式彩三色は四人いる!

うざいあず

第一色 他の追随を許さない幸運を身に宿す気楽

第1話 なんだよ十人十色って

 『十人十色』という言葉がある。


 意味としては十人も人間がいれば十色集めたみたく、個性や性格が全く異なって人それぞれいいところがあるよ、というようなことだろう。


 とてもポジティブで、素敵極まりないことわざなのは百も承知だ。


 しかし僕は問う。『本当に人それぞれ一色持っているのか?』と。


 多少なりとも似通った色になったり、色の具合が全体で偏ったり、人によってくすんだ色だったり煌びやかな色だったり、一色ではなく何色も持っていやしないだろうか。


 一人が二色持っていて、一色も持っていない人が一人登場する可能性だって拭えない。


 僕はここ数日そんなことばかり考えていた――とあるブームの衰退と、とある人物との接触がきっかけで。




 味気ない日常を暮らしてきた僕からすれば、あまりに鮮やかな毎日に眩暈を起こしてしまう。彼女らの形容を模倣するとしたら僕は「白黒モノクロの少年」だろうか。没個性な人間には分不相応な呼び名だが。


「――よし」


 ぐだぐだと思考を垂れ流しにしていた万年床から立ち上がると、ドアノブに手をかける。


 壁掛け時計は午後九時を回っていて約束の時間まですぐそこだった。 




 外は既に暗く、夏直前にしては肌寒い。


「はあ」


 不意についた溜息は面倒くささから来るものではなく、感嘆するような、緊張を解きほぐすようなものだった。先日の出来事、無色の少女から聞いたあの言葉を思い出す――。




「私を、探してくれませんか?」

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