第48話

「そういえば随分急に帰ってきたけど何かあったの?」

レイリックは突然帰って来た弟レナードに尋ねる。

「何かって、それは僕のセリフだよ。兄さん、しばらくは婚約するつもりないって言ってたでしょ。それなのに婚約だなんてさ」

「他には?」

「何もないよ。あの兄さんが婚約する相手なんて興味があったし、それに将来自分の義姉になるかもしれない人なんだから話してみたかったんだよ。実際、兄さんってリリカ嬢のこと、どう思ってるの?」

「面白い女性だよ」

「それだけ?」

「?」

「いや、例えば恋愛的なあれとか、その……。急に婚約するぐらいなんだからそういう出会いとかあったのかなって思ったんだけど、違うの?」

「……そうだよ」

「えっ?」

「そうだ。僕はリリカ嬢のことが好きだよ」

自分で言いながら恥ずかしかったらしく、耳と頬が赤く染まっている。

「「ええっ!?」」

レナードとロベルトの声が重なった。

「聞かれたから答えたのに。そんなに意外かな?」

「いや、あの兄さんが……」

ロベルトも大きく頷いている。

「ロベルトがこの前持って来た恋愛小説を読んで気が付いたんだよ。この感情がそうなんだってね」

「「……」」

レイはそういうことに鈍いから気付くのはまだまだ先かと思ってたが、こんな早く気付くとはな。あれ渡して正解だったか。


「あ、あんなに面白い女性に会ったのは初めてだったから、それだけで婚約を決めたのは本当だよ。利害は一致していたからね」

レイリックは自然と早口になっている。

「利害?」

レイリックはレナードにリリカとの契約について説明をした。

「えっ、何それ!? 確かに、変わった令嬢ではあるけど……」

「でしょ?」


それで婚約を決めるなんて、まあ兄さんらしいかも。でもな〜、兄さんのことリリカ嬢はどう思ってるんだ? 気になるな。ちょっと、試してみるか。


そう思ったレナードは足早にリリカの部屋まで向かった。

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