第16話 やっぱり子どもなのか……

 街の中はレンガ調の街並みで、第一印象は海外って感じがした。


 どこを見てもイケメンばかりで、身長が高くキラキラと光っている人ばかり。


 俺達は街の中を歩き出すと老若男女問わずこちらを見てくる。


「あのー、すごく人の目が気になるんですが……」


 いや、女性はいないから老若男になるのだろうか。


 決して自惚れているわけではないが、俺を囲むように歩いている二人が注目されている。


「あっ、トモヤくん忘れていたわ」


 それは影が薄い俺の存在を忘れていたのだろう。


 そんなことを思っていると、クリスチャンは自身のマントを外し俺に頭からかけてきた。


「しっかりとマントを被った方がいいかもしれないね」


 俺はクリスチャンに言われた通りにマントを被ると、隠れて気にしなくて済みそうだ。


 それにしてもマントから良い匂いがしていた。


「トモヤくんは何か気になるところはありますか?」


 せっかくだからと俺の希望に沿って街を案内してくれるようだ。


「んー、服や下着を売っているところに行きたいです」


 俺はサバスにパンツを取られてから、自身のサイズにあったパンツを履いていない。


 このままだとパンツも足りなくて、ノーパン生活になるだろう。


 まずは生活の基盤を整えるため、下着と服を買うところからだ。


「なら商業区がいいかな」


 どうやら街の中は区画で別れており、住居区や商業区など目的にあったように区画整理されているらしい。


 俺は案内されるがまま、商業区に着くと目的の服屋に着いた。


「ここは公爵家がいつも頼んでいる服屋だよ」


 連れてこられたところは公爵家が普段から頼んでいる服屋だ。


 公爵家は全てオーダーメイドで作られている服を着ている。


 そんなことを知らない俺は中に入って後悔した。


 お店の中は煌びやかで高級ブティックのような店構えだ。


 俺は自分で買うためにも、値段の把握をしたかった。


 しばらくお店の中を見たがスタッフから聞いた値段に驚き、公爵家の二人は店員と親しげに話をしていた。


「他のお店を見に行きますと伝えてもらってもいいですか?」


 働いているスタッフに二人へ伝えてもらうようにお願いした。


 今の俺にはさすがに合わないからな。


 俺は一足先にお店を出て歩いていると、外観がシンプルに作られている服屋をみつけた。


「いらっしゃいませ……?」


「少し服を見てもいいですか?」


「はい」


 どうやらマントを被っている俺に警戒をしているのだろう。


 お店の店番をしているのは、俺とそこまで身長差がない少年だった。


 そう、顔は少年なのに身長が俺と同じぐらいなのだ。


「怪しいものじゃないから気にしないでくれると助かる」


 マントのフード部分を外し、顔を出すと向こうもなぜか驚いていた。


「これなら怪しくないだろう?」


「……」


 そこは無言になられると俺も困ってしまう。


 せっかくフードを外したのに、これ以上何をしたら怪しまれないのだろうか。


「あっ、良かったらこれどうぞ」


 俺はポケットに入っているホビーからもらった飴を少年にあげることにした。


 魔果の実が原料だと俺は食べられないからな。


「貰っていいの?」


 俺が頷くと少年は嬉しそうに笑っていた。


 飴で喜ぶぐらいだからまだ幼いのだろう。


 飴のおかげで少年の警戒心が解けたのか、俺は既製品である服を見ていた。


 どれもサイズ感は大きめだが、デザインがどれもシンプルだ。


 無駄にヒラヒラとしたフリルもついていないし、色も赤や青ではなく単純に白や麻だったりと素材で楽しめそうだ。


「この服っていくらぐらい?」


 俺が尋ねると少年は指を3本立てていた。


「3シルバーでいいのかな?」


「ここにある服は全部3シルバーだよ」


 1シルバー1000円程度のため、大体3000円ぐらいなんだろう。


 俺が求めていたのはこれぐらいの値段だ。


「サイズも色々あるの?」


「基本的にはあるけど、子どもの服は少ないよ?」


 どうやら俺が見ているのは子ども用の服らしい。


 店番をしている少年が俺と同じ大きさなら、俺はどこからみても子どもに見えるらしい。


「でもないよりは助かるね! 今度はお金を持ってきてくるよ」


「うん。飴ありがとう」


 俺は少年にお礼を伝えるとお店を出た。


 ここで買い物ができるぐらいのお金を稼ぐことを目標にしよう。


「トモヤくんどこに行っていたのよ」


 外に出ると二人はどうやら俺を探していたようだ。


「目的も果たせたのであとは街の見物で大丈夫です」


「そうなの?」


 なぜか二人はがっかりしていた。


 俺はお金を持っていないため、これ以上は特にお店に入ることもなく商業区を後にした。

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