第31話 婚活パーティーは盛り上がる


 プリムローズは何とか落ち着きを取り戻したフランソワと一緒にフロアに戻る。


 「みなさ~ん。お騒がせしました。ほんとにアルナンドさんは少し緊張されたようでいつもはあんなことは起きないんですけど…」


 そう言いながらプリムローズがフロアの真ん中あたりまで来ると散らばっていた人たちが集まって来た。


 「本当に驚いたよ。でも、もう大丈夫だろう。さあ、みんな」レイモンドは髪を撫ぜつけながら紳士的な対応をする。


 「ええ、びっくりしましたけど‥フランソワ大丈夫?」アドナがフランソワに駆け寄って来る。


 「もう大丈夫よ。少し驚いたけど。それにダイルさんとピックが服を乾かしてくれてね…」


 フランソワはすっかり落ち着きを取り戻して温かい風で服を乾かした事を自慢気に話し始めた。



 すっかりみんなの気持ちが落ち着いたところでさっきの続きを始める。


 またみんなで輪になって男女でぐるぐる回りストップの号令で止まる。


 アルナンドがいなくなったことでプリムローズは進行役に戻って場を盛り上げる。


 「さあ、今度は飲み物を同じグラスで一緒に飲むです。ピック。みなさんにグラスを配って」


 ダイルやプリムローズも手伝ってグラスをみんなに手渡す。


 「でも、どうやってふたりで一緒に飲むんだ?」


 「これってどうやって?」


 「え~これなに?」


 初めて見るストローにみんな興味津々でプリムローズは心の中で(掴みはオッケーと)喜ぶ。


「これはストローと言って細長い筒の中に穴が開いていて、ここに口をつけてちゅうと吸い込むと飲み物がこの中を伝って口の中に流れ込んで来るんです。さあ、みなさんもやってみて下さい」


 プリムローズは実際に自分がストローで飲み物を飲んで見せる。


 みんなはそれを見てやり方が分かったとストローを手に取り口につける。


 ふたりで一緒に飲むとなるとどうやっても向かい合わせになることに戸惑いながらも、ふたりでグラスのストローを口に含み始めた。


 ストローはこの世界にないものだったがプリムローズは麦の茎がストローになる事を前世で知っていたので麦の茎を手に入れてストローにしたものだ。



 何だかいい雰囲気が出来始めて、続いて今度は席について物まねゲームやビンゴゲームなどをおこなって行った。


 ぎこちなかった人たちだったが、こうやって一緒に行動を共にすると何だか連帯感のようなものが出来て来るのか次第にみんなは打ち解けあって行った。


 

 最後の質問タイムでは女性が男性陣に質問する形を取った。


 まずはフランソワが聞く。


 「みなさんは好きな女性に告白するときどんな場所を選びますか」


 いきなりドストライク!エリオットやチャド達はブッと噴出した。


 プリムローズも慌てたがその質問にすんなり答えたのはレイモンドだった。


 「そう言うのって女の子はすごく気になるよね。僕はやっぱりどれだけ真剣かってわかってほしいから一番高級な店でかな…」


 「いいですね。他の方は?」プリムローズは話しを進める。


 「俺はそんな余裕ないかも…でも、もし前もって場所を決めておくならやっぱ海の見える公園とか?夕焼けを一緒に見ながら告白なんていいよなぁ」


 カイトのちょっとぶっきらぼうな言い方もだが、内容が…


 (カイト。はぁぁ、キザ過ぎない?まあ、この世界だとそう言うくそ真面目なのが主流なんだろうな)プリムローズアマリに脳内が吉田あかねに寄り過ぎてついていけないが、そこはさらりと。


 「いいですね。私も憧れますね。次は…」


 「俺はおしゃれなカフェがせいぜいかな。でも気持ちはめちゃ真剣に伝えたいって思う」


 そう言ったのはエリオット。


 「俺も…女の子が好きそうなカフェで告白したいって思う」


 チャドが後に続く。


 プリムローズは続いて意見が出てほっとする。さあ、それで後のふたりは?


 「そうですよね。おしゃれなカフェで告白。すごくいいです。さあ、それでは竜人でもあるおふたりはどうでしょう?」


 ブレディが俺?と自分を指さす。プリムローズはゆっくり頷く。


 「あの…俺。この国に来て間がないのでその…デートスポットとかもよくわからないけど…ゼフェリス国ではやっぱり告白はカフェとか庭園のような場所が定番で…やっぱり好きそうなカフェか?あっ、告白の時は花を持って行くつもりだ」


 あのブレディがしどろもどろになりながらそう言い終わるとどうだとばかりにプリムローズを見た。


 「ブレディ取ってもいい考えですね。さあ、最後になりましたけどレゴマールさんはどうです?」


 「俺?おれは…俺もブレディと同じ意見だな。カフェが一番いいと思うし花束は絶対だな」


 「さあ、皆さんの意見が出そろいました。女性の方良く聞いて覚えておいた方がいいかも知れませんよ」



 そうやって有意義な時間を過ごした結果!


 帰りには何となく気の合うカップルらしきものが誕生。


 まずレイモンドとフランソワ。レイモンドは服が凍り付いてしまった辺りからフランソワの意外な一面を見たらしく、それからフランソワのそばで彼女を気遣っていた。


 エリオットはマリーンと気が合ったらしく。ふたりで話をしながら帰って行った。


 そしてチャドとエリスも何となくいい雰囲気になっていて次に会う機会を作って欲しいと頼まれた。


 カイトはプリムローズにふたりきりで会えないかと誘って来たがもちろんお断り。


 ブレディとレゴマールはアルナンドの一件があって女性たちから敬遠されたみたいで、でもミルフィとアドナにはもう少しこの二人を進めてみるつもりだ。


 取りあえず婚活パーティーは大成功だった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る