第3話
「バレてた…?」
私は顔を赤らめながら、恥ずかしそうに尋ねた。
「ふふ、うん。結愛が俺のために一生懸命頑張ってくれてた事知ってたよ」
悠くんは優しく微笑んで答えた。
「…恥ずかしい」
私は視線を逸らし、少し俯いた。
少しでも悠くんの隣に似合う女性になりたくて、背伸びをして料理をしてみたけど、失敗してばっかりで、最近ようやく少しずつ上手くなってきている。
と言ってもやっとスタート地点に立てたぐらいだけど。
せっかくいい所を見せようと思っていたのに、恥ずかしいところを見られてしまった。
「痛かったよね。俺のためにありがとう」
悠くんは私の手を優しく握りながら言った。
「ううん、悠くんのためなら何でも頑張れるよ」
「そっか」
そう言うと、悠くんは微笑みながら私の頭を優しく撫でてくれた。
この瞬間、私はもっと頑張ろうと心に決めた。
悠くんのために、そして自分のために。
その日家に帰ると、お母さんが私を呼び止めた。
「結愛、塩と砂糖間違ってたでしょ」
お母さんは少し笑いながら言った。
「え?何の話?」
私は驚いて聞き返した。
「卵焼き。間違えて砂糖じゃなくて塩入れたでしょ。ビックリしちゃった」
お母さんは続けた。
お弁当を作ったついでにお母さんの分の朝ごはんも作ったんだけど、まさか塩と砂糖を入れ間違えたなんて。
「嘘、」
私は驚きと恥ずかしさで顔を覆った。
だからあの時先輩の表情がちょっと変だったんだ。私はその時のことを思い出した。
「すごくしょっぱかったけど、もしかして気づかなかったの?」
お母さんは笑いながら言った。
「悠くんが私の分の卵焼きも食べたから…」
私は小さな声で答えた。
悠くんはどうして美味しいなんて言って私の分まで…?
もしかして、悠くんって味音痴なのかな。
「あら、相変わらず優しいのねぇ悠くん」
お母さんは感心したように言った。
「え?」
「だって結愛がそのことを気づかないように、結愛の分まで食べてくれたってことでしょ?結愛が落ち込まないように。愛だわぁ」
お母さんは微笑んだ。
「そうだったんだ、」
私は少し感動しながら呟いた。
「あ、それじゃあ、私ったら余計なこと言っちゃったかしら」
お母さんは申し訳なさそうに言った。
「ううん。教えてくれてありがとう」
「悠くんには悪いから気付かないふりしてあげてね」
「分かった」
私は頷いた。
悠くんの彼女に似合う女性になりたいのに、いつもどうしてか上手くいかなくて。
悠くんにも気を使わせちゃって。
いつか、呆れて離れていっちゃうんじゃないかって、怖い…。
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