第26話 婚活パーティーのアイディア


 祭りが終わって翌日は休日だった。


 プリムローズは疲れていたので昼過ぎまで寝てゴロゴロベッドの中で過ごすと言う紛れもないぐうたらな時間を過ごした。


 (こんな時間が持てるなんて幸せ!やっぱり仕事と私生活は充実してなくちゃね。この調子だと仕事もやりがいありそうだし、休日はゆっくり過ごせそう。願ったりかなったりだわ)


 ただ、唯一この姿のまま部屋からは一歩も出れない事は仕方がないと諦めるしかない。


 それでもお昼近くなるとダイルが心配して声を掛けてくれて、食事を扉の外に持て来てもらえるというありがたい幸運に見舞われたし、夕食はレゴマールが張り切って特製のチキンの詰め物を作ってくれて、すごく美味しくて大満足した。


 そうしてプリムローズは一週間の疲れをすっかり吹き飛ばすことが出来た。



 そして次の週が始まった。


 プリムローズはお祭りの時集まった登録カードを整理しながら次の計画を考える。


 (今度はお互いの紹介をする事になるけど、この世界の常識を考えればいきなりふたりで待ち合わせデートは難しいかも‥何組かまとめてパーティー形式で出会いの場を作る方がいいのかな?)


 「ダイル少しご相談が…」


 「はい、何でしょう?」


 「今度お見合いパーティーを開きたいと思うのですが」


 「ええ、そうですね。せっかく登録していただいた方に直接ご紹介もいいかも知れませんが皆さんいきなり二人きりで会うと言うのは難しいかも知れませんね。いいですよ。屋敷でもここでも構いませんが指示していただければ準備しますので」


 (さすがダイル。気の回し方が手慣れている。私のそばにもこんな人がいてくれたらなぁ…)


 思わずダイルに見とれる。


 「プリムローズ?何かおかしな事でも言いましたか?」


 ダイルは琥珀色の瞳で覗き込むようにプリムローズの顔を伺う。


 「いえ、頼りになるなと思って…では、場所やどんな事をするか考えましょうか」


 そうやって場所はこの結婚相談所のフロアを使うことにする。


 催し物はこれまた前世での経験を生かしてアイディアを考える。


 プリムローズは思いつくアイディアを紙に書いていく。


 ***


 ①人探しゲーム。その人の特徴で人を探して行くゲーム。


 着ている服の色、アクセサリー、髪の色や瞳の色なんかもいいかも。


(でもなぁ…登録カードに髪色や瞳の色も書いてもらったけどみんな特徴があるからこれすぐわかっちゃうよね…)


 ②質問ゲーム。一人ずつ一つの質問をみんなに聞いて応えてもらうという単純なもの。


 好きなタイプとか、趣味やデートしてみたい場所や告白するならどんな場所でとか。


 (きっとみんな聞いてみたいことがあるはず…)


 ③名前ビンゴゲーム。集まった人の名前をビンゴカードのようなマスの用紙に書いていき司会者が名前をランダムに読み上げて行く。ビンゴと同じようにたて、横、斜めが揃ったらビンゴで、何か賞品を用意しておく。


 ④最後は王道の王様ゲーム。割りばしのような棒を用意して王様の印のついたものを引いた人が好きな命令を出せる。


 (でも、これは出来ることを予め決めておいた方がよさそう。出来ることを最初に紙に書いておいてその中から選んでもらおうとか?それで、結局出来る事って?


 ううん…変顔?気になる人に告白?


 あっ、あれだ。口にくわえた割りばしに輪ゴムを引っ掛けて次の人に回すとか…)


 ふたりで同じグラスの飲み物を飲む。高速まばたき。息を吹きかける。手をつなぐ。ものまねする。見つめ合う。ギャグ。はぐする。膝枕をする。尻文字。ポッキーを両端から食べる。キスの真似。


 と色々書きだしては見たものの。


 「どはっ!無理か」


 あまり過激なものは無理だろうと考えこんだ。


 (ああ…やっぱりシンプルで盛り上がることか…せいぜい人探しや質問ゲームは何とかなりそうかな?それから飲み物を一緒に飲むとか息を吹きかける、瞬きする。手をつなぐとか見つめ合うなんてくらいは出来るかな?物まねは動物とか…あっ、椅子取りゲームとかは?


 はぁぁぁ…これは前途多難か…いや!待て。前世で社畜だった吉田あかね。あの頃私は結果を出すことに無我夢中できわどい王様ゲームもいくつかこなしたけど、結果けっこうそれが成功したことが多かったじゃない。ここは雰囲気しだいではきわどいやり方もうまく行くかもしれない!)


 プリムローズはその日しばらく忘れていたがむしゃらに働いていた頃のエネルギッシュな感覚が蘇りやる気モードに突入する。


 よし!当日は一発逆転ゲームもありで。もし、脈ありと見た相手には押せ押せモードで行ってみよう!!


 前世。吉田あかね。やるときはやりますから!


 プリムローズは心の蚊でガッツポーズをした。





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