世界の終わりの(オトナの)かくれんぼ
武功薄希
世界の終わりの(オトナの)かくれんぼ
タイガーは、灰色の空を見上げた。首都全体を覆う重苦しい雲が、世界の終わりを予感させる。最後のかくれんぼを提案したのは、チームの知恵袋的存在であるミズノだった。常に冷静で論理的なミズノは、この状況下でも学びの機会を見出そうとしていた。一方、感情豊かで直感的なアシックは、最後の時間を仲間と過ごすことに意義を感じていた。
タイガーは腕時計を確認した。「よし、5時間経った。二人の特徴を踏まえて探していこう」
街は既に静寂に包まれ、人々の姿はない。タイガーは冷静に状況を分析し始めた。
まず、ミズノの行動パターンを考える。高所を好み、常に効率的な選択をする彼女は、最適な隠れ場所を論理的に選んでいるはずだ。一方、アシックは歴史的な場所に興味があり、感情に従って直感的に場所を選んでいる可能性が高い。
「ミズノは安全性と難易度のバランスを考慮するだろう。アシックは思い出の場所や、心惹かれる雰囲気の場所を選ぶかもしれない」
タイガーは首都の地図を頭に描き、二人それぞれの可能性の高い場所から探していくことにした。
かくれんぼの範囲は首都全域。制限時間は世界の終わり。これがゲームのルールだ。
高層ビル街に向かう。各ビルの構造、セキュリティシステム、屋上へのアクセス方法を分析。ミズノが選びそうな最適なビルを特定し、綿密に捜索する。
「ここにもいないか。次はアシックが好みそうな歴史地区だ」
古い寺社仏閣が集中する地域へ移動。各建造物の歴史、雰囲気、隠れやすさを評価。アシックが感情的に惹かれそうな場所を重点的に探る。
時が過ぎ、街全体が夜の闇に包まれていく。タイガーは捜査結果を整理し、新たな仮説を立てる。
「二人とも、互いの性格を考慮して予想外の選択をした可能性がある。ミズノは感情的な場所を、アシックは論理的な場所を選んだかもしれない」
この仮説に基づき、タイガーは捜査範囲を広げる。ミズノが興味を示していた古い図書館や、アシックが最近話題にしていた新しい展望台なども視野に入れる。
首都の中心にそびえ立つタワーが目に入った。タイガーは思考を巡らせた。
「ここなら二人の条件を同時に満たせる。ミズノの論理性とアシックの感性、両方に響く場所だ」
エレベーターは動いていない。階段を一段一段上っていく。各階で可能性のある隠れ場所を推測し、効率よく探索する。
頂上に着いたとき、タイガーの推理が的中した。そこには、ミズノとアシックが待っていた。
「やはりここか」タイガーの声が、夜空に響く。
ミズノは冷静な表情で「論理的な推理だったわね」と言い、アシックは感動的な表情で「最後に皆で会えて良かった」と涙ぐんだ。
果たして、これは理論的な推理だっただろうか、とタイガーは思った。最後は推理のようでいて、推理ではないような気がした。純粋に呼ばれている方へ導かれていた。しかし、探し出すとは本来そういうことなのかもしれない。タイガーはそう思った。
3人は静かに見つめ合った。その時、世界の終わりの光に包まれ始めた。
子供のころから、大人になっても、そして、世界の終わりにまで遊んでいた、とある三人組の話。
世界の終わりの(オトナの)かくれんぼ 武功薄希 @machibura
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