第98話 従魔が女型だからって女を増やすって言い方は違くない?
午後2時になり、宵闇ヤミの配信が始まる。
「こんやみ~。UDSの本編再開を待ち望んでた悪魔系VTuber宵闇ヤミだよ〜。よろしくお願いいたしま~す。そして~?」
「どうも、ミニゲームで宵闇さんをわからせた鬼童丸だ。よろしく」
「酷いよ、本当に酷い。ヤミが一体何をしたって言うの? 本編が再開されたと思ったら、鬼童丸さんがまた女を増やしてるし」
「その言い方は語弊があるだろ。
女を増やしているという言い方に鬼童丸は抗議するが、宵闇ヤミの目から既にハイライトが失われている。
のっけからヤンデレムーブをしている理由だが、それは鬼童丸が午前中に手に入れた融合アンデッドが問題だ。
ヤミんちゅ達は意味がわからないから、コメント欄でどういうことだとざわついていた。
鬼童丸はコメント欄を見ていないけれど、ヤミんちゅ達が困惑しているに違いないと判断してこの場にイミテスターとミストルーパーを召喚した。
その2体の従魔を見たことで、ヤミんちゅ達は宵闇ヤミがヤンデレムーブをしている理由を即座に理解できた。
「従魔が女型だからって女を増やすって言い方は違くない? 抗議するならデーモンズソフトだろ?」
「鬼童丸さんは放っておくとすぐに女の臭いをつけて帰って来る。これはヤミが管理しないと駄目ってことだよね?」
「落ち着いて。話せばわかる。これはデーモンズソフトのアンデッド萌え戦略だから。俺は悪くないから。ヤミんちゅ達に聞いてみたらどうだ? 多分、アンデッド萌え戦略にハマって女型アンデッドモンスターしか従魔にしてない奴もいるはず。俺にはアビスライダーとかレギネクス、フロストパンツァーもいる。実力重視だろ?」
この発言に多くのヤミんちゅ達は「それはそう」とコメントした。
実際、プレイヤー寄せの手段の1つとして、女型アンデッドモンスターが多めなのはデーモンズソフトの戦略というのがUDSプレイヤーの一般的見解だ。
だからこそ、宵闇ヤミも鬼童丸の言い分を否定することはできなかった。
「ヤミね、今度鬼童丸さんがヤミのことしか考えられなくなる配信をするから」
「落ち着こう。早まるんじゃない。というか、古河市行こうぜ。他のプレイヤーにボスモンスターを取られたくないし、後でちゃんと話も聞くから」
「…わかった」
後でどんな話がされるんだとコメント欄で質問が殺到しているが、そんなヤミんちゅ達の声は鬼童丸に届かないからスルーである。
野木町から古河市に移動するにあたり、鬼童丸はドラクールに【
何故なら、ヤンデレムーブした宵闇ヤミに女型アンデッドモンスターを不用意に見せるのは不味いからだ。
戦闘時ならまだしも、他に手段があるのならそちらを選んだ方が良いと思い、鬼童丸はフロストパンツァーを召喚したのである。
フロストパンツァーに乗ってまくらがの里こがに向かうと、そこには落ち武者ゾンビの群れがひしめいていた。
落ち武者ゾンビの甲冑が足軽のものだとすれば、その集団の中に足軽大将と表現すべき個体がいた。
足軽がオチムガルという名前で、足軽大将はオチタイショーであることがわかった。
「「
敵がうじゃうじゃいる以上、この場での戦闘は乱戦モードだから鬼童丸も宵闇ヤミも総力戦を始める。
全てのモンスターを召喚した後、鬼童丸は続いてヘリコプター形態のフロストパンツァーをデフォルトの戦車形態に戻した。
これで戦いの準備は整い、鬼童丸達はセットコマンドで攻撃を開始する。
道の駅は常識的に考えた時、防衛すべき拠点として硬い方ではない。
したがって、損傷率の数字に気を付けながら戦闘を行う必要がある。
もっとも、敵はアビスライダーの【
Lv100が上限の従魔ばかりだから、鬼童丸達はかなり早い段階でオチムガルを倒し切った。
残るはオチタイショーだけな訳だが、オチムガルが倒されるにつれてどんどんSTRとVITが上がっていく。
気づけばどちらも6,000を上回っており、先程からダメージはほとんど入っていない。
「鬼童丸さん、オチタイショーってなんでこんなに強いの?」
「俺に言われても困る。多分、味方が倒される度に強くなるアビリティでもあるんだろ。最初は入ってたダメージが入りにくくなってるし」
「うへぇ…」
オチタイショーの硬さに困った表情の宵闇ヤミだが、オチタイショーにデバフを積むことで少しずつ与えるダメージを増やしている。
勿論、ダメージを与えるという点で鬼童丸は稼いでおり、オチタイショーに対して従魔達の攻撃でオチタイショーの残りHPは残り半分を切った。
その瞬間、オチタイショーの装備する刀が怪しく光を放つ。
「あれはヤバい! リビングフォールン、【
直感的に不味いと判断し、鬼童丸はリビングフォールンに命じてオチタイショーをターゲットとして【
アビリティが封印されたことで、オチタイショーの刀の光は消えた。
あのまま放置していたなら、オチタイショーの攻撃で甚大な被害が出ていただろう。
「イミテスター、【
イミテスターの攻撃を受けてオチタイショーが不幸状態になり、ミストルーパーが放った【
しかも、空振りのせいでバランスを崩したところに攻撃が入ったものだから、ダウン状態で鬼童丸達は追撃可能になる。
当然、鬼童丸も宵闇ヤミも追撃のボタンを押し、抵抗できないオチタイショーを袋叩きにしたものだからオチタイショーは力尽きた。
いつもならばすぐにシステムメッセージが流れるのだが、どういうことなのかそれが流れない。
システムメッセージが流れないということは、まだ戦闘は終わっていないということになる。
しかし、見た限りではどこにも倒すべきアンデッドモンスターはいない。
この現象に対し、宵闇ヤミチャンネルのコメント欄でバグがまだ直っていないのではとざわつくけれど、異変はすぐに発生する。
地獄の門が唐突に開き、その中から悪魔と戦装束を身に着けた赤鬼が現れた。
それと同時に画面がストーリーモードに変わり、鬼童丸達の従魔が強制的に送還される。
「ヨモツイクサ、往け。奴等を始末するのだ」
悪魔の指示に従ってヨモツイクサが歩き出せば、鬼童丸と宵闇ヤミの目の前にクエスト画面が表示される。
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緊急クエスト:地獄から送り込まれたヨモツイクサを討伐せよ
達成条件:それぞれアンデッドモンスターを2体ずつ使役してヨモツイクサを討伐する
失敗条件:使役するアンデッドモンスターの全滅
報酬:専用武装交換チケット1枚
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(ここに来て縛りプレイアリの緊急クエストか。あぁ、そういうことか)
緊急クエストで制限がかけられた理由に気づき、鬼童丸はそれならば仕方ないと納得した。
その理由とは、ここで総力戦を行った場合に掃除屋が現れる可能性があるからだ。
検証班の検証結果によれば、1ヶ所に一定以上の戦力が集まると掃除屋が現れるということだったが、その戦力は味方だけでなく敵もカウントされる。
そうじゃなければ制限をかけられる理由がないため、鬼童丸は自分の予想が正しいのだろうと判断した。
(宵闇さんは支援系の従魔を持ってなかったはず。となると、俺が1体は召喚した方が良いな)
戦うのは自分だけではないから、鬼童丸は宵闇ヤミの戦力も考慮して戦わせる従魔を選出する。
「
鬼童丸が召喚してすぐに宵闇ヤミも2体の従魔を召喚する。
「
宵闇ヤミは最高戦力のグレスレイプに加え、状態異常を遣える盾役としてゲイザリオンを召喚した。
この組み合わせならばバランスは良いと言えよう。
鬼童丸達の準備が整ったところで緊急クエストが始まる。
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