第45話 マグダの最期の言葉
「ひどいわアルナンド。お腹の子の父親はあなたなのに…」
プリムローズとうとう言ってしまう。
「「「なんだって?」」」3人の声は揃っていた。
「もういい!」
プリムローズは腹を立ててマグダのお墓の前に座り込んだ。
その瞬間プリムローズの脳内に一気に記憶が流れ込んで来た。
まず最初に10歳の時の記憶が…
湖のそばで遊んでいた。その日はちょうど誰もいなくてプリムローズはお気に入りの帽子をかぶっていた。
風が吹いて帽子が湖に飛ばされる。プリムローズは帽子を追いかけて湖に入る。だが、岸辺に会った帽子は風にどんどん流されて気づくと深い所まで入っていた。
脚が届かないと思った瞬間プリムローズは溺れると思いもがいた。そのせいで混乱してが簿がぼ水を飲み込み意識が薄れて行った。
気が付くと…湖の岸にいて、
あれはアルナンドだ。白金の髪をたなびかせ紫色の瞳がプリムローズをじっと見つめている。
何だか身体中が熱くてたまらずもがく。
アルナンドがそんなプリムローズをしっかり抱き留めてつぶやいた。
「俺の番。お前は俺の番だ。見つけた俺の番を…だから死にかけていたお前に俺の竜鱗を与えた。いいか。俺はお前の番だ。でも、今はお前の記憶を消す。こんな怖い思いは忘れて安心して家に帰れ」
そう言われてプリムローズはすっかり溺れた事やアルナンドの事を忘れた。
(じゃあ、溺れた私をアルナンドが助けてくれたの?そして私が番ってわかってたって事。だからアルナンドは私を…ううん、でも…)
そんな事を思っていると次の記憶が蘇った。
15歳のプリムローズだった。
マグダは息も絶え絶えでプリムローズの手を握っている。
「いいかいプリムローズ。良く聞いておくれ。私はこの森で竜族の長としてやってきたのは知ってるだろう?この身体の中には竜帝から賜った宝珠が入っている。私が死んだらすぐにお墓に埋められるだろう。だが、宝珠は7日後にこの身体の中から出て来るんだよ。私は宝珠を守るためわざとこの事は誰にも言わずに死んでいくつもりだ。だからお前が18歳になって私の墓を掘り出しておくれ。私は骨になっているだろうが宝珠はそのまま残っているはず、それを取り出してお前の身体に取り込むんだよ」
「そんなの無理だから。マグダ死ぬなんて言わないでお願い」
プリムローズはマグダに縋りついた。
「それは無理だろうね。いいかいよくお聞き。今度はお前がこの森の長になりみんなや森を守って行くんだよ。わかったかい?宝珠を手に取れば自然と身体が反応する。だから心配ない。この森やみんなを守れるのはお前だけなんだよ。だから頼んだよ」
「でも…」
そんなの無理だと言いかけるプリムローズの手をぎゅっと握りしめてマグダは涙をはらはら流す。
「お前なら出来る心配ない。そしてプリムローズどうか幸せになっておくれ。私はお前の幸せだけが願いなんだからね」
マグダは苦しそうにしたまま何かをしたらしくプリムローズはわからないまま気を失った。
そして気が付いた時にはマグダは亡くなっていたのだ。
***
プリムローズは大きく息を吸い込む。
(ああ…どうしてこんな大切なことを忘れさせたの。でも、私はその後3年間もラルフスコット辺境伯の所にいたんだし…きっとマグダは宝珠を守るために…マグダ宝珠は私が必ず守るから。だってせぶりの森がこんなに悲しんでるんだもの。放っておけるわけがない)
マグダの最期の言葉を思い出してプリムローズは悲しんでなんかいられない。むしろしっかりしなきゃって思った。
「カイトわかったわ。思い出した。宝珠はマグダのお墓の中よ。あなたが教えてくれたおかげよ。ありがとう」
プリムローズはカイトにお礼を言った。
そしてやっとアルナンドの事を思い出す。
(それにしてもアルナンドったら、私を助けてくれてたなんて…それにどうして番の事黙って…そっか。みんな番認識阻害薬飲んだって言ってたわよね。アルナンドも私が番だって知ってたはずよね?)
「ちょっと!アルナンドどういう事よ。ちゃんと説明しなさいよ!」
プリムローズは仁王様のように腕を腰に当て胸を反らした。
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