第6話「あくまでもどこまでも優しく」

「泣いても止めないけど、なるべく泣いて欲しくないな。だって気持ちいいでしょ? 言ってごらん、気持ちいいって」


 鬼畜か! なんてツッコミをできる程度に俺の意識は覚醒していたが、身体は留まることを知らないかのように熱を帯び続けるし、特に性器は生まれてこの方経験したことがないほど凄まじい状態になっていた。


「ほら、言って」


 柳さんはローションまみれの指で俺の右の胸の突起を撫で、ひねり、摘まみ、引っ張った。


「ああああ!!」

「気持ちいいでしょ? ちゃんと認めて」

「……す」

「なに?」


 俺は恥ずかしさで真っ赤になっていただろう。こんなことをねだるなんて、まるで変態だ。いや、男性同士のセックスってことじゃなくて。


「どうして欲しいの?」

「あ、あっ……」

「羞恥心なんて早々に捨てた方がいい。ね?」

 

 次の瞬間、大津さんはまた俺の両方の胸の先端をつまみ上げていた。


「あっ! ああぁぁん!!」


 それこそが俺の望んでいたことだった。左右同時に触れて欲しいと。

 またイッた。

 


「大津くん優秀だからご褒美あげようか」


 射精の快楽に半ば自意識を蕩かせていると、柳さんはそう言い、俺のベルトを外してザッとデニムを下ろし、それからアレまみれのパンツも脱がせた。


——ま、待って! そっちは二時間触らないんじゃなかったんですか?!


 驚いたのは、柳さんが俺のイッたばかりの性器を掴み上下に激しく動かし始めたことだった。


「えっ?! ちょっと、俺もう——」


 痛みさえ走った。射精直後の性器になんて自分でも触ったことがないし、かと思えば柳さんは俺のものを口に含んで吸い出した。


「ぅわぁあ!」


 な、なんだこれ?! イッたばっかで疲労困憊なのに、これなんか、暖かいし、吸われると超来るし、柳さんが舌を俺のあんな所に擦りつけているという事実確認だけで頭がおかしくなりそうになった。そもそも既に射精はしたんだ、もういいだろう! 解放してくれ!!


 と、願ったのも一瞬。


——な、なんか、奥から来る……!


 柳さんは両手を使って俺の性器に刺激を与え続けていた。物凄いスピードで手を上下させて。


「あ、あ、あ、や、やめて! やめてください!!」

「やめない」

「こ、恐い!! お願いします、と、止めて、ください!!」

「ここで止めたら後悔するよ? 最高に気持ちいいのあげるから」

 

 なんだこれ、奥が、身体の奥が熱い、なんか、出そう——!!

 通常の射精とは違う部分が反応しているような違和感、違和感なのに、完全な悦楽。


「じゃあ、行くよ」


 柳さんが耳許で優しく囁くと、握力をぐっと強めた。


「あっ、はぁぁぁああ!!! ああぁぁん! あああ!!」


 何かが出始めた。だが精液ではなく、恐る恐る目を開けると、そこにはまるで女性で言う『潮吹き』のような透明の液体が散らばっていた。


 その快感と言えばなかった。


「よく出たね。偉いよ」

「はぁ、はぁ、はぁ……」


 俺はいまだ肩で息をしながら柳さんを見た。いつも通り邪気のない笑顔で、それが俺をますます不安にさせた。


——これから俺、どうなるんだ?

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