EX-2 義母との仲直り
「ふぅ、疲れたわね…」
今は昼過ぎ、ついさっきまで仕事だったのだけれど先日の事があってからはこうして早退することがある。
職場は理解がある人達ばかりで問題ないが、このままでは仕事もままならないし彼らに迷惑もかかってしまう。
思うように動かなくなった体をゆっくり休めていると、遊びに行っていたはずの
「ただいまお母さん」
「おかえり」
最近は美智も家事を手伝ってくれている。
どうやら私が病院に運ばれた日、晴政くんが美智に''出来たら家事を手伝ってやってほしい''と言ったみたいだ。
あんなことをした私、それを支えるように言ってくれた彼には感謝しかない。
どうしてあの時は…なんて後悔しても無駄なのに。
「お邪魔します」
美智の元気な声が聞こえたそのすぐ後に、この家では聞こえるはずのない声が響いた。
「えっ…」
「お母さん、お兄ちゃんが来てくれたよ」
久しぶりに見た美智の笑顔、そしてその横からひょっこりと晴政君が顔を出した。
「久しぶり、来江さん」
そう言った彼の笑顔は以前のような剣呑な雰囲気が無く、とても穏やかだった。
いつか見せてくれた笑顔、私がその尊さに気付かず手放してしまったもの。
「どっ、どうして来てくれたの…?」
喜びのあまり声が震えて、絞り出した声でそんなことを聞いた。
本来ならばありえないことだから。
「なんでって言われても、美智から頼まれたから…かな?」
おどけたようにそう言った彼は、私の傍にやってきた。
「だいぶ顔色が良くなったね、心配してたよ」
その声色もとても穏やかで、疲れた私の心を癒す。
そんな優しさを受けて、ふと涙が流れてしまう。
私は年甲斐もなく彼に抱きついて泣いた。
それでも彼はそっと背中を撫で続けてくれている。すっかり絆されてしまった。
「晴政くん、あの時は本当にごめんなさい」
改めて彼に頭を下げる。
だから私もあの人の財産目当てで結婚することを決めた。
あの時、晴政君にも興味が無かったのはそれが理由なのだけれど、本当はもっと誠実に向き合うべきだったんだ。
あの不誠実な人から晴政君を守ってあげることが私のやるべき事だった。今更の話だけど…。
「うん、分かったよ。だからこれからもよろしくね、来江さん」
そう言って差し出されたその手を、私は強く握った。
こうして私たちはもう一度 晴政くんと関わることはできるようになった。
もう家族として過ごすことは出来ないけれど、もう彼を見捨てたりしないと心に誓った。
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