんまし上手くいってねえそうだ。独自技術の邪魔をすんのも何だがよ、今回は研究者さんに泣いてもらおうぜ」
1つ目の遺跡については疲れるようなこともあったが、高値で売れるような成果もあって何よりだった。
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