夏休みの冒険 ~Train, Dance, & Real kiss~
金星タヌキ
第1話 Train adventure
「
「心配ないよ おばあちゃん。小5の時も行ったじゃん。スマホもあるし。悪いけど チョコのお散歩 お願いね」
駅まで送ってくれた おばあちゃんにワンコのお散歩を託して 手を振る。
今日は8月8日。
夏休みに入って3週目の木曜日。
今から 始発電車に乗って東京に行く。
東京で 大学生のお姉ちゃんと落ち合って テーマパークへ連れていってもらうんだ。
お姉ちゃんの名前は
8歳上で もう
去年から N県にある星都大学っていうところに通うために 星光市で下宿してる。
スゴく賢くて美人の自慢のお姉ちゃんだ。
けっこう歳が離れてるから 小さい時から いっぱい面倒見てくれてた。
今年も お父さんお母さんは忙しくて何処にも連れてってくれないから 代わりにボクを 東京のテーマパークに連れてってくれることになったんだ。
あ。
〈ボク〉って言ってるけど ボク 男の子じゃないよ?
れっきとした女の子。
髪は 短めにしてるけど。
ボクの名前は
音楽とダンスとカワイイものが大好きな小学校6年生。
お姉ちゃんも入ってた小学校の金管バンドでコルネットを担当してる。
お姉ちゃんもカワイイもの大好きだし 東京のテーマパークは 家族で何回か行ったことのある思い出の場所。
そして お姉ちゃんが大学生になった去年からは 2人で行くようになった……しかも 泊まりで。
家族で行ってた頃はムリだった夜のパレードも見れて 大感動!
今年は 推しキャラの新アトラクションもできたみたいだから ホント楽しみでしょうがなかった。
でも
今から この始発電車に乗って まずは特急の停まる駅へ。
そこで特急に乗り換えて 東京方面へ約1時間半……そして 今日最大の試練 東京での乗り換え。
去年は 先に東京で1泊してくれてた お姉ちゃんが 乗り換え駅まで迎えに来てくれてた。
今日はそれはナシ。
お姉ちゃんは 今朝の飛行機で星光市から 成田に飛び そこから待ち合わせの駅まで来る。
スゴくドキドキするけど 去年と同じコースだし スマホにウォークナビアプリも入れてもらった……大丈夫。
そんなこと考えてる間に 1回目の乗り換え。
ここの駅は 何度も来たことあるから 不安は無い。
階段を上がり 1番乗り場へと向かう。
この駅は 頭の中で何回もリハーサルした。
特急『かわせみ』東京行き。
7号車の13CとDがボクの席。
変な人が座ったりしないように 隣の席も予約してもらってる。
窓際の席に座り 隣の席にリュックサックを置く。
車内放送が入り 列車が動きだす。
オッケー 第1ミッション完了。
とりあえず ひと安心。
ポーチに入れたスマホをチェックする。
おばあちゃんからのメッセージが3通。
ホント心配性。
1通だけ『大丈夫』って返信して あとは既読スルー。
って思ってたら プッシュ通知。
慌ててチェック。
……やっぱり お姉ちゃんだ!
》》特急乗れた?
『もち! そっちは?』
》》搭乗手続き完了~ もうすぐ飛ぶみたい
『りょーでーす』
しばらく 経った後
》》大丈夫 こっちもちゃんと飛んだよ
》》成田 着いたら また連絡するね
ホントは もっと やり取りしたいけど 東京でバッテリーやギガが切れたらマズいから 今は 我慢する。
会ったら いっぱい喋れるんだし。
スマホはバッテリー温存で 窓の外を眺めて過ごす。
田んぼの風景が通り過ぎたり ビルが続く街中だったり。
トンネルに入るとガラスに自分の顔が映る。
お姉ちゃんと一緒の奥二重。
アゴのラインなんかもお姉ちゃんとよく似てると思う。
髪は 短め。
お姉ちゃんが 伸ばしたら?って言うから 首までは伸ばしてるけど。
背もあんまり変わらなくなってきたし 双子みたいって言われたりもするけど お姉ちゃんの方が絶対美人だ。
ボクも悪くないって思うけど お姉ちゃん ホント綺麗なんだもん。
田園風景は徐々に見えなくなり ビルが段々高くなっていく。
そろそろ 東京に着くのかな?って思いはじめた頃 プッシュ通知。
》》成田に着いたよ バスで先に行って 待ってるね
》》乗り換え ガンバ!
★☆★
車内放送が入り 後5分で 東京に到着するらしい。
放送と同時に リュックを背負い 出入口に移動する。
スマホのリマインダーをチェック。
特急を降りて 後ろ側に見える階段を下りて 赤色の案内表示にしたがって 11番乗り場へ。
乗る電車は 各停でも快速でも大丈夫だけど『かわせみ』は遅れたりしなかったから 7時48分の各駅停車に乗れるハズ。
到着を知らせるオルゴールが流れ 速度が落ち始める。
プシューという音と共に ドアーが開く。
1番にホームへと降り立つ。
冷房の効いた車内とは違い 熱帯のような熱風が吹き付ける。
ホームを見回すけど ボクみたいな一人旅の小学生はいない。
家族連れか サラリーマンみたいなオジサンのどちらかしか 見当たらない。
去年は このホームまで お姉ちゃんが迎えに来てくれていた……。
少し心細くなるけど ボクならできる。
お姉ちゃんが待ってくれてるんだ。
お気に入りの黒のキャップを被り直して気合いを入れる。
ホーム後方の 下り階段を目指し歩き始める。
赤色の案内表示を頼りに11番ホームを目指す。
地元には無い 長い長い動く歩道の上を足早に歩くサラリーマンの群れについて歩く。
いかにも テーマパークへ行くっていう雰囲気の家族連れも同じ方向。
大丈夫 間違ってないハズ。
さらに下りのエスカレーターに乗り赤の11番へ。
もう 自分が何階にいるのかも分からないけど 目的のホームには着いた。
スマホで時間をチェック。
7時45分。
完璧っ!
ベルが鳴り ホームに銀色に赤のラインの列車が入ってくる。
ちょっと怯むような混み具合だけど あと4駅。
リュックを抱えて身体を捻込む。
目的地までは 各駅停車。
1駅ごとに ドキドキが強くなる。
アナウンスが 4つ目の駅名を告げる。
ドアが開く。
他の駅とは違う 楽しげな構内音楽。
やっと着いた!
改札を抜けて 待ち合わせ場所へ急ぐ。
テーマパークへ向かう途中の時計塔。
その前に立つ黒髪でスラッとした女の人の姿が見える。
ボクに気がついてくれて 大きく手を振ってくれている。
思わず駆け出し叫ぶ。
「お姉ちゃーーんっ!」
最高の夏休みの1日は 始まったばかりだ。
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