第17話 バッティングした
ガウルルブ殿下と焼き肉を食べて終わりにした翌日、マーちゃんと出会って12日目の今日はフロアに雨の降る日だ。
この雨というやつは俺を
そんな中でも、俺以外の連中は
視界の隅では黒子さん達が、トングで肉を食うのが上手いコボルト達の為に荷車と、食料や服、武器や防具を用意してやっていた。
ガウルルブ殿下は一党の者達に何かを言い聞かせているようだ。
「連中は本当に今日出ていくんだな。ここから山か、
そんな連中を横目で見ながら、ちゃぶ台で茶を飲んでいた俺は隣で浮いているマーちゃんに聞いてみた。
「どうやらそのようだ。この周辺の様に人間がやって来ない地域が良いのだろう。植生が豊かであるし、食料に困らなければ理想的なのだろうな」
うちの見送り姉さんからはそんな返事が返ってきた。
そうしている内に、
「すっかり世話になった。食料もしばらくは困らないだけある。今までにない強力な装備もいただいた。
目の前の殿下が唸り声を上げ、ちゃぶ台の上にあるスピーカーからは翻訳された言葉が流れた。
「殿下、ここも永遠に平和ではないぞ。武器が役に立つ相手もいるだろう。
「ここに町か何か作るんなら気を付けた方が良いぜ。うちの
マーちゃんと俺からの別れの言葉はスピーカーから妙な唸り声になって殿下に届いたのだろう。
殿下は犬的な笑顔になったようで、シワのよった顔をして両手を上げながら言葉を返してきた。
「2人ともありがとう。
殿下の返しはずいぶんと低く長い唸り声だった。
そしてあの連中の15人は女性であり、殿下も俺と同じ
まだ昼前ではあるのだが出発しようという頃合いになったので、俺とマーちゃんも殿下達の見送りの為に外に出た。
気候としては秋や冬の方が雨が多い。夏も降るのだが湿度がそこまででもないのが救いだ。日本の夏は地獄だった。
特に言葉は交わさず、手だけを振って俺たちはコボルトの生き残り達と別れた。
5台の荷車には防水
思えばこれも貴重な経験というやつなのだろうが、基本的には
「マーちゃん、こっからは
とにかくゆっくりと進みたい俺はセンチメンタル作戦に出ることにした。相手がマーちゃんでなければ、恥ずかしくて使えない手なのは分かっている。
「そうだな。この先にも森や林や水源もあるようだし、今度はウォーガシャーゲという甲殻類に出会えるかもしれん。買ってもらった教科書では沼に引きずり込まれる男の子の話が出てくるのだ。葬式の会話だったな」
国には題材を選べと言いたい様な事を聞いてしまったが、とにかくうちの異世界語勉強姉さんからは許可が出た。
俺は新しくなった探索装備に身を包み、背囊を背負うと山の方角に向かってだだっ広い道を歩くことにした。
余談だが
今はマスクもしていないし、うちのトカゲ姉さんも青く光を発するボディを隠すことなくさらしている。
気配感知にもマーちゃんレーダーにも今のところ人間の存在は感じられないからだ。
ところが20分ほど歩いた後でその状況にケチがついた。
「ケンチ、前方の小さな山の影に集団がいるようだ。人間だな。どうする?」
相変わらず、うちの広域センシング姉さんの探知範囲には
マーちゃんの言う小さな山というのは300メートルほど先にある、山脈の端の方にある
「こんな場所に人がねぇ……マーちゃん、ここは人が通らねえから野盗だって出ねえ。そいつらぁ
俺たちはそのまま進むと、こちらも岩の陰に隠れながら相手の様子を見てみた。
その連中の見た目は
人数は30人前後というところだが、領軍はこんな場所でやることが無いだろうし、所属を示す様な
ここまで装備品の統一された傭兵もいないだろう。
連中は俺と同じく、雨の中でも行動することに慣れているようだった。それに今日の雨は勢いがあるというわけでもない。
「妙な奴らだ。あそこで何か待ってやがるようだ。あんまし考えたかねえが、隣の国の奴らじゃねえだろうな」
ここからは小声に戻った。
どうやらマーちゃんも透明化して姿を隠したようだ。
東にしかない隣国との国境はユータヤロガ辺境伯領という場所になる。
頭領であるヤーン・ルカス・ンダラァ閣下は甘い男ではないとズットニテルの街にも聞こえていた。
ユータヤロガの領都モッペンユーテミーヤから東にある国境は北のスコッシホーレル山脈が南に折れて
そこにあるトーレンダロィ国境要塞をあの人数で抜けるのは中々に厳しいのではないだろうか。
鬱陶しい雨が降る中で、俺は面倒なことになってしまったと考え込んだ。
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かつてはTwitterだった『X』のアカウントを『お前の水夫』で持っているのですが、ロム専用アカと化しております。
さすがにもう作品は読んでおりませんが。
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