第43話 先生達との酒池肉林の打ち上げ

「えーと、明日は文化祭の振替休日になります。皆さん、ゆっくりと休んで、明後日からまた頑張る様に」

 文化祭の翌日、片付けを終え、帰りのホームルームですみれがそう告げた後、教室も喧騒に包まれる。

 ようやく文化祭も全て終わり、拓雄も開放感に包まれてホッと一息付きながら、教室を出ると、

「拓雄〜〜、ちょっと良い?」

「はい?」

 すみれにすぐ呼び止められ、何事かと振り向き、

「あなた、今日日直でしょう。学級日誌、出してから帰りなさい」

「あ、すみません……」

 そう言われ、拓雄もうっかりしていたと、教室に戻り、学級日誌を急いで書く。

 今日は片付けだけだったので、すぐに書き終え、職員室にいったすみれの所に運んでいった。


「失礼します……あれ、先生は……」

 学級日誌を渡しに職員室に行き、すみれの机に向かって行ったが、肝心のすみれの姿が見当たらなかった。

「ん? これは……」

 彼女の机に日誌を置こうとすると、一枚のメモが机に貼り付いていた。

『日誌を置いたら、いつもの場所に集合ねー』

 と書いてあり、拓雄もそれを見て軽く溜息を付く。

 いつもの場所の見当は付いていたので、拓雄もメモを持って、その場所へと歩いていった。


「失礼します」

「きゃー、よく来たわね拓雄君。さっ、座って座って♪」

 美術準備室に入ると、案の定、すみれ、彩子、ユリアの三人が既におり、拓雄が来たのを見て彩子は彼を笑顔で出迎え、鍵を締めて抱き付いていった。

「ふふ、あの書き置きでよくわかったじゃない。あんたも先生達の男って、自覚が出て来たのかしら」

「そ、そう言う訳じゃ……」

「やーん、彩子は俺の女だなんてー♪」

 と、すみれと彩子に茶化されながら、拓雄も困った顔をして、椅子に座る。

 もうこんなやり取りも慣れてしまったので、拓雄ももう何とも思わなくなっていたが、

「あの、今日は何の……」

「文化祭の打ち上げ、やる事にしたから、あんたも参加なさい」

「えっと、打ち上げですか?」

「そうよ。生徒を誘うのは個人的にはどうかと思ったけど、すみれ先生と彩子先生がどうしてもあなたも一緒じゃないと嫌だと駄々を捏ねるから」

「昨日、他の先生たちとの打ち上げは済ませたから、今日は三人でしたいと思って。くすくす、ねえ、良いでしょう?」

「はあ……良いですけど……」

 何故、自分を誘うのかと首を傾げていたが、先生達の誘いならと拓雄もうんと頷く。

「ふふ、じゃあ、今日の七時にユリア先生の家に集合ねー。くくく、楽しみだわあ」

 と、何故か悪巧みをしているような笑みをすみれが浮かべていた。


 ピンポーン。

「あら、よく来たわね。さあ、入って」

「お邪魔します」

 約束の時間になり、ユリアの家に行くと、既に帰宅していたユリアが拓雄を出迎える。

 そして、彼女に案内されて居間に向かうと、

「いらっしゃい、拓雄君。さ、こっち座って」

「は、はい……」

 既にすみれと彩子も着ており、彩子が彼を隣に座らせ、すぐに彼の腕を組む。

「よーく来たじゃない。今夜は寝かさないわよー」

「ふふ、今夜は美人の先生たちと酒池肉林の打ち上げよ。さあ、早速、乾杯しましょうか」

「酒は出さないわよ。全く……」

 すみれと彩子に挟まれ、彼女らに体を密着されながら、拓雄がコップにジュースを注がれ、乾杯をする。


「はい、あーんして、あなた」

「あ、あーん……」

 料理を皿に盛り、彩子があーんして、何度も拓雄に食べさせる。

「こら、私のもー。ほら、んーー」

「え……」

 すみれがフライドポテトを口に含んで、食べさせようとしたので、拓雄もそっと口にすると、

「んぐ……んっ、んちゅっ!」

「――っ!」

 すみれも一気にフライドポテトを食べて、教え子と唇を重ねる。

「ああーー、何やってるのよ、すみれ先生!」

「へへ♪ つい、拓雄とキスしちゃった」

「むうう……ほ、ほら拓雄君、食べかす付いてるわよ。ちゅっ」

「はうう……」

 彩子も対抗するように、彼の頬にキスをし、彼女らの唇が触れるのを感じて、顔を真っ赤にする。

 そんな様子が可愛らしく思えてしまい、

「あーん、拓雄君、可愛いわ。ほら、先生の胸に飛び込んで甘えて」

「んぎゅっ!」

 母性本能を刺激された彩子が、彼を抱きついて、豊かな胸の谷間に挟み込む。

 もはや教師とは思えない、過剰な接待にすっかり拓雄も翻弄されてしまい、目を回していくばかりであった


「はいはい、そこまでよ」

「ふふ、そうね。じゃあ、ちょっと先生たちとゲームしましょうか」

「んぐ……?」

彩子の胸に顔を埋めていた拓雄にすみれがそう言い、拓雄も首を傾げると、

「簡単なゲームよ。このくじを引いて、赤い印のついたくじを引いたら負け。負けたら一枚脱ぐってゲームよ」

「そ、そんなの……」

すみれが箱を取り出して、そう言うと、とんでもない内容に拓雄も表情を引きつらせる。

「あらー、そんな破廉恥なゲームを生徒してるのバレたらクビになっちゃうって? あんたが黙っていれば大丈夫なの。オッケー?」

「はうう……」

「じゃあ、やるわよ。まずはユリア先生ね」

「しょうがないわね」

 乗り気ではなかったが、


「引いた? じゃあ、開けるわよ。はい」

 四人が箱の中に入っていた白い紙を折り畳んだくじを引き、一斉に開くと、

「きゃー、私、外れ引いちゃったわ」

「私も」

「あん。私もだわ」

「え……」

 三人がそれぞれ、赤い印の書かれたくじを開く。

 拓雄には付いてなかったので、目を丸くしたが、

「拓雄だけ当たりを引いちゃったのね。じゃあ、しょうがないわ。ほら、みんな脱いで」

「し、仕方ないですね。くす、じゃあ脱ぐわよ……」

 すみれに急かされて、彩子も恥ずかしそうにしながらも、さっさとブラウスを脱ぎ、すみれも上着を脱いで下着姿になる。

 彩子は白の、すみれはシースルーの黒の大胆なブラジャーをしており、純情な拓雄には目に毒なくらい扇情的であった。

「ほら、ユリア先生も」

「はいはい」

 ユリアは溜息を付きながら、羽織っていたカーディガンを脱ぐ。

 だが、下に半袖のブラウスを着ていたので、ユリアはまだ下着姿にはなってなかった。

「あーん、恥ずかしいわあ。でも、先生のおっぱい、どう? もしよかったら、ブラジャーも脱いで、全部見せてあげても良いけどー……」

「だ、だめですう……」

 彩子はブラジャーに覆われただけの胸を拓雄に押し付けて、甘い声でそう誘い、拓雄も顔を真っ赤にして、目を逸らす。

「はい、二回戦ねー」

「はーい♪」

 すみれがそう言って、またくじの入った箱を差し出し、三人が中に入ってるくじを取り出す。


「じゃあ、開くわよ♪」

「あん、また外れだわ」

「私も」

「え……」

 拓雄以外の三人がまた赤い印の入ったくじを引き、

「んじゃ、今度は下を脱ぎますか」

 そう言ってすみれが、履いていたジーンズを脱いで、彩子もスカートを脱ぐ。

 生徒の前で惜しげもなくフタリが下着姿になり、更に拓雄にキャバクラ嬢の様に体を密着させ、

「ねえ、先生達の下着、どう?」

「はうう……」

 彩子が艶やかな口調で肌を押し付け、更に彼の手を胸に押し付ける。

「ほら、ユリア先生も」

「はいはい。じゃあ、仕方ないわね……」

「っ!」

 すみれに促され、ユリアも溜息を付いて、上着を脱ぎ、下着姿になろうとする。

 それを見て、拓雄も遂に耐えきれなくなり、

「し、失礼します!」

「きゃん! あ、拓雄くーん!」

 彩子の手を振りほどいて、拓雄が堪らず逃げ出してしまう。

 あまりにも過激すぎて、拓雄にはとても耐えられず、この場にいる事は不可能であった。


「ちっ、やり過ぎたか」

「もう、あとちょっとで既成事実作れそうだったのに!」

「人の家で、変な事、考えないで下さい。でも、失礼ね。私の裸、そんなに見たくないのかしら」

「いやあ、むしろ逆って言うか……」

 拓雄が逃げ出した後、三人が取り逃がした事を舌打ちし、彩子は特に頬を膨らませる。

 だが、もう一線を超えるのは時間の問題であり、三人とも服を着て残った料理を食べながら、打ち上げの続きをしたのであった。

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