物語の外

苦贅幸成




 頼りなくて、つまらない私を、自分の物語に登場させようと考える人はいない。

 私自身でさえも、私の物語の主人公が、私だとは思えない。




 私は、後輩の教育係になった。


 後輩に仕事を教えた。


 後輩が仕事で失敗して泣いたらしいと、人づてに聞いた。


 後輩は、私ではない他の先輩に相談している。



 私は、物語の外の人間だ。




 じゃあ私は、なんで生きているのだろうか。

 昔の答えを持っていたけど、もう意味を失くしている。




 昔、私は憧れの人に宛てて、友達になりたいという中身の手紙を書いた。


 憧れの人に手渡して、読んでもらった。


 手紙は届かなかった。


 それなのに、今もその手紙の続きを書いている。



 いくら書いても、詮ないことなのに。








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物語の外 苦贅幸成 @kuzeikousei4

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