第45話 先生たちのセクハラはどんどんエスカレートする

「ゆ、ユリア先生にキスを……」


 家に帰り、先程ユリアにキスされた事が頭から離れず、困惑する拓雄。


 すみれと彩子は疑う余地のないくらい、好意を露にして迫っていたが、まさかユリアまで自分にあんな事をしてくるとは思わず、動揺して心臓の高鳴りを抑え切れなくなっていた。


(ユリア先生、僕の事を……)


 自分の家のすぐ近くに引っ越して来てから、まさかとは思っていたが、学園でも一番の美貌を誇るユリアは拓雄も特に意識していた為、彼女の唇と触れ合ったのを思い出すたびに、顔が真っ赤になっていった。


「先生……っ!」


 窓を開けて、向かい側にあるユリアの住むアパートを見ると、ちょうど窓を開けてこちらを見ているユリアと顔が合ってしまう。


「…………」


(え? こっちに来いって?)


 ユリアが手招きして、拓雄に来いと指示してきたので、拓雄も外に出る。




「ユリア先生……」


「来たわね。ちょっと上がりなさい」


 外に出ると、ユリアは自宅のすぐ近くで待っており、拓雄をアパートの自分の部屋に迎え入れる。




「今日はごめんなさい」


「は、はあ……」


 彼女の部屋に上がるや、ユリアはさっき、キスをした事をすぐに謝る。


「私の事、恨んでいる?」


「い、いえ……そんな事は……」


「なら、良いわ。先生に辞めて欲しいなら、言ってくれても構わないわ」


「い、言いません! 絶対に」


「そう。良い子ね」


 と、ユリアは穏やかに微笑み、彼の頭を撫でる。 


「今日の事は、忘れたければ忘れて。もし、我慢出来なくなったら、いつでも来て良いから。はい、これ」


「え? 何ですか?」


 ユリアがポケットから、小袋を拓雄に手渡すと、


「合鍵。皆には内緒よ。良いわね?」 


「――! あ、合鍵って……」


「呼び出して悪かったわね。それじゃあ、もう遅いから帰りなさい。また明日ね」


「はい……」


 彼女から渡された合鍵を思わず受け取ってしまい、しばらく呆然とする拓雄。


 今ので、もうユリアも自分に好意を寄せている事が明らかになり、拓雄は三人の事で頭がいっぱいになって、落ち着かない夜を過ごしていったのであった。




「ふふふ、拓雄~~……おっはよう♪」


「あ……おはようございます」


 翌日、学校に来ると、担任のすみれがニヤ付きながら、拓雄に挨拶する。


「辛気臭い顔をしてるわね。ちゃんと元気よく挨拶しなさいって言ってるでしょう。タマ付いてるんでしょうか、んーー?」


「はううっ!」


 挨拶が小さかったのが気に入らなかったのか、すみれが拓雄の股間を手で押し付けて揉んでいく。


 一応、周囲に誰もいないか確認していたが、もうすみれも校内でも遠慮はなかった。


「ふん、立派な物あるじゃない。男の子なら、ちゃんとなさいよ。美人先生に言い寄られてるからって好い気にならないように。んじゃね」


 パンっ!


 と、股間を叩いて、すみれがそう言った後、愉快な気分で職員室へと向かう。


 元々、拓雄に対するセクハラは酷い物であったが、最近は以前にもまして過激になっており、かと言って、誰にも言えず、ただ頭を悩ますばかりであった。




「ねえ、拓雄君、良いかな?」


「な、何ですか?」


 放課後になり、廊下を歩いている最中、彩子に声をかけられ、彼女と共に美術準備室に入ると、


「ふふ……んっ、んんっ!」


「んんっ!」


 彩子が急に拓雄に抱き付いて、いきなり唇を重ねる。


「んっ、ちゅっ、んん……んっ、はあっ! くす、ごめんね、急に……でも、先生、どうしても我慢出来なくてえ……」


 と、口を離すと、壁に拓雄を押し付けながら、胸を密着させて、甘い声で教え子にそう迫っていく。


 彩子はもっと大胆に迫っており、人目を盗んでは、幼い拓雄に体を密着して、躊躇う事もなく誘惑していたのであった。


「ね、これから暇? 先生と補習授業しない?」


「あの、えっと……」


「良いじゃない。先生とお、秘密の個人授業しましょう? くす、今日は美術部の活動もないから、先生と一緒にしよう。よかったら、先生のヌードデッサンとか♪」


「はうう……」


 顔を彼の胸に押し付けて擦りながら、猥褻な言葉を彼にかけて、あくまでも二人きりになろうとする。


「ねえ、拓雄君。先生、あなたの彼女よね?」


「ち、違います……」


「あら、ショック~~……先生、あなたの彼女になりたいのにい。拓雄君の事、好きなのになあ」


 好きとストレートに言われて、拓雄もドキっと胸が高鳴る。


 彼なりに勇気を振り絞って、違うと言ったのだが、彩子は構わず、押し捲り、意地でもうんと言わせようとしていたのであった。




「ね、やっぱり、先生と補習する……?」


「わ、わかりました……」


「キャーー、嬉しいわ。それじゃ、一緒に美術室に行こう」


 遂に断りきれなくなり、彩子の補習を受ける事になる。


 もちろん、まともな補習などではなく、




「くすくす、これでよしっと。さあ、先生のヌードデッサンをしようねえ」


 カーテンを閉めて、ドアの鍵を閉め、誰も入ってこないようにした所で、彩子が着ていたエプロンを脱ぎ、ブラウスも脱ぎ始める。


まさか、本当にヌードデッサンを描く気なのかとビックリした彼は、


「ま、待って下さい!」


「何?」


ブラウスを脱いで下着姿になった所で、拓雄は慌てて止めに入り


「あの、本当に……」


「うん。嫌なの?」


「嫌というか……」


「ああー、もしかしてデッサンじゃなくてー、もっといけない事したいの? くす、しょうがないなあ。じゃあ、デッサンのついでに……」


「――っ! し、失礼します!」


「あ、ちょっと!」


 本当にこのまま、一線を超える気でいた彩子を見て、遂に耐えきれなくなった拓雄が、美術室から逃げ出す。


 いくら何でも刺激が強すぎる誘惑に、まだ幼い彼が受け入れる事は出来なかったのだ。




 翌日、彼は学校を休んでしまう。


 精神的に限界を超えてしまい、拓雄も遂に登校に支障をきたす程、心を病んでしまい、ベッドにくるまっていた。




「電話が……はい」


『やっほー、拓雄。ずる休み満喫してるう?』


「す、すみれ先生!」


 夕方になり、すみれが電話をかけてきたので、びっくりして拓雄が飛び起きる。


『クスクス、やっぱりずる休みじゃない……ん、良い度胸してるわね、ずる休みなんて』


『あ、あの今日は……』


『違うと言うのかしら? なら、今すぐあんたの家に行って確かめるわよ。課題を渡しにね、くくく』


完全にすみれに見抜かれておりま、彼女の笑い声を聞いて、拓雄も目を瞑る。




『あんたは、先生達から逃げられないの。わかった? 今日は大目に見てやるけど、明日、休んだら本当に家庭訪問するわよ。真中先生とユリア先生も一緒にね』


 そうすみれが告げると、拓雄は更に絶望的な気分になる。


 もう三人に家も知られており、拓雄は彼女らの束縛から逃げられない状況にあったのだ。


『明日は来なさいよ。来ないと、先生達、あんたの子供産んじゃうから。その年でパパになりたきゃ好きになさい。じゃあねー。ちゅっ』


 と忠告し、電話越しにキスをして、すみれが携帯を切る。


 彼女の電話を聞いて、拓雄も更にうなだれるしかなかったのであった。

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