第186話 正解! 私が久遠の彼女! だからお前の邪魔をするの!
敵の規模が多いがゆえに仕方なく三手に分かれたが、できることならば一緒に行動したかった。
その気持ちは自分だけじゃなくて桔梗も同じだろう。
「ネクロノミコン、さっさと群馬県側の敵を片付けて久遠と合流するよ」
「それはそうだが、我としてはここで一気にレベル上げしたいところだ。ドラクールだけでなく、リビングフォールンまでLv100になっていた。我も追いつきたい。それに、鬼童丸もこの戦いでマスターが貢献してくれたら喜ぶのではないか?」
人化したネクロノミコンは幼女サイズの魔女であり、我という一人称で語ると子供が役になり切っているのかと思ってしまう外見だ。
それでも、ネクロノミコンは強欲を司っており、そこらのアンデッドモンスターとは格が違うのだから外見に騙されてはいけない。
「…そうだね。久遠が桔梗さんとシェアハウスしている以上、ここで私がポイントを稼がないと久遠の心が桔梗に移っちゃうかもしれない。きちんと仕上げてから合流しよう」
「それが良かろう」
ネクロノミコンは早く強くなりたかった。
主である寧々の恋心を利用してでも強くなろうとするあたり、流石は強欲を司る者と言えよう。
現場に現れたアンデッドモンスターの大群だが、UDSで言うところのLv30以上はあるようだ。
A国やC国、R国では侵攻するアンデッドモンスターの大半がスケルトンとゾンビだけれど、日本に現れたのはワイトやマミー、リビングポーンである。
「ネクロノミコンは【
寧々の従魔で喋れるのはネクロノミコンだけだが、この場にはエンドガルムもいるから寧々は2体の従魔に指示を出す。
もっと広範囲に仕掛けられるアビリティもあるのだが、万が一外にいる野次馬がいたとしたら巻き込んでしまうことになるので、それを考慮してアビリティをチョイスせねばなるまい。
Lv30の敵なんて寧々にとっては雑魚だから、自分が割り当てられた方面の敵の数はどんどん減っていく。
大体の敵を片付けたところで、寧々達はアンデッドモンスターを率いているらしい悪魔を見つけた。
「貴様が邪魔をしていたのか。確か、鬼童丸の連れだったな。このトレッサの邪魔をするとは良い度胸だ」
「正解! 私が久遠の彼女! だからお前の邪魔をするの!」
トレッサが言う連れとは仲間を意味していたのだが、寧々は連れという言葉を彼女やパートナーのことだと受け取った。
だからこそ、寧々はドヤ顔で自分こそ久遠の彼女だと宣言したのだ。
「ふん、ならば貴様を殺せば名を上げられそうだ。移籍してすぐにチャンスが来たのは僥倖だな」
どうやらトレッサは元中立派のようで、最近になって獄先派に加わったらしい。
だからこそ、使い捨ての駒扱いのこの状況で寧々を見つけたことはチャンスだった。
トレッサは手に持っていた
「エンドガルム、【
「チッ、速いな」
(ネクロノミコン、【
先程は声に出して攻撃したから、トレッサは寧々が攻撃の指示を口に出さないとできないと思っている。
それを利用して、寧々は指示を念じてネクロノミコンに伝えた。
ネクロノミコンが急に攻撃して来たため、油断していたトレッサは
「やはり慣れない武器は使うもんじゃない」
そう言ってトレッサは懐からカジノのチップを3枚取り出し、それを寧々達に向けて投げつける。
3枚のチップがトレッサの手から離れたら、それらはフライングディスク並みに大きくなって高速回転して寧々達に向かって飛んで行く。
「ネクロノミコン、【
「良かろう」
ネクロノミコンの【
チップには魔法アビリティを吸収して回転速度を高める性能があったようで、スピードアップした3枚のチップが寧々達を襲う。
「エンドガルム、【
魔法系アビリティで駄目なら物理系アビリティを使えば良いだけだ。寧々はそう判断してエンドガルムに3枚のチップを攻撃させた。
物理攻撃には特に備えがなかったようで、投げた3枚のチップはエンドガルムの攻撃で半分に切断されて地面に落ちた。
「クッ、だったらこれならどうだ!」
悔しがるトレッサが6枚のチップを両手で3枚ずつ投げてみれば、エンドガルムが次々に【
(トレッサが隙だらけ。ネクロノミコン、【
ネクロノミコンと喋っていないように見せかけて再び奇襲をすれば、次の攻撃に備えていたトレッサは反応が遅れて青い霊に触れられて右腕が凍り付いてしまった。
「おのれ! ここで使うことになるとは!」
トレッサが悔しがった直後に右腕が元通りになる。
前兆も予備動作もなく元通りになったのは、【
積み立てておいたMPを使うから、戦闘中に今のMPを減らさずに自身のHPや状態異常を回復する効果がある。
コツコツ積み立てていたMPを使わざるを得なくなり、トレッサは不愉快そうな表情になる。
「これでも喰らえ!」
こうなったら出し惜しみはなしと決めたのか、チップを10枚まで増やしてトレッサが投げれば、寧々も周囲に被害が多少出ても仕方ないと戦い方を変える。
「エンドガルム、【
「アォォォォン!」
エンドガルムの咆哮により、飛んで来たチップが急激に減速した。
【
「エンドガルム、チップをトレッサに投げ返しちゃって」
寧々の指示に従い、エンドガルムが微速前進するチップを咥えてはトレッサに向けて投げ返すのを繰り返す。
チップはエンドガルムが咥えた時には完全に止まっていたため、そこから連続で投げ返すことでトレッサが逆に追い詰められる。
自分の飛び道具を使ってやられては情けないから、トレッサは一度も投げ返されたチップに当たらないよう避けたが、その先では準備万端なネクロノミコンが既に【
避けた先ですぐにまた避けることができず、青い霊に抱擁されたとレッサーは全身が凍り付いてしまった。
「とどめを刺すよ。エンドガルムが【
エンドガルムの攻撃で凍り付いたトレッサの体が真っ二つになり、ネクロノミコンの攻撃でトレッサの真っ二つになった体の両方に雷撃が命中してトレッサが力尽きた。
『ネクロノミコンがLv82からLv88に成長しました』
『ネクロノミコンの【
『エンドガルムがLv64からLv72に成長しました』
『エンドガルムの【
(どうしよう。ネクロノミコンのアビリティがますます市街戦で使えないものになっちゃった…)
トレッサとの戦闘において、寧々はネクロノミコンに使わせるアビリティを限定させていた。
それは単純に周囲への被害が及ぶからだ。
【
そういったアビリティが多いからこそ、寧々はネクロノミコンが使うアビリティを限定させていた。
しかし、この先もずっとこの戦い方ができる確証はない。
トレッサや他の
周りを気にして勝てない状況に陥ったならば、寧々も申し訳ないと思いつつも周囲に被害を出してでも勝とうとするだろう。
物損とか気にしている場合ではないから、意図的に破壊するつもりはなくても戦闘中に何か知ら被害が出ても許してほしいところだ。
それはそれとして、自分が任された方面の敵はいなくなったから、寧々は久遠と合流することにする。
「こちら寧々。敵が見当たらなくなったから合流するよ」
『了解。こっちはまだ終わってないから、手伝ってもらうことになるかも』
「うん! すぐ行く!」
スマートグラスから聞こえる久遠からの返事に焦りは感じなかったが、好感度稼ぎのチャンスを逃す訳にはいかないから寧々達は急いで移動し始めた。
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