第14話 先生達とまとめてデート

「んーー、じゃあ次はプール行こうか」


「ですね。ほら、彩子先生。いつまで、しょげているんですか」


「うう……」


 すみれ、彩子、ユリアの三人が未だにうなだれている彩子と共に、美術館を後にする。


 今日は本当なら、彩子と拓雄のラブラブのデートの筈だったのに、すみれ達の乱入によって、大幅に予定が狂ってしまい、恨めしそうに二人を睨みながら、彩子も歩いていた。


「本当なら、今頃拓雄君と……」


「まあまあ、落ち着いて。てか、拓雄、まだ中に居るのかしら?」


「私達より後に出ろと言っておきました。あの子、素直だから、先生の言う事はきちんと守りますね」


「確かに馬鹿正直な感じはするわね。彩子先生の誘いも、好きだからじゃなくて、先生の誘いだから断れなかったって所かしら」


「そ、そんな事……」


 すみれの言葉を聞いて、彩子がカっとなって否定しようとするが、寸での所で言葉を詰まらせる。


 自分が教師で相手が生徒という立場な以上、拓雄の方が立場が弱い訳で、気が弱い彼だからこそ断りにくかったと言う事は十分に考えられたのだ。


「そんなに怒らないで。二人きりになれる時間は少し作ってあげますから」


「本当?」


「うんうん。勇気を出した彩子先生に、少しだけ華を持たせてあげるから。ほら、早く行きましょう」


「約束ですよ! てか、水着ないですけど、貸し出し出来るんですか?」


「私が用意してありますから。ちなみに拓雄君の分も」


「用意良いですね! ユリア先生、最初から行く気満々だったんですか!」


 彩子が今日、拓雄とデートする事を早い段階で察知していたユリアは、既に三人でプールに行くつもりで、用意を済ませており、拓雄を彩子と独占させる気など最初からなかったのだ。




「んーー、広いプールね」


「そうですね」


 プールに着くと、三人が水着に着替え、プールサイドに出る。


 すみれはビキニ、ユリアは白のワンピースの水着に、彩子はビキニにTシャツを着ていたが、三人の美人女教師、特にユリアはプールでも注目を浴びており、そんな中を颯爽と歩く彼女の姿はとても美しかった。


「やっぱり、綺麗ですね、ユリア先生」


「お世辞でもありがとう」


「そういうのも何か嫌味に感じるなあ……あーあ、拓雄君、来ないかなあ」


 ユリアが他の客から注目を浴びるのは予想通りであり、すみれも彩子も彼女を性質の悪いナンパからどう守ろうか考えていたが、あまりにも美しかったせいで、逆に声をかけ辛いのか、特に声をかけられる事もなく、プールサイドで淡々と準備運動して、プールの中に入っていった。




「んーー、気持ち良いわねえ。もう少し、暑くなったら、今度は屋外プールに行こうかしら」


「ですね。彩子先生、泳げますか?」


「馬鹿にしないでください。高校の時、体育の授業で結構泳がされましたから、五十メートルは泳げます」


 五十メートルのプールに三人で入り、温水プールの中で軽く泳いでいく。




「あ、先生……」


「ん? きゃーー、拓雄君♪ 来てくれたんだあ」


 しばらく泳いだ後、拓雄が三人の下にやってきて、彼の顔を見るや、彩子もうれしそうにプールから飛び出す。


「あら、偶然ね、拓雄君。あなたもプール?」


「は、はい」


 あくまでも偶然、三人と鉢合わせした事にしようとしていたユリアは拓雄を見るや、白々しくそう言い、彼女の意図を察した拓雄も苦笑しながら頷く。


 ユリアの水着姿を見て、拓雄も彼女の美しく白い体に見とれてしまっていたが、そんな彼の視線を感じても、ユリアはいつもどおり、淡々としていた。


「ね、拓雄くんも先生と一緒に泳がない?」


「はい」


「あーん、嬉しい。へへ、拓雄君、この水着どうかな?」


 拓雄を見るや、急に色目を使い始めた彩子が、ユリアが用意したビキニを見せ付けるが、彼女の豊満なスタイルを見て、拓雄も顔を真っ赤にしてしまい、視線を逸らさずにはいられなかった。




「先生、泳ぎ苦手なの。よかったら、拓雄君、教えてくれる?」


「あの、僕もあんまり……」


 と、拓雄がプールに入ると、上目遣いで、彩子がそう彼の手を握っておねだりし、拓雄も彼女の熱い視線を感じて、胸をドキドキさせながら、そう言うと、


「ふふ、えいっ♪」


「うわっ!」


 急に背後から、すみれが飛びつき、プールの中に沈められる。


「あははは! ボーっとしてるんじゃないわよ。どう、先生の体は?」


「ゲホっ! ど、どうと言われましても……」


 すみれがプールの中で、自身の体を見せ付けるが、すみれの体は鍛えられてるのか、くびれもあり、ボディーラインも美しく、モデル顔負けのそのスタイルに、拓雄も見惚れてしまっていた。


 と言うより、三人の体はそれぞれ魅力的で甲乙付けがたく、まだ高校生の拓雄には刺激が強すぎて、三人の囲まれると、まともに動けない程であった。


「あーん、邪魔しないでくださいよ、すみれ先生」


「邪魔も何も、偶然会っただけだしー。ほら、拓雄、競争しましょう。先生に勝ったら、ジュース奢ってあげるから」


「え、ちょっと!」


 すみれが一方的に拓雄に告げて、クロールを始め、拓雄も後に続いていく。


 彼女はジムのプールで定期的に泳いでいるので、泳ぎも得意であり、男の拓雄でも全く敵わない程であった。




「はあ、はあ……」


「あーあ、情けないわね、拓雄。先生の圧勝じゃない」


「うう……」


 結局、すみれと競争しても勝てず、うなだれながら、プールに上がって息を切らす拓雄。


 泳ぎは得意という程でもなかったが、それでも負けてしまった事はショックだったのか、拓雄も落ち込んでいた。


「別に負けたからって、何か奢らせたりしないから安心なさい」


「担任がそれやったら、大問題になるわよ」


「わかってるから、しなかったんじゃない。あ、あそこにウォータースライダーあるわね」


「一緒にやろう、拓雄君!」


「は、はい!」


 すみれが向こうにあるウォータースライダーを見てそう言うと、彩子も拓雄の手を握って、彼を引っ張っていく。


 今回ばかりは邪魔するなと、彩子も二人を睨みつけ、ハイハイと呆れながら、すみれとユリアもスライダーに向かっていった。




「ふふ、一緒に滑ろうね、拓雄君」


「えっと……僕の上に?」


「うん。じゃ、行こう。キャーー♪」


 台に乗ると、彩子が拓雄の膝の上に乗り、彼に背を預けながら、滑り出す。


 折角のデートの予定だったので、せめて美味しい所だけでも、彩子は独占しようと、拓雄の膝の上に乗って抱かれながら、スライダーを滑っていき、そのままプールへと落下していった。




「きゃんっ! えへへ、楽しかったね、拓雄君」


「はい……」


 滑り終わると、彩子は彼と手をつないで、プールを歩き、その後にすみれとユリアもスライダーを滑っていった。


「あん、ちょっと物足りなかったわね」


「そうですね。きゃっ!」


「っ! ゆ、ユリア先生!?」


 急にユリアが体制を崩して、プールの中に溺れそうになったので、傍にいた拓雄が慌てて駆け寄る。


「先生、大丈夫ですか!?」


「大丈夫。ちょっと足が攣った気がしただけ」


 拓雄が駆け寄ると、即座にユリアが彼の背中に抱きつき、ユリアの胸が拓雄の背中に押し付けられる。


 彼女の胸が背に当たると、拓雄も顔が真っ赤になっていくが、とにかくプールサイドにああって、ユリアを座らせると、


「むうう……あーん、先生も足があ♪ 拓雄君、助けてえ」


「え……あ、はい」


「きゃんっ♪ やあん、嬉しいわあ。えへへ、ちょっと足が痛いから、しばらくこのままね」


 彩子もユリアに対抗して、わざとバランスを崩し、拓雄に抱きついて胸を背中に押し付ける。


 立て続けに先生達に抱きつかれて、その肌を密着させられ、拓雄も嫌でも彼女らを意識してしまうが、三人とのデートはまだこれからなのであった。

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