第6話
「お嬢様!! 王太子殿下がお見えです!!」
「えっ!?」
リリカは大急ぎで準備をして、客間に向かう。
すると、そこにはレイリックとウィリアムが向かい合って座っていた。レイリックの後ろにはロベルトが立っている。
「久しぶりだね、リリカ嬢」
「お久しぶりでございます、殿下」
「お会いしたことがあったのか?」
「あっ、え、えっと、そう!! 以前王宮のお茶会にお招きいただいた際にお会いしました」
これは嘘ではない。リリカの過去の記憶を探ってレイリックと会ったことを思い出したのだ。
「そんなこともあったな」
ウィリアムはリリカに隣に座るように促した。
「それでどういったご要件でしょうか?」
ウィリアムも何も聞いていなかったようでレイリックに尋ねた。
「エバルディ公爵、私ウィリアムはリリカ嬢との婚約を申し込む」
「「!?」」
リリカもウィリアムも驚いて声が出ない。リリカはてっきり、書類だけで済ますのだと思っていた。直接王太子が訪ねて来るなど思ってもみなかった。
「しっ、しかし、リリカはまだ小さいですし」
「公爵令嬢なら婚約者がいても可笑しくない年齢では?」
「それはそうかもしれませんが……私にとっても可愛い妹なのでまだ婚約は……」
このままではマズい。やはりウィリアムを納得させるのが一番大変なようだ。それなら
「お兄様、私は婚約したいと思っておりますの」
「ど、どうして……この前までしたくないと言っていたじゃないか」
「気が変わりましたの。それに殿下のような素晴らしい方と婚約出来るのは真に光栄なことですわ」
「で、でも……」
「もし婚約を認めていただけないならお兄様のこと嫌いになってしまうかもしれませんわね」
お兄様には悪いけど、どうしても婚約が必要なんだからっ。
「!! き、きらい、嫌い……そんな」
チラッ
相当ショックを受けているようだ。項垂れている。
さすがに良心が痛むわ。
しばらくすると
「……婚約を許可します」
と消え入りそうなほど小さな声で返事をした。
ふうっ。どうにか婚約出来そうで良かった。
すでに王家からは許可を得ていたらしく、後は公爵家からの許可のみだったようだ。
ウィリアムは婚約許可証にサインをした。これで婚約が決まった。
お兄様には後で、美味しいお菓子でも差し入れましょう。
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