第1話 水泳の授業と謎のラブレター

夏の終わりが近づくと、学校のプールサイドは、さわやかな青空の下でさらに賑やかになる。しかし、月子はその光景を楽しむどころか、毎回の水泳授業が苦痛で仕方なかった。特に水着を着るのが苦手で、自由に見えるだけの制服の代わりに、ただの義務として感じられた。


その日も、真夏の暑さがプールの水面に反射して眩しく、指示通りに泳ぐことが退屈で仕方がなかった。女性教師の厳しい指示に従いながら、何度も泳ぎ続けるのは、息苦しさを感じるばかりだった。授業が終わり、プールサイドに出ると、冷たい風が心地よく感じられるものの、心はすっきりしないままだった。


授業が終わり、プールサイドから更衣室に向かう途中、美月は心の中で「どうして水泳の授業はこんなに苦手なのか」とつぶやきながら、着替えに向かった。更衣室の中は蒸し暑く、周囲の生徒たちが笑い声を上げながら話す声が響いていた。


月子は水着を脱ぎ、制服に着替える準備を始めた。制服は夏服のセーラー襟付きのブラウスと膝丈のスカート。整えられた制服は、彼女にとって落ち着くものであり、リラックスできる瞬間でもあった。しかし、その日はいつもと違う感覚があった。制服に袖を通すと、ポケットに何かが入っていることに気づいた。


手を入れてみると、そこには小さな封筒が入っていた。手紙だと気づいた月子は、少し驚きながらも、その封筒を開けると、内側には丁寧な文字で書かれたラブレターが入っていた。内容を読んでみると、優しく温かい言葉が並び、その手紙の差出人が誰なのかが気になって仕方がなかった。


月子は手紙を読み終えると、心の中でいくつかの質問が浮かび上がった。誰がこの手紙を送ったのか?どうして自分に?その答えを探りたくてたまらない気持ちでいっぱいになりながら、彼女は思いを巡らせた。


制服のポケットに再び手紙を戻し、外へと出ると、月子は手紙の差出人を探し始める決意を固めた。放課後の教室や廊下、友人たちの会話の中に、手紙の差出人を見つける手がかりがあるかもしれないと信じて、彼女はその日から探し始めたのだった。

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