俺の幼馴染で好きな人、田中香菜が陰キャから高校デビューして学園のアイドルになり俺を捨てる可能性があるので阻止する件

クマとシオマネキ

第1回 それは放置で始まった、涙は出ない。

「それで俺は受け身の練習意味ねぇから乱取りしたい言ったら1日中受け身させられた訳よ」


「ん」


「駄々こねる子供みたいだからやってらんねぇって言って辞めた訳よ、部活を」


「ん!?ん…」


 さっきから「ん」とか「厶」とかしか言わないおかっぱで、黒髪の黒縁メガネ。 

 少しそばかすがあるが、大きい目に整った鼻、太い眉、少し大きめの口。

 多分、ちゃんと外見に気を使って、周りと普通にコミュニケーション取れればモテると思う。

 しかしその顔はいつも仏頂面、一文字に結ばれた口からは言葉少なく、あまり意思や感情が読み取れる訳では無い。


 大して高くない身長に、多少胸はあるが大きめの制服や体操服を着て誤魔化す。

 成績は…下の上…趣味は小説を読む事だから一見頭が良いと思いきや、中学時代は国語以外からっきしだ。文系ではない、理数が駄目な人。

 小説読むからといって国語が出来る訳では無い事を証明した。


 それが俺の幼馴染、田中香菜…通称タナカナ。

 通称と言ったが言ってるのは俺だけ、何故ならタナカナに友達はいなかったからだ。


  

 そのタナカナが…公立高校を落ちた。

 県内で一番頭の悪い学校を落ちたのだ。

 ちなみに俺は受かった…成績は普通だったらから…


「厶!?あ…………あっ!?……あぁ………」


 ドサッ


「おいっ!?タナカナ!?おいぃ!?」


 タナカナは公立高校の合格発表で自分の番号が無く、驚きと絶望のあまり、その場で気絶した。

 俺は…コイツはこのままではもう駄目だと思った。

 人のこと言えないが頭が弱い、それ以上に心が弱すぎる。

 だから滑り止めで、2人で受けていた少し地元から離れた私立に俺も行く事にした。

 付き合いの長いコイツが少し離れた土地で、生まれ変われる事を願った。


「ケンちゃん…本当に…良いの?…」


「あぁ、決めたんだ。無理したくないし、憧れの私立に入りたくてよ。たからタナカナは気にするな」


 見方によって俺は…意地でもタナカナと同じ高校に入ろうとする真正のストーカーだ。

 でもまぁ、向こうの両親からは「ケンちゃん、出来ればで良いからこの娘をよろしくね」と親公認だからまぁ良いだろう。

 


 そんな俺は北斗健一、タナカナからはケンちゃんと呼ばれている。

 中背で部活は入ってないが中二まで柔道をやっていたし、父親が趣味で護身術の道場をやっている。

 運動は苦手だが多少の喧嘩は出来る…が、しない。

 意味無いし、怖いし、良い事何も無いからだ。

 


 勉強はまぁ普通程度で、どちらかと言えば声がデカく、友達も部活でいたり、クラスで話している方だから明るい方だと思う。


 だから友達がいないタナカナの気持ちは分からない。

 というかタナカナは最低限の音声しか発しない。

 幼馴染と言っても幼稚園から一緒なだけ、話す時は俺から一方的に話す。

 それでも…まぁきっと…タナカナの事が昔から気になっているのだと思う。


 今になってみれば…きっと好きなんだと…思う。


 しかし、タナカナの好み…か…


 少し話がずれるがタナカナが好きな小説を以前、見た事がある。

 何かうじうじした男が主人公で、付き合っていた女が中学だか高校で学園のアイドルになったが、うじうじした男はそれを嫉妬し、別れる事になり女がメンヘラを発病させグチャグチャになるラブコメだ。

 いつも大体そんなんばっかり見ていた。

 つまり…このどうしょうもねぇ男が好きなんだな。


 そして俺の高校の目標は…ソレだ。

 うじうじしながら「俺なんて…」とか言うのが、きっと母性本能をくすぐるのだ、多分。


 ただ問題がある。

 …一度、他校の不良の生徒がカツアゲを拒否した俺の同級生にケジメ取る…という意味不明な理由で乗り込んできた不良を背負投げと巴投げで転ばして、中学の学区内で有名になってしまった。

 また、報復とか怖いし授業中だったから体育指導室でその不良の心を折れるまで絞め技で落とす⇛水かけて起こすを繰り返していたら、不良界隈で【四中のケンシロウ】という不名誉なあだ名を付けられた。

 つまり現在、うじうじした男とは真逆の方向にいる。


 噂によると俺は胸に銃撃で受けた7つの傷があるらしい。

 そんな殺意モリモリの銃撃受けたら…それが本当だったら俺はもう、死んでるな。


 そんな俺は、まずは陰キャになるために、日記を書く事にする。

 とにかく俺よ、女々しく、女々しくあれ。



 そして始業式の終わった今、タナカナは地域一番の頭の悪い私立学校のギャルに囲まれて「あっ…あっあっあっ…あっあっあっ」とまるで漫画で脳を弄くられるシーンの様な声をあげ、何かやられている。

 あの小説の様になるなら…俺は助ける事は出来ん。

「オメェ可愛いって!ゼッテ〜!オメェ白ギャルいけっべ!眉毛剃んべ!アゲアゲな女にしてやんよ!」「あっあっあっ…あっ…」


 すまん…スマン…タナカナ…これはお前の為なんだ…

 俺は少しだけ涙が…特には出なかった。


 そして学園のアイドルとなった時…タナカナは俺を覚えているだろうか?

 これは…一世一代の賭けだ。

 

 この日記は…好きな人と付き合う為、酷いバイオレンス馬鹿設定にされた俺が陰キャになる努力をしてタナカナに好かれる為に、そしてギャルに囲まれ、ベルトコンベアに乗せられたパンが焼かれる様に、タナカナが強制的に学園のアイドルになって発狂寸前なるまでの日記になる事を願う。

 


 

 

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