第6話 エンディング

翌朝、月子は彩からの手紙をポケットに入れて、学校へ向かう。手紙を読んでから一晩が過ぎ、彼女は彩の気持ちにどう応えるべきかを考え続けていた。


教室に到着すると、彩がすでに席についており、月子が入ると微笑んで見せた。月子は一瞬立ち止まり、彩に気づかれないようにそのまま自分の席に向かう。彩もその様子を見て、少し緊張した様子で目を伏せている。


授業が始まっても、月子の心は手紙の内容にとらわれていた。授業中も時折、彩の方に目を向けるものの、何を話しかければいいのか、どう反応すればいいのかがわからず、ただ黙っているだけだった。


昼休み、月子はいつものように食堂でランチを取っていたが、彩はなかなかやって来ない。月子は少し心配しながらも、手紙を受け取ったことを告げるタイミングを考えていた。


午後の授業が終わり、放課後のクラブ活動に向かう前に、月子は彩に声をかける決心をする。彼女は、彩が一人で教室に残っているのを見つけ、心を決めてその場に向かう。


「彩、ちょっといいかな?」美月は静かに声をかけた。彩は驚いたように顔を上げ、月子に目を向けた。彼女の表情には、緊張と期待が交錯しているように見えた。


「うん、何?」彩は少し不安そうに答えた。月子は深呼吸をしてから、言葉を選びながら話し始めた。


「手紙、ありがとう。あれを読んで、すごく驚いた。私も彩と過ごした時間は大切に思っているけど、正直に言うと、自分の気持ちをどうすればいいのかわからなくて。」月子は少し黙ってから続けた。「でも、手紙を読んで、私は彩ともっと深く理解し合いたいと思った。」


彩の顔に一瞬安堵の表情が浮かび、その後に柔らかい微笑みが広がった。「月子…私も同じ気持ちだよ。ずっとこの気持ちを伝えたかった。これからどうなるかわからないけど、一緒に過ごす時間を大切にしていきたい。」


月子はその言葉に頷き、少し照れたように笑った。「私もそう思う。これからも一緒にいろんなことを経験して、少しずつお互いを理解していけたらいいな。」


二人は、言葉の背後にある思いをじっくりと感じ取るように、ゆっくりと目を合わせた。教室の隅で、静かな時間が流れ、二人の間にあたたかい空気が広がった。月子と彩は、これからの未来をどのように歩んでいくのか、まだ具体的な計画は立てていなかったが、心の中でお互いに対する信頼と期待が確かに育っていることを感じていた。


教室を出る時、二人は自然に肩を寄せ合いながら歩き出した。これからの時間を共に過ごし、ゆっくりとお互いの気持ちを深めていく新たな一歩を踏み出す準備が整った。月子と彩の間には、これからの未来に対する新たな希望と、しっかりとした絆が生まれていた。

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