十八話 断罪の時

 酒匂さかわがクソ親父を思いきりねじ伏せたあと、彩藤さいとうさん、母さん、義母、弁護士二人が入室した。この部屋ではちょっと…というかかなり狭い。


 殴られた俺を心配する母さんと莉乃りのに抱き締められており、今の俺はちょっとマヌケな姿だ。


「取り敢えず、色々と話してもらおうか」


 今はクソ親父に下着だけ着けてもらい、床に座らせて俺は勉強机用の椅子にどっかりと座り、コイツを見下ろす。当然スマホで録画もしている。


「話だとぉ…貴様なんぞに話すことなどないわ!」


 あくまで抵抗する気のようだが、そうは問屋とんやおろさない。


「あんた、ここでぐちゃぐちゃわめくなら、社長にあのことチクるぞ」


 あのこと…つまり横領の事だろう、酒匂さかわがその事を匂わせ強請ゆする。

 その事について、俺らは知らないということにしてあり、敢えて俺はしらばっくれる。


「あの事?何したんだよクソ親父」


「いっいや…それは…」


 目に見えて狼狽ろうばいするクソ親父だが、さすがにそれを匂わせられて抵抗はできないようだ。



 かくして俺はあの日の事をクソ親父に話させた。

 クソ親父と莉乃が共謀し、クソ親父が俺を殴ったことだ。

 そのあたりの細かいことを莉乃とクソ親父揃ってしっかり吐き出させ、それもしっかり録音した。


 俺は母さんの所に籍を移すため、その手続きに必要な書類をクソ親父に突きつけた。


 慰謝料に加えて養育費なんて払いたくないのか抵抗していたが、その度に酒匂が横領の件を匂わせる。


 そう言ったワンクッションを挟んでいた為に時間はかかってしまったが、なんとか事を終わらせることができた。


 しかしまだ終わらない、今度は元義母の番だ。


「あなたが浮気している証拠も出てきたことですし、ここまでの悪事を働いたあなたと私はもう一緒にはいられません。離婚しましょう」


「な…待ってくれ!それだけは!」


 そんな事がまかり通る訳ないだろうに…。

 みっともなく元義母にすがるクソ親父だが、弁護士もいる相手にそうそう強く出ることができず、俺だけでなく元義母にも慰謝料を払うハメになった。



 先程までとは打って変わって、クソ親父はまるで全てを失ったかのように顔をぐちゃぐちゃにして泣く。

 その姿は、恐ろしいほどにみっともなく気持ち悪さLv.100だった。やべぇモンスターだ…。



「あっちは知らねぇが、少なくともマサ君にはちゃんと慰謝料を払えよ?じゃなきゃ仕事無くなるぜぇ」


「うぅ、わかっ…たぁ……」


 逃げ場を無くしたクソ親父は、あまりにも滑稽な姿で目も当てられなかった。

 そんなアホを放置して、俺たちは全員家から出てきた。

 必要な書類関係はどうにかなったことだし、後の金関係はクソ親父次第だ。



「いやぁ、助かったよ酒匂」


「いいって事っすよ、マサ君」


 そう言って俺たちは握手をした。


「ところで、良かったのか?会社の金に手を付けてるのならその事はちゃんと訴えた方が…」


「あーその事…まぁ、まずはマサ君に慰謝料を払ってからっす。しばらくしたらこっちからも訴えますけどね」


 酒匂は笑いながらそう言った。

 それについてはどうぞお好きにって感じだ、横領せずとも金はあるだろうし、最悪 家と土地を売ってくれればいい。


「ある程度果たすべき義務を果たしたら、こっちからも容赦なく行かせてもらうっす」


「わかったよ、俺としてはクソ親父のプライドも何もかも捨てたみっともない姿を見られてスッキリだ」


 そんなこんなで決着が付き、大分楽な気分で日々を過ごすことができそうだと胸を撫で下ろした。



 俺は無事に母さんの子供に戻ることができそうだし、楽しみで仕方ない。

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