十一話 元カノの証拠集め
私はあれから
またハル君の部屋で、今日もするんだ。
愛しい彼の部屋で…また思い出を汚す。
「やぁ、よく来てくれた」
「こんにちは、粕斗さん」
今回はこのおっさんから、少しでもハル君の為になる発言を引っぱり出すことが目的だ。
「あの、急にあれなんですけど…」
「ん?なんだい?」
「あの時のお金って…どうなってますか?」
今、私は胸ポケットに入れたスマホで録音…ではなく録画している。
私の胸や下半身に目を向けていても、すっかり油断しているようで気付く様子はない。
あの時のお金とは、ハル君をハメる為の嘘を一緒に吐いた事についての、いわば口止め料のようなものだ。
「あぁ、すまない。今は持ち合わせがなくてね…次の時でもいいかな?」
「そんな…私はあなたの言う通りハル君がDVをしてくるって嘘を吐きました。あなたはあれだけハル君を殴って…私だってハル君から嫌われたんです。せめてお金くらいは払ってくれませんか?」
敢えて食い下がる。
もしかしたら口を滑らせるかも?と思った。
「まぁまぁ落ち着いて、あれだけ引き摺り回しては蹴って殴ってやったんだ、あいつだってもうなにも出来んだろう。っははは!あいつの顔を思い出しただけで笑えてくるよ…あんな小僧では足りないくらい今日も気持ちよくしてあげるからな。次会う時には少し多めに金を渡すから、今日は許してくれ」
私の後ろに回って両肩に触れてくる。
おぞましい…最低なオヤジだけど、私も変わらない。
友人に彼が殴られている事を話して、笑っていたのだから。
今この人を見て、それがどれだけ
「分かりました」
「さぁ、早く脱いでくれ。もう待ちきれない」
そう言って服を脱ぎ出すおっさんに合わせ、私もゆっくり服を脱ぐ。
「なんだ、まだ脱いでないのか。どれ、俺が脱がしてやろう」
私が未だ上着しか脱いでいないのを見たこの人は、そういって私のスカートに手をかけた。
今日も…私はこの人に体を許す。
結局あの人の未熟なテクで時間が過ぎた。
不愉快なだけの、ただ退屈な時間。
「いやぁ…今日も良かったよ。ほら、今日の分だ」
そう言ってこの人は私にお金を渡してきたので、それを受け取った。
お礼を告げてさっさと家を後にする。
「やっぱり、ハル君の方が上手…」
付き合っていた時のことを思い出し、独りごちる。
夕日の照らす道を歩いて早足で歩き、そのまま私は帰宅した。
すぐに風呂に入って汚れた身体を洗う。
スマホにはばっちりと私とあの人との様子が保存されていた。
こんなところをハル君に見られるのは嫌だが、今更だ。
もしあの時、あの人の言葉に乗らなければ…私は今もハル君と一緒にいられたのに。
ハル君にあのオヤジとセックスしている所を見られた時、私は凄く焦った。
しかしヤツは私に言った。
『大丈夫だ、俺の言うことに合わせていればどうとでもなる、協力してくれるね?なに、タダでとは言わないさ、いつもより多く金を渡そう』
その言葉を
学校でもハル君を悪者にして、私とヤツの身を守ることに徹した。
浮気した事実を
焦っていた私はあの時、友人たちと話している時に本当の事を話した。
まるで世間話をするかのように、彼のことを
内心かなり焦っていた私は、余裕のあるフリをして友人らと笑ったのだ。
彼とはヨリを戻せると自分に言い聞かせ、笑って自分の心を誤魔化した。
まぁ現実は、察しの通りだけどね…。
だから、今度は間違えない。
彼に償いをしなければ…。
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さて、
未成年淫行に加え、嘘を言ったという言葉もあり、それを言われても否定しなかった。
加えて俺を殴る蹴るをした事を自慢気に話して、俺がなにもできない
つくづく馬鹿でクズなクソ親父だ。やりやすくて助かると同時に、こんなヤツの血が俺にも流れていると思うと恥ずかしくなってくる。
ここに莉乃の証言も入れれば
機を見て訴えたい所だけど、その機というのをどうするかだ。
「それなら
「確かに
「言い逃れのできない状況にするってか、間違いないな」
希の提案にうんうんと頷く。
あまり見たくはないが確実な方法を取るべきだろう。
「なんなら途中でいいじゃない。アンタがあのおっさんとヤってる時でさ」
「やめろって」
希がやべぇことを言い出して、思わず顔を
本当にやめてくれ、もう見たくないんだ。
「……もしハル君が望むんだったら、私それでも…」
「やっぱお前
「……ごめんなさい」
俺の為とか言ってるが、普通に元カノとオッサンとがヤってんの見たら不愉快になるなんて自明の理だろ。バカか?
「それはそれとして、
「一応診断書もあるし、莉乃が証言してくれりゃいい、他は知り合いが何とかしてくれる…それに母さんもいるしな、もうあいつの子供でいるのは終わりだ」
まぁあのクソ義妹くらいなら一緒に証言しそうだが、アテにできんししたくねぇ。
「へぇ、おばさんもいるんだ。っていうか会ったんだね」
希は幼馴染だ、なので当然 母さんのことも知っている。
「まぁな、もう少ししたら母さんと一緒に住むよ」
「へぇ、私も会いたいな」
「会ってやってよ、
アホ女をほっといて話していると、そのアホ女が口を出してきた。黙ってろってぇのに。
「お母さん?ハル君の家族って、あの人の言葉を信じたんじゃ…」
「あ?っはァ お前知らなかったっけ、まぁ実の母ってことだ。後は自分で考えろ」
まともに喋りたくないので、必要最低限の情報だけ投げて取り敢えず放置。
まだ許す気はねぇからな。
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