第51話 プリムローズ絶対助けるからな

 カイトはライゼウスの屋敷に入り込んだがすぐに見張りに見つかった。


 当然だろう。


 ライゼウスの所に連れて行かれる。掴まれていた腕を見張りの男にやっと解放されると開口一番にライゼウスに噛みついた。


 「ライゼウス。約束が違うじゃないか。宝珠を渡せばプリムローズに手は出さないって言ったじゃないですか!」


 「気が変わった。と言うかセザリオ殿下がうるさくてなぁ。どうしてもプリムローズが欲しいと言って聞かないから仕方がないだろう?相手は王太子なんだ。逆らうとどんな目にあわされるか…相手はあのルジェス商会だ。機嫌を損ねたらこっちの商売にも影響が出る。まあお前はプリムローズを連れて来たから許してやろう。もう、帰っていいぞ」


 「そんな事出来るはずがないでしょう。プリムローズはどこなんです?彼女、様子がおかしかったじゃないですか。とにかく彼女に合わせて下さい」


 「ハハハ。プリムローズは俺の言うことを聞くよう束縛の術を宝珠にかけてもらった。今、殿下とお楽しみの最中だ。会わせることは無理だな。さあ、わかったら帰れ。おい、こいつを摘まみだせ!」


 「クッソ!おい、兄は解放してくれるんだろうな?約束は守った。違えたのはそっちだ」


 「そんな約束した覚えはない。嫌ならお前も鉱山で働いてもらうが?」


 「どこまでも汚い奴らめ…」


 「うるさい奴め!いいから摘まみだせ!」


 ライゼウスは機嫌の悪い声でそう言った。



 いきなりリビングルームの前に広がる庭に激しい風が吹き荒れる。まるで嵐のように激しい雨が降り始め雷が大きな音を立てて轟き稲光が光って庭の一番大きな木に雷が落ちた。


 「なんだ?うそだろう?いきなり雷が落ちるなんて…」


 ライゼウスが驚いて窓際のそばでつぶやいている。



 『カイト、プリムローズはどこだ?』


 カイトの脳内にアルナンドの声がした。カイトはその声にこたえるように叫んだ。


 「プリムローズを助けてくれ。王太子に襲われてるらしい」


 『なんだと!クッソ。屋敷ごと潰す』


 『アルナンド早まるな。プリムローズも死ぬだろ』ブレディがすかさず止める。


 「ああ、それはやめた方が…」カイトも小さな声でつぶやいた。


 


 地響きがしたと思ったらすさまじい爆発音と砂煙が巻き上がった。


 やっと砂煙が落ち着くと大きな竜が2匹表の庭にいた。


 「「「おい、竜だ!竜がいるぞ!」」」


 何人もの男たちは表で竜を遠巻きに囲んで騒いでいる。



 もちろん竜はアルナンドとブレディだ。


 アルナンドはあれから身体に異変が起きてここに来るのが少し遅れた。


 異変と言うのは、アルナンドの誕生日が今日だった事と番と交わりを交わしたことでアルナンドの身体が覚醒を起こしたのだった。


 彼の鱗はダイアモンドのような色から七色に変わりそれはもう美しい虹色の鱗になっていた。


 光の加減で色が変わり見るたびに違う色合いに見える。


 そして身体も一回り大きくなり力も倍増したらしい。


 そのせいでアルナンドは力が漲って仕方がないらしく。鼻息も荒くこんな華々しいデビューとなったのだった。



 「うるさい!プリムローズはどこだ?早く教えないとお前らみんな…」


 アルナンドがそこまで言うとブレディが口から勢いよく水を吐き出した。


 その水の勢いと言ったら…周りの木をなぎ倒しまるで斧か大きな剣を思わせた。


 「あんなものでやられたらひとたまりもないぞ…言います。言いますからやめて下さい」


 「早く言え!」


 アルナンドは紫色の瞳ぎろりと睨みつける。瞳の中にはギラギラ血走った光が今にも氷の一撃を浴びせそうな勢いで…


 「か、彼女は2階の寝室です。ほら、カーテンが閉まっているでしょう。あの部屋です」


 「カーテン?」


 アルナンドがそう呟くのと飛び上がるのはほとんど同時だった。


 すぐに翼で一陣の風をおこしその部屋の窓をたたき割るとアルナンドは一瞬で人型になってその部屋に飛び込んだ。



 「プリムローズ無事か?」


 アルナンドは寝室に飛び込み中を見た。


 「あ、あるなんど?」


 「ぷりむろーず…それは一体?」


 「ええ、私このままじゃやられると思って、そうしたら母の記憶がね、ばぁぁぁぁと蘇って来て、そしたらいきなり力が漲って。何か、殻を破るって言うの?きっとそれで束縛の術が…何て言ったらいいか…こう…パキッて宝珠の周りを取り囲んでいた鎖がちぎれたみたいになって」


 プリムローズは下着姿のまま、身振り手振りで説明する。


 「ああ、だがその前にこの状況は?」


 「これ?こんなひ弱な男。一発で仕留めてやったわ」


 ベッドの上。プリムローズの下で男が伸びている。


 セザリオは下着姿で上半身は裸だが意識はない。



 「ああ、いいからこっちへ、さあ服を着て」


 「ええ、そうね。すぐに」


 プリムローズは言われるまま脱いだ服を着始めた。


 「プリムローズさっきの話だが…力が漲って来たって言うのはいつ頃だ?」


 「そうね…30分も経ってないんじゃないかな」


 アルナンドは驚く。ちょうどその頃だった。覚醒が始まったのは…


 (もしかして俺とプリムローズは同時に?まさか…いや、でも。そうか。俺の鱗を持っているプリムローズは俺と同体と言うことかもしれん。番でしかも俺とは一度繋がってお腹には子供までいるんだ。きっと俺達はもう離れられない関係になっているって事なのか?そうなら、もう一緒になるしかないんじゃ?あいつらには悪いがもう遠慮なんかしてられない。こんな奴もいる事だし、今すぐにプリムローズを俺の者にしないと…)






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