第113話 プライバシーは何処行った?
オリエンスが消えた後、タナトスがファントムホークに乗ってやって来た。
「鬼童丸、間に合わなくてすまなかった。パイモンから介入禁止だと止められてしまってな。本当に窮地に陥った時以外は見ているだけしか許されなかったんだ」
「パイモン式ブートキャンプはなかなかスパルタだな」
「お気に召さなかったかい?」
その瞬間、地獄の門が出現してそこから緑色のドレスを着たパイモンが現れた。
今日も今日とて女装をしており、鬼童丸は自分の前で女装してももう驚かないのにとジト目を向けた。
「おや、呆れてる感情か。まったく、オリエンスに気に入られるだけあって鬼童丸は精神的にタフだね」
「<オリエンスの玩具>って称号とオリエンスの蝋燭はどうにかならないか? 特に蝋燭の方は実体化する気しかしないんだが」
「よくわかってるね。実体化するよ。仮に鬼童丸がそれを持ち運ばなかったとしても、行く先々に自動で転移してついて来るんだ」
「呪物じゃねえか。勘弁してくれ」
<オリエンスの玩具>はまだ使い道があるけれど、オリエンスの蝋燭には今のところ使い道がない。
オリエンスからのホットラインが具現化したこの呪物がついて回るのは、普通の生活を送るにあたって正直邪魔でしかない。
「ふむ。ならばこうしよう」
パイモンが指パッチンした瞬間、オリエンスの蝋燭がアンティークなコンパスに変わった。
西の竜巻マークは緑色に光り、南の炎のマークは赤く光っている。
『オリエンスの蝋燭が
システムメッセージが告げた内容を考慮し、鬼童丸はパイモンに訊ねてみる。
「蝋燭よりは持っててもおかしくないな。それで、
「その通り。ついでに言えば、我も鬼童丸が何処にいるか常にわかるようになった」
「プライバシーは何処行った?」
「我等に目を付けられた時点でそんなもの消えたよ。いや、我等よりも前に宵闇ヤミやヴァルキリーに目を付けられた時点で似たようなものだったんじゃないか?」
パイモンのその言葉を聞き、鬼童丸は言葉に詰まってしまった。
今の宵闇ヤミとヴァルキリーとの関係性を示唆していることも考えられたが、人間を超越した悪魔ならば自分が知っている以上の事実を把握していても不思議ではないからだ。
「待て。いや、そんなことはないよな?」
「どうした鬼童丸? おやつに丁度良い困惑の感情が流れて来たぞ」
そう訊ねるパイモンはとても良い笑みを浮かべている。
その表情は親人派ではなく愉悦勢、もとい中立派じゃないかと思う程である。
「パイモン、把握してる限りでリアルの俺に盗聴器って仕掛けられてるかわかる?」
「個人情報をペラペラ喋るのは禁則事項death☆」
「楽しそうだな畜生! てか、そんなの禁則事項でもなんでもないだろ!」
「う~ん、美味だな。我好みの感情が流れ込んで来たぞ」
「喧しいわ!」
(悪魔ってのはマジでどいつもこいつも…)
そう思った鬼童丸だったが、それを言ったところでどうにもならないから大きな溜息をついた。
「師匠、あまり私の弟子を揶揄わないでくれ」
「すまないね。女装して現れた時のリアクションが薄かったから、ここでリベンジして自信を取り戻したかったんだ」
「そんなことでムキになるなよ」
「大事なことなのだよ。派閥の代表たる我が、人間から薄いリアクションしか貰えなかったことは結構ショックだったのでな」
悪魔には悪魔の拘りがあると判断し、鬼童丸はそれ以上ツッコんだりしなかった。
この話題はもう考えるだけ無駄だと判断し、鬼童丸はパイモンに別の質問をする。
「ところで、アマイモンとアリトンは俺に接触して来る可能性はある?」
「アリトンは接触して来たとしても最後だろう。アマイモンはどうかな? ふらっと現れるかもしれない」
「見た目はどんな感じ? アマイモンだから黄色い服を着てるのか?」
「その通り。ただ、アマイモンはオリエンスみたいなツンデレよりもよっぽど手強い奴だからね。どんな風に現れるかは我も断言できないな」
(オリエンスがツンデレ? 玩具扱いが好意の裏返しだとでも?)
パイモンの発言に鬼童丸は苦笑するしかなかった。
まさか悪魔にもツンデレなんて概念があると思っていなかったから、パイモンがオリエンスをツンデレ扱いしたことで鬼童丸は考え方を柔軟にしなければならないと思ったのだ。
「おっと、もう時間だ。我もオリエンス同様に鬼童丸に期待させてもらおう。タナトス、鬼童丸を頼むよ。それじゃ」
ニッコリと笑ってパイモンは地獄の門を再び開き、地獄へと戻って行った。
それと同時にシステムメッセージが鬼童丸に届く。
『鬼童丸が称号<パイモンの孫弟子>を獲得しました』
<パイモンの孫弟子>の効果は親人派からの好感度が大きく上昇するものであり、<オリエンスの玩具>と併せればかなり地獄でも影響力があると言えよう。
タナトスは八千代町民公園に転移魔法陣を設置した後、鬼童丸に話しかける。
「鬼童丸、其方を鍛えるべく1つ仕事を頼みたいのだがやってみる気はあるか?」
「仕事? どんな仕事か教えてくれ」
「良いだろう」
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チャレンジクエスト:掃除屋を討伐せよ
達成条件:Lv上限100のLv40以下のアンデッドモンスターだけで掃除屋1体を討伐
失敗条件:使役するアンデッドモンスターの全滅かLv41以上のアンデッドモンスターの参戦
報酬:各種ブースターⅢ型1セット
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(こいつはなかなかキツいぜ)
クエストの内容からして、ドラクールとアビスライダー、リビングフォールンを召喚してはいけないクエストという訳なのだから、これはかなり厳しい戦いを強いられる。
また、他のプレイヤーに参加された場合、Lv41以上の従魔を召喚されてしまう可能性があるから、これは鬼童丸だけでやるか信頼できるプレイヤーだけを巻き込んでやるべきだ。
そうは言っても火力不足なのは否めないので、鬼童丸はチャレンジクエストを受領してから新たな従魔を
幸い、今の鬼童丸はLv94だから、従魔は最大の10体使役できる。
残り2枠のアンデッドモンスターを使役すれば、多少はドラクールとアビスライダー、リビングフォールンを召喚できない穴を埋められるかもしれない。
アンデッドモンスターのカード一覧を確認し、鬼童丸はこれだと思う組み合わせを2つ作り上げる。
1つ目はフレッシュゴーレムとガシャドクロ、ヨモツイクサという掃除屋2体と獄先派の刺客1体の大盤振る舞いな組み合わせ。
2つ目はコープスキマイラとベガー、ブレイゴズという掃除屋1体と獄先派の刺客1体、中立派の刺客1体のこれまた大盤振る舞いな組み合わせ。
まずは1体目の
3枚のカードが激しい光と共に合体するエフェクトが発生し、新たな融合アンデッドが誕生した。
早速、鬼童丸は誕生した融合アンデッドを召喚してみる。
「
召喚された融合アンデッドは巨大な鬼武者であり、鬼童丸はそのステータスをすぐに確認し始める。
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種族:ダイダラボッチ Lv:1/100
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HP:6,000/6,000 MP:6,000/6,000
STR:6,200(+200) VIT:6,200
DEX:6,000 AGI:5,800
INT:6,000(+200) LUK:6,000
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アビリティ:【
【
【
装備:妖刀ゴチェスト
備考:なし
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(示現流の使い手でも憑依してるの?)
そのように思いたくなるようなアビリティ構成と装備だが、実際に巨大な体からの二之太刀いらずの振り下ろしは相当強いだろう。
【
それに加えて【
鬼童丸は続いて2体目の
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