第6章 Class Reunion
第51話 あっ、デビーラ。さっきぶりだね
新人戦が終わり、久遠は明日の同窓会前に済ませておきたい雑事を済ませて夕食を取った後、午後9時を過ぎた頃に時間ができたため、UDSへログインした。
本編では遊べないもののミニゲームはできると聞いていたから、鬼童丸のアバターでどんなミニゲームで遊べるのかチェックしてみる。
現在解禁されているミニゲームは3種類あり、後々にミニゲームが追加されるであろうことを匂わせる画面になっていた。
順番にミニゲームの詳細を見ていくと、1つ目のミニゲームは宝探しだった。
自らが使役する従魔1体を選択して廃墟に侵入し、その際に提示されるアイテムを探すというものだ。
時間制限がない代わりに、クリアタイムが短ければ短い程報酬のネクロが多く貰えるし、目的とするアイテムも本編に持ち込める。
宝探しで侵入する廃墟は毎回ランダムに準備されるため、似たようなマップの廃墟に侵入したとしても、目的とするアイテムが違うから全く同じ宝探しを二度やることはない。
それだけのパターンを用意するあたり、最早ミニゲームと呼べるものではない作り込み具合なのだが、鬼童丸はツッコまないでおいた。
2つ目のミニゲームは、アンデッドディスコというリズムゲームである。
使役するアンデッドモンスターを1体選択し、アンデッドディスコでしかゲットできないアンデッドモンスターと勝負する。
本編で使えるアビリティは一切使えず、アンデッドディスコ独自のコマンドで操作するのだ。
このミニゲームでは、ネクロが手に入らない代わりに対戦したアンデッドモンスターに勝つとそのアンデッドモンスターのカードが手に入る。
3つ目のミニゲームは、アンデッドスロットというスロットゲームだ。
本編の所持金をメダルに換えてスロットゲームに挑み、当てれば景品としてアイテムを貰うか原資にしていたネクロを増やせる。
ギャンブラーホイホイなミニゲームと言えよう。
(無難に宝探しからやってみようかね)
鬼童丸が宝探しを選択したことで、画面が宝探しに切り替わった。
『宝探しに参加させるアンデッドモンスターを1体召喚して下さい』
「
敵が出て来るかもしれないから、鬼童丸は
それに伴い、鬼童丸とドラピールは廃墟の前に転移させられた。
その廃墟は雑草が生い茂って人が寄り付かなくなった一軒家であり、鬼童丸の視界にミニゲーム開始のカウントダウンが表示される。
『3,2,1, Go!』
「ドラピール、廃墟に【
鬼童丸は早速廃墟に入ると思いきや、ドラピールに廃墟を外から攻撃するよう命令した。
鬼竜牙棍が廃墟の壁に触れたとたん、廃墟全体にミシミシと亀裂が入って破壊された。
廃墟が瓦礫の山になって鬼童丸は苦笑する。
「あぁ、できちゃったか。ドラピール、瓦礫を【
もう一度ドラピールが【
『ミッションクリア!』
(それで良いのかデーモンズソフト)
ミッションクリアの表示が出て鬼童丸は苦笑した。
明らかにデーモンズソフトの想定していない遊び方だろうから、後でナーフされるのではと思ったが、一旦は目の前に提示された記録を見てみる。
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ミニゲーム①宝探し-1
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クリアタイム:10秒
評価:S
報酬:100万ネクロ
キュアポーション×50
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(床下から出て来たってことは10秒でクリアっておかしいだろうな)
表示されたクリアタイムを見て、鬼童丸はやらかしてしまった自覚を持った。
キュアポーションは状態異常を治すポーションであり、この宝探しでキュアポーションが解禁された。
50個手に入ったのは評価Sだったからで、評価のランクに応じて手に入る数とネクロの額も変わる。
宝探しをクリアしたことでミニゲームのトップ画面に強制的に戻されたが、そこにデビーラが現れた。
「鬼童丸ゥゥゥ、やり過ぎィィィィィ!」
「あっ、デビーラ。さっきぶりだね」
「さっきぶりだね、じゃないから! あんなやり方しないでよもう!」
「できたってことはそういう仕様じゃないの?」
やらかした自覚もあったけれど、とりあえずで来たんだからしょうがないじゃないかというスタンスで鬼童丸は惚けてみた。
ミニゲームで挑んだ廃墟は本編と切り離された場所にいるから、鬼童丸が廃墟を破壊しても本編のNPCからの好感度に影響はない。
それがわかっているからこそのこの反応だ。
「そういう仕様というか、ミニゲームの廃墟を破壊するレベルで攻撃するプレイヤーがいない想定だったの! 宝箱ごと壊れたらどうするつもりだったの!?」
「なんとなく破壊不能オブジェクトだろうなって思ったから、試しにやってみた」
「クッ、無駄に読みが正しいわねっ」
「ドヤァ」
「ドヤァじゃないわよぉ!」
デビーラはプリプリと怒った。
思い切りの良いプレイヤーがいるせいでミニゲームのゲームバランスが崩れてしまうから、デビーラが怒るのも仕方あるまい。
『宝探しにて理論上最速タイムでクリアされたため、難易度修正が行われます。本編のアップデートが完了すると同時にアップデートが終わりますので、他のミニゲームをお楽しみ下さい』
「ん? ワールドアナウンス?」
「そうよ。壁を壊すプレイヤーが出て来た以上、宝探しの難易度を改めないとゲームとして破綻しちゃうもの。まったくもう、感謝してよね。鬼童丸の名前は出さないであげたんだから」
「ありがとう」
最速タイムでのクリアは偉業として評価される反面、これから宝探しをやろうとしていたプレイヤーは明日まで宝探しができなくなってしまった。
それを恨むプレイヤーがいないとも限らないから、デーモンズソフトは鬼童丸の名前を出さなかったのだとデビーラは言ったのだ。
これには鬼童丸も素直に感謝した。
「何よ、思ってたより素直じゃないの」
「そりゃ配慮してくれたんだから、お礼ぐらい言うさ」
「だって<新人戦チャンピオン>が叩かれてUDSをプレイしなくなるなんて嫌じゃん」
「大丈夫。その程度では止めないよ。他のゲームでもっと派手に活躍した時、もっと酷い妬まれ方したし」
「うわぁ…」
デビーラは鬼童丸なら本当にもっとやらかしていそうと思ったから、その時のことを思って顔を引き攣らせた。
鬼童丸も長くゲームで遊んでいるから、どうしても目立ってしまって叩かれることもあったので、そういう声が出て来ても仕方ないと思っている。
「まあ、そういう訳でわざわざマスコットのデビーラが出て来なくても、俺はまだUDSから離れないから安心してくれ」
「そう? それなら良かった。宵闇ヤミもそうだけど、鬼童丸にもUDSが盛り上げてくれるって期待してるんだから。今日の貸しは私の期待に応えることで返してね。それじゃ」
デビーラはそう言って姿を消した。
鬼童丸はデビーラに感謝しつつ、アンデッドスロットをやってみることにした。
アンデッドスロットならやらかすことはないだろうと思い、鬼童丸はそれを選んだのだ。
流石にスロットゲームでやらかすことはないだろうと思ってのことである。
アンデッドスロットの画面に遷移したら、鬼童丸はスロットマシンの前に座っていた。
縦横斜めのいずれかで3列に描かれたイラストを一致させるだけのゲームであることを確認し、鬼童丸は試しにアンデッドスロットに挑んでいく。
(あっ、これ目押しできる奴じゃん)
古いゲームだと乱数勝負のスロットが多かったが、最近のゲームにおけるスロットは目押しができる者の方が多い。
技術的に当たりを出せるということで、鬼童丸はアンデッドスロットに集中して取り組む。
とりあえず30分程集中してチャレンジしてみたところ、5,000ネクロが約50,000ネクロ換算できるメダルになって戻って来た。
景品リストを見てみたところ、所持するメダルでどうしてもアンデッドスロットの景品として欲しい物はなかったから、ネクロに換金して45,000ネクロ以上儲けたことにしてチャレンジを終了した。
ズブズブに嵌ると危険だと自制心を利かせ、鬼童丸はUDSからログアウトした。
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