第95話 ねえ、今どんな気持ち?
対戦モードのエクストラバトルは、通常のバトルで対戦するプレイヤー達のコンボ数が一定以上の時に持ちかけられる選ばれし者の戦いであり、A評価以上でないと報酬が貰えないのはソロモードと変わらない。
ソロモードの時は墓の土がモリモリと盛り上がってラメントアイドルが現れたが、今回は墓石に擬態していたグレイヴスタチューが鬼童丸達の前に現れる。
墓石に擬態していた時と異なり、擬態を解除した後は石で構成されるダンサー型ゴーレムの姿に変わった。
「さて、グレイヴスタチューと戦ってもらうわよ。オークボンヌに差をつけて勝った実力、見せてもらうわ」
流れて来る曲はオークボンヌのバトルと違ってラップだからテンポが速く、難易度が跳ね上がっている。
エクストラバトルが始まると、鬼童丸も宵闇ヤミもシビアなタイミングでのコマンド入力が求められたことにより、集中しているせいで無言のままコマンド入力する配信になってしまう。
無論、ヤミんちゅ達はアンデッドディスコをプレイする配信で宵闇ヤミが集中する時にそうなったのを覚えていたから、無言でコマンド入力をすることに対して放送事故だとは思っていない。
鬼童丸がベストタイミングでコマンドを入力していき、 宵闇ヤミも必死にそれに喰らいついていく。
(やれやれ。やっぱりあるのかアドリブ入力)
ソロモードと同じくアドリブのアレンジタイムがあり、ここでのコマンド入力がエクストラバトルの評価に大きく影響するのだ。
前回の鬼童丸は別のリズムゲームのことを思い出し、ウケが良さそうなコマンドを打ち込んでみて上から2番目の評価で終わった。
(今回は前回とは一味違うぞ)
別のリズムゲームの経験を持ち出した前回は、ブランクがあった故に自分の中で中途半端な出来だったと鬼童丸は思っていた。
それゆえ、鬼童丸はこの配信に参加するにあたってちゃんとアレンジタイム対策としていくつかのリズムゲーム動画を見て感覚を取り戻していたのだ。
今回はアレンジタイムで満足のいくコマンド入力ができたため、鬼童丸はアドリブタイムが終わった時に達成感に満ちた表情だった。
『EXCELLENT!!』
その一方、宵闇ヤミはなんとかアドリブタイムにコマンド入力をやり切れたけれど、その出来栄えはとりあえずミスはしなかった程度に留まるようで苦い表情をしている。
再び指定されたコマンド入力が求められるようになり、そのまま最後まで鬼童丸も宵闇ヤミもノーミスのまま進んだ。
ノーミスだったということは、2人ともグレイヴスタチューに勝利したことを意味する。
『You Win!』
『リビングフォールンの【
『リビングフォールンが【
【
【
この2つのアビリティが手に入っただけでも、鬼童丸にとってグレイヴスタチューとのエキストラバトルに価値はあったと言えよう。
2人の勝利を告げるシステムメッセージが表示され、それからリザルト画面が鬼童丸と宵闇ヤミの正面に表示される。
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ミニゲーム②アンデッドディスコ-EX2
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コンボ数:鬼童丸250回 宵闇ヤミ250回
ミス回数:鬼童丸0回 宵闇ヤミ0回
評価:鬼童丸S 宵闇ヤミA
報酬:グレイヴスタチューLv1/50
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「S評価。グレートだね」
「うぅ、A評価…」
「ねえ、今どんな気持ち?」
「ううぅぅぅぅぅ…」
宵闇ヤミは鬼童丸に煽られてすすり泣く。
グレイヴスタチューとのエクストラバトルでA評価以上だから、鬼童丸だけでなく宵闇ヤミもグレイヴスタチューを手に入れた。
それでも、鬼童丸に勝てると思って挑んだアンデッドディスコで二度続けて負けたのだから、結果的にヤミ虐になって愉悦勢のヤミんちゅ達は大歓喜である。
コメント欄には「ヤミヤミのすすり泣きでしか得られない栄養素がある」なんてコメントもあり、愉悦勢のヤミんちゅの中にも業の深い者がいるようだ。
フランケンダンサーは一度でS評価判定された鬼童丸を褒める。
「貴方、かなりセンス良いわね。エクストラバトルにおいて2連続でA評価以上を貰えたのは貴方だけよ。しかも、今回は前よりも難しいのに評価は上がってる。アチシの店で一緒に働かない?」
「丁重にお断りします」
「もう、露骨に距離取らないでほしいわ。隣の貴女はどう? 貴方の成長にも目を見張るものがあるのだけれど」
「ヤミは鬼童丸さんの隣が居場所だから断る」
「フン、見せつけてくれるじゃないの。まあ、良いわ。次の曲も踊るかしら?」
鬼童丸と宵闇ヤミの正面に踊ると止めるのボタンが表示された。
宵闇ヤミは鬼童丸に提案する。
「き、鬼童丸さん、勝負を宝探しに変えてくれたりしない?」
「変えるなら対価を貰おうかな?」
「わかった。じゃあ、ヤミの考える鬼童丸さん向けボイスの読み上げでどう?」
「そこは俺が考えるじゃないの?」
罰ゲームなら相手がお題を考えるものだが、宵闇ヤミは自分で罰ゲームを用意して来た。
これには鬼童丸も苦笑する。
正直なところを言えば、別に鬼童丸としては勝負が宝探しでもアンデッドディスコでも構わない。
だからこそ、ヤミんちゅ達も喜ぶだろうと思って宵闇ヤミの提案に頷いた。
フランケンダンサーの提示した選択肢は止めるを選び、鬼童丸と宵闇ヤミはそれぞれのスタート画面に移動した。
配信でコネクトの通話を繋げておけば、この画面でも鬼童丸と宵闇ヤミはお互いの声を聞こえる。
『鬼童丸さん、先に罰ゲームが良い? それとも先に宝探しが良い?』
「宝探しを先にやろう。配信のクライマックスで罰ゲームにしてもらうよ」
『わかった。鬼童丸さんは私を焦らして楽しむドSだもんね。わかってたよ』
この後、鬼童丸と宵闇ヤミは対戦モードの宝探しを行い、アンデッドディスコと同じく2回戦った。
対戦モードの宝探しでは、同じフィールドで先に宝箱を見つけた方が勝ちだ。
鬼童丸はアンデッドディスコよりも宝探しが得意という宵闇ヤミの読みは外れていない。
しかも、鬼童丸が宝探しをするということは宵闇ヤミも巻き込まれてハードモードでやらざるを得ないから、2回とも鬼童丸の勝ちで終わった。
しかも、ハンデのつもりでアビスライダーとレギネクスをそれぞれのステージで使ったから、スタート画面に戻って来た宵闇ヤミのメンタルは割と崩壊気味である。
『うぅ、ぐすん。鬼童丸さんが虐める…』
コメント欄は愉悦勢のヤミんちゅ達による「ヤミ虐助かる」と「ヤ俺恥」で埋まった。
そろそろ配信も終わりなので、宵闇ヤミは気持ちを切り替えて自分の考える鬼童丸に向けたボイス発表を行う。
『テーマは他の女と遊んで帰って来た鬼童丸さんを待ち伏せして詰め寄るヤミ』
(それってなんか身に覚えがあるなぁ)
桔梗が自分に詰め寄った時のことを思い出して、鬼童丸は苦笑した。
それからすぐにボイスが始まる。
『お帰りなさい、鬼童丸さん。遅かったね』
その声は鬼童丸の帰宅を待ち詫びていたという様子である。
『ねえ、どうして鬼童丸さんからヤミ以外の女の臭いがするの? ねえ、どうして?』
今は宵闇ヤミのアバターが見えていないけれど、もしも宵闇ヤミのアバターが目の前にいれば目からハイライトは消えているのだろう。
『今日もヤミと遊んでくれるって言ってたよね? 約束してたのに他の女を優先したの? ねえ、答えてよ』
徐々に声の圧力が増しており、コメント欄のヤミんちゅ達は「ヤミヤミの真骨頂きちゃ」と喜んでいた。
『約束を守れない悪い鬼童丸さんはヤミがきっちり管理してあげる。今日からずっと一緒だよ。おはようからおやすみまでずっと、ずっと…』
その言葉に寒気を感じたが、ボイスはここまでで終わった。
流石にこれ以上はWeTubeのチェックが入ると思っての判断だ。
『という感じだったんだけど、鬼童丸さん的にはどうだったかな?』
「シチュエーションボイスなのにものすごく入り込んでたな。ゲームじゃ負けなしだったけど、これには一本取られたよ」
『フフフ、やったね♪ それじゃあ、鬼童丸さんに一矢報いたところで今日の配信はおしまいだよ。おつやみ~』
コラボ配信が終わってログアウトした時、久遠はリアルで嫌な汗をかいていた。
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