第157話 この店にいる悪魔さん達聞いてる~? アマイモンがお前等と一緒にするなってよ~
鬼童丸の視界に映った通知だが、それはデーモンズソフトから来るはずのない通知だった。
(「再戦の時間だ、鬼童丸」だと? しかも、アンデッドポーカーの誘い?)
再戦というワードチョイスに加え、勝負の内容がアンデッドポーカーゆえに鬼童丸はその通知が誰の仕業なのか理解できた。
元中立派の共同代表にして、現在は獄先派に合流したアマイモンだ。
触れば碌でもないことになると判断し、その通知に触れないでデーモンズソフトに連絡をしようとしたところ、急激に鬼童丸の周囲が真っ暗になって鬼童丸は落下している感覚に陥った。
コネクトの通話は切れており、鬼童丸はあっという間に地獄の酒場でアマイモンの正面の椅子に座らされていた。
「ようこそ我がヘルファーストパブへ。申し遅れましたな。儂の名はアマイモン」
「その挨拶をしないといけない決まりでもあるのか?」
「儂は中立派の共同代表の立場を失ったが、様式美を尊重する余裕を捨てた覚えはない。そこらの三流悪魔と一緒にされては困るのだよ」
「この店にいる悪魔さん達聞いてる~? アマイモンがお前等と一緒にするなってよ~」
周囲に悪魔達がいるのは明らかでもあるのに関わらず、鬼童丸は周囲の悪魔を煽るような発言をした。
それにより、聞き耳を立てていた獄先派の悪魔達はブチギレ状態になり、今にもアマイモンに襲い掛かりそうである。
「ザッケンナコラー!」
「スッゾコラー!」
「これだから余裕のない悪魔は困る」
そう言いながらアマイモンが指パッチンした途端、酒場にいた自分以外の悪魔がカジノで見かけるチップに変換されてしまった。
それらがアマイモンの正面に積み上がり、アマイモンは鬼童丸に不敵な笑みを向ける。
「さあ、あの時の続きをしようじゃないか」
「ディーラーがいないじゃん」
「お主ならオリエンスを呼べるだろう?」
鬼童丸はオリエンスを呼ぶふりをしてパイモンを心の中で呼ぶ。
しかし、どんなに念じてもパイモンは
「残念だったな。今はパイモンが来られないように細工してある。この場に来られるのはオリエンスのみだ」
「チッ、しょうがないな。オリエンス、来てくれ」
悪びれることなく、鬼童丸はオリエンスを
次の瞬間、
「アマイモン、また妾の玩具に手を出すつもり?」
「相変わらず早い到着だなオリエンス。前回よりも強固な66個の罠を仕掛けて待っていたというのに、容赦なく力業で炭化させるのは品がないぞ」
「クソ爺、その口を閉じなさい。というか、いい加減鬼童丸にちょっかいをかけるのやめたら?」
「オリエンスが鬼童丸に対して執着してるのは知ってる。だからこそやる。それが儂のポリシーじゃよ」
オリエンスは自身が親人派に移籍したことから、アマイモンに対してこれ以上鬼童丸にちょっかいをかけるのを止めろと告げた。
無論、それは形式上の確認であり、鬼童丸と戦えることを喜ぶ気持ちはわからないでもないので、オリエンスもあくまでポーズとして確認しただけだ。
「フォッフォッフォ。次はお主の番だ。儂が不意打ちのような形で呼んだのは事実。特別に召喚できる従魔全て召喚するが良い」
「
ここが地獄であると理解しているから、鬼童丸はドラクールとリビングフォールン、ヨモミチボシ、アビスドライグを召喚してみせた。
以前対決した時、鬼童丸が召喚したのはドラクールとリビングフォールンだけだったから、アマイモンは戦力が倍以上になっていることを知って目を見開いた。
「ほう、この短期間で戦力を倍にするとは驚いたよ。こんなことなら許可しなければ良かったと思う程じゃ」
「妾が認めた玩具が有象無象と同じ成長速度な訳ないでしょ? 頭の固いクソ爺にはわからないみたいね」
「言ってくれるではないか。老体を虐めるでないとあれだけ言ってもまだ言うか」
「知ったこっちゃないわよ。とにかく、アンデッドポーカーの続きでしょ? さっさと始めるわよ」
そのように言った直後、オリエンスはアマイモンが用意していたトランプを燃やし、指パッチンして自分が用意した新品のトランプをテーブルに置く。
アマイモンはイカサマを仕込んでいたトランプを燃やされてしまい、オリエンスに対して余計なことをしてくれたと思ったが声には出さなかった。
この場には憎悪のプロであるヨモミチボシがいて、アマイモンの発した僅かな憎悪を見逃したりしなかった。
「美味です」
4文字のヨモミチボシの言葉からアマイモンの発した憎悪を察し、鬼童丸はアマイモンに話しかける。
「イカサマを検知した訳だが、何をくれるんだ?」
「なんのことだね? 儂がイラついたのは、オリエンスが儂の私物を躊躇なく燃やしたからだ」
「おや? おかしいなぁ。それだと弱肉強食の悪魔としてアマイモンがオリエンスに負けるってことにならないか? だって、そうじゃなきゃ私物を簡単に燃やされたりしないだろう?」
ここでイカサマを認めずにトランプを燃やされたことに怒ったと認めれば、アマイモンは私物をオリエンスにあっさり燃やされてしまう程度の実力だと認知されかねない。
それは自分のプライドが許さなかったらしく、アマイモンは一呼吸する間で鬼童丸に一本取られたことを認めた。
「…良いだろう。では、先程儂がチップにした獄先派の悪魔共をくれてやろう。これからの賭けの代金にしても良いし、別のカードを賭けてくれても構わない」
親人派に属する鬼童丸としては、チップに変換された悪魔達をキープした方が獄先派の数は減るが、この悪魔達が自分のカードリストのカードの代わりになるのならば、負けても懐が痛まないから、鬼童丸は譲渡された悪魔達を優先的に賭けることに決めた。
「わかった。オリエンス、カードを配ってくれ」
「はいはい」
まずは
(スペードの5とハートの10。ブタかよ)
鬼童丸の手札は現状では役に繋がらないから悪い方だ。
ディーラーであるオリエンスから見て時計回りの順番でゲームが進むから、アマイモンが先に宣言する。
「ウルピールをベット」
(ドラクール、【
『かしこまりました』
ドラクールに【
その読みは当たっていたようで、ドラクールが熟練度を上げて以前よりも更に薄く放ったソナーにより、アマイモンの手札の片方が変色した。
「俺がイカサマを看破したことになるよな?」
「フォッフォッフォ。まさかソナーの熟練度を更に高めておったとはのう。大したものだ何が欲しい?」
マッドタウロスとウルピールが鬼童丸に譲渡され、その上で鬼童丸はアマイモンからアンデッドモンスターのカードを1枚貰う権利を得た。
2枚のカードに加え、鬼童丸はアマイモンが宙に浮かべた無数のカードを順番に見て、これだと思う1枚を指差す。
「スケリトルワイバーンを貰おうか」
「良かろう。さあ、受け取るが良い」
スケリトルワイバーンが鬼童丸の手に渡った直後、音もなくアマイモンの背後から頭に手が置かれ、そのままテーブルに思い切り叩きつけられた。
「よくも余計な手間をかけてくれたじゃないか」
発せられた声は苛立ちに満ちており、パイモンのにこやかな顔とアンマッチだった。
パイモンに手を置かれたアマイモンだが、一瞬にして気を失ってその場で倒れてしまった。
遅れてタナトスが現れ、パイモンから指示を受ける。
「タナトス、アマイモンを連行するんだ。餌に喰いついたと思ったら手間をかけさせられたんだ。ありとあらゆるリソースを毟り取るよ」
「了解した。鬼童丸、大変だったな。戻ったらちゃんと休んでくれ」
それだけ言ったら、タナトスは地獄の門を開いて待つデビーラと一緒にアマイモンを連行していった。
「もう少し楽しめたと思うのだけれど白けたわね。妾も引き上げるわ」
オリエンスがこの場から去り、パイモンが鬼童丸に話しかける。
「鬼童丸、餌としてよく働いてくれた。色々話したいところだが、今は日本の首都圏が停電して軽くパニック状態だ。配信が強制終了されて鬼童丸も反応がない今、宵闇ヤミが不安な気持ちで暴走するかもしれないから、安心させるためにも早く現世に戻ると良い」
パイモンが指パッチンした瞬間、ドラクール達は強制送還されただけでなく、鬼童丸はUDSのトップ画面に転移させられてから強制ログアウトされた。
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