第155話 Yes, yes, yes. Oh my God

 食事や風呂を済ませて再びUDSにログインし、配信開始時刻の午後8時になったところで、宵闇ヤミの挨拶からコラボ配信が始まる。


『こんやみ~。ミニゲームで今日こそ鬼童丸に勝つ悪魔系VTuber宵闇ヤミだよ〜。よろしくお願いいたしま~す。そして~?』


「どうも、いつもニコニコヤミ虐助かるで定評のある鬼童丸だ。よろしく」


『どぼじでぞう゛い゛う゛ごどい゛う゛の゛~?』


 鬼童丸が言外に今日の配信でも宵闇ヤミを虐めると告げれば、多くのヤミんちゅ達はコメント欄が助かるとコメントが続いた。


 その中にはスーパーチャットもちょくちょくあり、コメント欄が大変カラフルである。


「需要があるなら供給しないとね」


『もしかして、ヤミ虐って鬼童丸に手綱を握られてますか~?』


「Yes, yes, yes. Oh my God」


 コメント欄で「それはそう」というコメントが多発するあたり、鬼童丸とヤミんちゅ達の意思の疎通はばっちりなようだ。


 それはさておき、いつまでも挨拶だけで時間を使う訳にはいかないので宵闇ヤミが進行に戻る。


『ぐぬぬ、絶対に負けないんだから。今日の配信から、鬼童丸とのコラボ配信は朝活配信の投票で決めた#闇鬼家で拡散お願いね。それじゃあ、早速1つ目のアンデッドレースから始めよっか』


 アンデッドレースだが、プレイヤーは従魔の中から人型のアンデッドモンスター1体とそれを乗せて移動させられるアンデッドモンスターを選ぶところから始まる。


 全部で8組のチームがコースを3周するレースで順位を競う訳だが、参戦するプレイヤーの人数によってNPCの数が調整される。


 今日はプレイヤーの参加が鬼童丸と宵闇ヤミだけだから、NPCは6チームあるということだ。


 鬼童丸が初めてアンデッドレースをした時は多摩市で行ったが、ミニゲームのアンデッドレースはちゃんとしたコースが用意されている。


 最初に挑戦できるのはリバーサイドトゥームと呼ばれるコースであり、川沿いの墓場をレーシングコースに調整したものである。


 (俺が選ぶのはビヨンドカオスとリビングフォールンだ)


 ビヨンドカオスは確定として、鬼童丸がリビングフォールンを選んだ理由は支援に最適だからだ。


 味方にバフを与え、敵にはデバフをかけるのはシンプルな戦略だが強いと言えよう。


 その一方、宵闇ヤミはグレスレイプとヴィラを選択した。


 鬼童丸と宵闇ヤミの選んだ従魔達がリバーサイドドゥームに転移させられたら、そこには6チームが既にスタートラインの手前でスタンバイしていた。


 1位の位置にゴーストラックとファントムドライバー。

 

 2位の位置にカシャとリッチライダー。


 3位の位置にアポカリプスバイクとルーインドライダー。


 4位の位置にヘルキャリッジとワイトライダー。


 5位の位置にファントムホースとリビングナイト。


 6位の位置にボーンチャリオットとグールコマンダー。

 

 それに加えて7位の位置にスレイプニル形態のグレスレイプとヴィラが着き、8位の位置にビヨンドカオスとリビングフォールンが着いた。


 なお、ビヨンドカオスは赤い戦車に変形しており、フロストパンツァーの色違いという見た目だ。


 鬼童丸と宵闇ヤミの準備が整ったところで、レース開始のアナウンスがコースに響く。


『3,2,1, START!!』


 アンデッドレースにおいて、従魔は最初からアビリティを使用できる。


 それゆえ、鬼童丸はリビングフォールンに【栄光舞踏グロリアダンス】を発動させる。


 【栄光舞踏グロリアダンス】によってビヨンドカオスの能力値がアップし、他の7チームのアンデッドモンスター達の能力値が下がる。


 つまり、普通に走っているだけでビヨンドカオスは他の7チームを抜き去り、更に差を広げることまでできる。


 当然のことだが、他の7チームだってビヨンドカオスに首位を独走されては困るから、それぞれが使えるアビリティで少しでも邪魔をしようとする。


 しかし、ビヨンドカオスには【魔法吸収マジックドレイン】と【全耐性レジストオール】があるから、魔法系アビリティはMP回復手段に代わって物理攻撃は威力が減衰してダメージにならないかそもそも届かなかった。


 これには他の7チームも対応できず、ビヨンドカオス達がどんどん差を広げていく。


 団子状態の2位集団では、大罪武装を持つヴィラがいるおかげで先頭にいる。


 ヤミんちゅ達は宵闇ヤミの視点でレースを見ているから、スリルのある2位争いを楽しめていた。


 リバーサイドトゥームではコース上に墓石が障害物として現れるから、1位の鬼童丸はコマンドを操作することで墓石をすいすいと躱していく。


 (後ろが全然来ないんだが)


 そんなことを思いつつ、鬼童丸は1周目を終えた時点で2位と3分の1周差をつけていた。


 ミニゲームにおけるアンデッドレースでは、1位のチームが次の周に進む度に難易度が上がる仕様だ。


 バフやデバフは通常時よりも早く効果が切れるため、鬼童丸は再びリビングフォールンに【栄光舞踏グロリアダンス】を使わせてビヨンドカオスの能力値を上昇させた。


 2周目では、レースに参戦している従魔達を邪魔するべくゾンビアーミーが出現する。


 攻撃こそしてこないゾンビアーミーだが、数が多い上に触れてしまうと減速させられるから厄介である。


 ただし、ゾンビアーミーは障害物ではなく敵アンデッドモンスターという扱いだから、アビリティが通用する扱いだ。


 したがって、鬼童丸はリビングフォールンに【心酔舞踏カリスマダンス】を発動させる。


 これによってゾンビアーミーを魅了状態と鈍足状態にして、横一列に並ばせればどうなるか。


 触れて減速する邪魔な即席障害物の完成だ。


 そろそろ3周目というタイミングで、2位集団争いの敗北者達の背中が見えて来た。


 (悪いね。弱肉強食なんだ)


 鬼童丸は敵チームが射程圏に入ったことを確認したら、ビヨンドカオスに【緋霊天墜スカーレットダウン】を使わせた。


 7位と8位のチームが川に吹き飛ばされてコースアウトすれば、広くなったコースの真ん中をビヨンドカオス達が走っていく。


 ビヨンドカオス達が3週目に入れば、川からスカルピラニアがどんどん飛び出し始める。


 ミサイルのように飛んで来るスカルピラニアだが、鬼童丸が【呪氷支配アイスイズマイン】で川の水を凍らせれば、ビヨンドカオスに触れる前に濡れた体が凍ってコースに墜落した。


 コースに散乱するスカルピラニアも、当然のことながら障害物になり得るから後ろから来る2位以下のチームは減速を強いられる。


 前に6位と5位、4位のチームを見つけ、その3チームが射程圏にいたから鬼童丸は【隕石雨メテオレイン】で川に吹き飛ばした。


 その向こうに3位と2位が見えてくると、2位のチームを操縦する宵闇ヤミが怯える。


『えっ、1周差は嫌だ! 1周差は嫌だ!』


「俺、鬼童丸。ヤミの後ろにいるの」


『グレスレイプ、加速して!』


 残念ながら加速してと叫んだところで、グレスレイプに加速できるようなアビリティはない。


 そこに追い打ちをかけるように、鬼童丸はリビングフォールンに【栄光舞踏グロリアダンス】を発動させる。


 これで鬼童丸ビヨンドカオスがスピードアップし、3位のチームと2位のグレスレイプがスピードダウンする。


『いやぁぁぁぁぁ!』


「俺、鬼童丸。ヤミを追い抜くの」


 そう言って鬼童丸がリビングフォールンに【心酔舞踏カリスマダンス】を使わせれば、更に3位のチームと2位のグレスレイプがスピードダウンしてしまい、ビヨンドカオス達はギリギリのところで2体を追い抜いてゴールした。


『うわぁぁぁぁぁん!』


『ゴォォォル! 優勝は鬼童丸が使役するビヨンドカオス&リビングフォールンだぁぁぁぁぁ!』


『ビヨンドカオスがLv46からLv50まで成長しました』


『リビングフォールンがLv58からLv60まで成長しました』


 (思ったよりレベルが上がるじゃん。ウマウマ)


 ゴールしてしばらく待機していると、宵闇ヤミもゴールしてリザルト画面が鬼童丸の視界に現れる。



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ミニゲーム⑥アンデッドレース-1

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順位:1位:鬼童丸(5分39秒)

   2位:宵闇ヤミ(8分45秒)

報酬:アビリティチケット(周回遅れボーナス)

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 (すごいアイテム来たわ)


 得られた報酬を確認したことで、鬼童丸がホクホク顔になりながらミニゲームのトップ画面に戻って来た。

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