第十七話 謎の娘③
心之介は、若杉川が見えてきたところで歩を緩めた。
この辺は人気がなかったので、誰も巻き込まずにすむからだった。
やがて足を止めた心之介は、ゆっくりと振り返った。
すると、通りの角から後ろをつけてきた人物が姿を現した。
頭に布をかぶっていたのではっきりとは分からなかったが、印象から若い娘のようだった。
娘は憎しみを込めた目で心之介を睨んでいた。
まだ幼さが残る少女が刀を………。
心之介は娘が腰に帯びているものを見て、何故か胸が痛んだ。
「私に何か用ですか?」
心之介はそう呼びかけたが娘は何も答えなかった。
そして、おもむろに刀を抜いた。
「………!?」
心之介は、この少女にこんなことをさせるに至った事情が許せない気持ちになった。
だから相手をするべきではないと考えたが、その矢先、娘が斬りかかってきた。
やや不意をつかれた心之介は、とっさに体を反らしてかわした。
早い………!?
そう思ったのも束の間、娘はまた刀を突き向けてきた。
心之介はとっさに木刀を抜いてその攻撃を払いのけた。
さらに、少女とは思えない太刀さばきで、間をあけずに一手、また一手と矢継ぎ早に迫りくる刃。
それをなんとか受け流す心之介。
娘は恐ろしいほどの剣の腕の持ち主だったが、それ以上に小さな体からにじみ出す気迫が刀に乗り移っているかのようだった。
「………!?」
ついに娘の刃が心之介の頬をかすめ、剣先に触れた髪の毛の先が宙を舞った。
さらにその返し刀が右袖をも斬った。
心之介の右手の甲に血が伝ってきた。
そこで、二人は一旦お互いに距離をとって見合った。
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