第11話 翻訳本
しばらくすると俺たちの居る
2本の腕には
さっさとカマクラに引っ込む予定ではあったが、何となく気になったのでタイトルと内容についてだけ教えてもらうことにした。
文字数としては13~20万文字ぐらいの書物だそうだ。
持ってこられた本はちゃぶ台の上に無造作に置かれた。食事は寝室でとるしかないだろう。
これらの書物の
────────────────────
メカラミズ・ボーダ教諭
感動の仕組み(作品構成論)
ズニヨルト・ハマンネーゼ博士
やり直さなくて良い図面の見方(工作論)
ビーワンオ・ニジューレンダ研究員
スライド式扉高速開閉装置について(苦情)
ランラ・ララ教授
この風この肌触りこそ船倉よ!(奴隷体験記)
へリゥムスットリマ惑星間生物
この大気、食べても良いですか?(グルメ紀行)
タンスノゥラ次元間生命体
ときめきの整理収納術(生活知識)
ウドン・デイーダロ教授
うどんで良いだろ!(優秀食料論)
マンマデヒク
ニギリシメル4世陛下の
ダミノルさん統合管理知性
交易用オプション
ソレキン・ノヨセ教授
────────────────────
本のラインナップにざっと目を通した俺は若干の不安を
気になるのは下の方に積まれた3冊のうちの2冊がここの関係者の作成物であることと、残りの1冊が『魂の術』に言及しているように見えることだ。
ニギリシメル4世陛下が、俺のようにマーちゃんと直接関わったのかどうかは分からない。
そこに存在を
もしかすると公衆衛生の話かもしれず、かつトイレの個室内の情報を含む可能性もあって、別の意味で表に出せない代物なのかもしれなかった。
ダミノルさん統合管理知性については、彼自身
そして俺自身は
(※稟議書:自分の権限では決定できない事項について、上司や他部署の責任者に回覧させ、承認を得るために作成する書類のこと)
最後のソレキン・ノヨセ教授については言い
今の状態のシンデル先生にとってはセンシティブな話というやつではないだろうか。
余談ではあるが、ランラ・ララ教授の奴隷体験記を少しだけ読みたいと思った。この人は女性だと思う。
冒険と色気の
「これはありがたいのぅ。最近は暇じゃったからありがたく読ませてもらうぞい。ここで読んでもええんかの?」
物思いに
「ケンチはどうするのだ? 知っているとは思うが暗くなれば照明が灯る。ケンチさえ良ければシンデル先生にはここで読んでいただこうかと思うがどうか?」
外の世界が夜になれば、このフロアの天井から降り注いでいる光も消える。だからフロア内の施設では夜の間は照明が灯るのだ。
「俺も先生が良けりゃ、ここで読んでもらっても良いぜ。それよっかブーラブの姉さんはどうすんだよ?」
食事については寝室で取るつもりだったこともあり、シンデル先生に関しては特に異論は無かったが、水の精霊さんについてはやや心配だったので聞いてみた。
「あたしは泉から水が出とぅるんで、今日は
ブーラブ姉さんはここを出て、普段暮らしている泉の方に戻るとのことだった。湧き出し口の所は水が出ているだろうし、一晩経てば明日には川も復活しているだろう。
さほど時間を置かず、ブーラブ姉さんは玉を持って収納口から外へ戻ってしまった。ここは出るぶんには自由なのだ。
先生の方は早くも本を読み始めてしまったので、俺の方はニケの紺色コピージャージに着替えて食事の前の運動をすることにした。
昨日から始めた健康体操を行ってから、気合いを入れて周囲を25キロメートルほど走ってみた。
明日になったら、シンデル先生には今の死霊という状態について確認してみた方が良いだろう。
先生は
泉に関わって2日目、マーちゃんと出会ってから11日目の朝のこと。俺たちは今朝も日課のお祈りを行っていた。
こういうのは毎日続けることが大事なのである。そして神のご意向に背くような生き方をしてはいけない。
「さすがに見習い聖職者じゃの。マーちゃんもそうしておると本当に
シンデル先生は霊体であるため、昨日は徹夜で読書をしていたにも関わらずむしろ元気そうだった。
「おはよう先生。そういやあ先生が教授やってた頃は皆はお祈りをしなかったのかい? うちの国じゃ騎士様だって衛兵だってやってるぜ」
俺は満足そうな先生にそう返しておいた。
富国強兵政策とかではなく、充分な現世利益が見込めるので、こういう事は危ない職業の連中の全員がやっていた。
「
シンデル先生から今聞いた話は以前にも田舎の師匠から聞いたことがあった。
かつては生まれつき
「シンデル先生、俺たちゃぁ生まれの能力にこだわってねえんだ。もう教育と信仰の時代になっちまった。教会がそうしちまった。俺は良いと思ってるよ」
俺は半分だけ幽霊先生に嘘をついた。才能の壁は依然として
====================
※私がキャラクターの名前を変な物にしている理由について、そのひとつが書いてあるエッセイ(1話完結)がありますので、ご興味がお有りの方は下記のリンクよりお読みくださいますと幸いです。
『オッサン化という名の不治の病』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます