十二話 前準備
「診断書にこの録画か、悪くねぇんじゃね?」
「そうっすね…コイツも自分から尻尾だしてるよ、録画されてるとも知らずに」
「これでも充分だが…あと証言を集められそうなのは、
学校を終えた俺は、
あのクソ親父を訴えて、罰を与えるための準備だァ!
「うーん、もしできるならそっから証言とかとれねぇか?」
「勘弁っすね、それならもう一回殴られに行った方がいい」
これはマジ。覚悟さえ決めれば大した事じゃない。
あんな奴らに協力など頼みたくはない。
「んー、それこそ勘弁して欲しいんだが…」
「一応、元カノにも協力してもらうつもりですし、なんなら他の証拠も揃えてもらおうかと思ってっけど…んー、あんまり期待出来ない気もするんっスよね」
問題はヤツがどこまで本気なのか…。
ここぞとって時にトンズラこかれちゃたまんねぇ。
「でも、ヤる時に合わして凸るんだろ?」
「っすね、確実にするなら改めてそこで色々吐かせてやるってとこです」
「それなら、いい情報がある…実はな…」
彩藤さんが悪い笑みを浮かべて言った内容はそれはそれは本当にいい内容だった。
素晴らしい、是非利用させてもらおうか。
二人してニヤリと口角が上がっているその光景は、他の人が見たらさぞ怪しいものだろう。
「……そういや、なんで元カノはマサに協力してんだ?」
「それねぇ…アイツ曰く、抱いて欲しいとか何とか…」
「なんじゃそりゃ」
彼は顔を
わかるよォ その反応。謎発言過ぎるよな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まさかお義兄ちゃんが離れていくなんて…。
それは凄く悲しい話だ、でもお義兄ちゃんが最後に見せた涙、そして言っていた言葉は、私の心に深く刺さった。
『悲しかったんだよ、寂しかったんだよ…』
あまりにも悲痛な声と表情から出てきたその言葉は、お義兄ちゃんが想像以上にショックを受けていたことはっきり表していた。
「あたしには、悲しむ権利なんて…」
あるはずがない。その言葉をあたしは出すことが出来なかった…。
トボトボと歩いていると、見知った人がいた。
「あ…
「え?あぁ、アンタか」
以前は仲が良かった希お姉ちゃん、けれど今の彼女が見せる目は、とても鋭い。
「あの…お兄ちゃんは…」
「なに?
「お兄ちゃんって…その…」
言葉が、出ない…。
お義兄ちゃんを信じていないわけじゃないが…それでも、第三者からの意見が欲しかった。
''
「お兄ちゃんって、誰のこと?」
「え?」
希お姉ちゃんの言葉に思わず聞き返す。
「だから、お兄ちゃんって誰のことよ」
「お兄ちゃんは、お兄ちゃんだけど…」
質問の意図を汲みかねて、そう答えることしかできない。答えにならない言葉。
「はぁ…分からないならはっきり言うけど、アンタはアイツに何言ったか覚えてる?」
「うっ…うん」
忘れるはずもない…こともあろうにあたしは、お義兄ちゃんにクズとか犯罪者などと言ったのだ、挙句に死んじゃえとも。
それだけじゃなく血の繋がりがないことを取り上げ、それを良かったとまで言ってしまった。
「そう、ならアイツがアンタのお兄ちゃんである必要もないよね、それにもうそろそろアイツはアンタと家族じゃなくなるし」
「あ…あぁ…」
それでも聞きたくなかった…やっぱり私があの時お義兄ちゃんから聞いた通り、お義兄ちゃんは他人になってしまう…。
「アイツがどんな気持ちだったかわかる?凄く辛かっただろうね…やってもいないことで家族がみんな敵になるんだもん、辛いよね」
言葉の端々から感じる敵意にも似たそれはあたしの心を貫く。
「…うぅ…」
「せめて、
「あたし…あたしぃ…」
希お姉ちゃんの言う通りだ。
自分のした事によって罪悪感と後悔に
何故あの時お義兄ちゃんの言葉に耳を傾けなかったのか、なぜ義父の言葉に疑いを持たなかったのか…。
「今 晴政は父親を訴える為に準備をしてる、とだけ言っておくから。それじゃ」
希お姉ちゃんはそういって立ち去って行った。
訴えると言うのなら証拠が必要なはず、それは証言…つまり証人がいてもいい…そうなればあたしにもできる償いがあるのかもしれない。
そう思った私は自分の出来ることが何かを考えるために急いで家に向かった。
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