相席居酒屋でやけ酒してたら彼女が出来た話
紗倉 伊織
第1話
22歳。地方都市の高卒サラリーマン。
別に何かに秀でた訳でもないと思うけど何かに劣ってる訳でもないと思う。
同棲してる彼女と週末にデート行くのが楽しみ。
割とよくいるような人間だと思う。
だからこれからもよくあるような人生を送ると思ってる。
「ねぇ、遥斗。話があるんだけど」
仕事終わりの俺に彼女が声を掛けてきた。
「どした?なんかあった?」
「いやさ、あの…」
歯切れ悪そうに言ってくる。
「あのね、私たち、別れよう」
「…は?」
青天の霹靂。まさかの内容だった。
「なんで?なんかだめじゃった?」
「いや、遥斗が何か悪いとかじゃないけど。好きな人が出来たんよ」
「そっか…」
「明日には荷物持って出るね。2人で買ったものとかは置いていった方がいい?」
「もう好きにしてくれ」
「…そう」
終わりは唐突だった。もうなんでもいい。
とりあえず誰かにこの気持ちをぶちまけたい。
連れ達に連絡を取るも残業やもう家らしい。
キャバクラにでも行こうか考えながらスマホを見てたら、相席居酒屋の広告が目に入った。
明日から連休だしいいかもしれない。
風呂に入って行くことにしよう。
---
駅前まで車を走らせる。近くにビジホとか漫喫、ネカフェもある。とりあえず家には帰りたくない。
相席居酒屋が見えてきた。
コインパーキングに車を停めて、店に入る。
「いらっしゃーせー、1名様でよろしいでしょうか?」
「はい」
「じゃあこちらへどうぞー」
思った以上に普通の居酒屋だった。酒もつまみも結構種類がある。
通されたところは、2人掛けの席。まだ誰もいないっぽい。
とりあえずなんか飲もう。飲んで忘れたい。
「あ、店員さん、たちまち生中で」
「はーい」
あんまりビールは好きじゃないけど飲み屋に来ると無性に1杯目にビールを飲みたくなる。
「どうぞー」
「ありがとうございます」
「あ、女性の方なんですけどここに通してもよろしいでしょうか?」
「大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
ほーん。案外早く来るもんだな。にしても女性か。男の人の方が良かったけどまぁなんでもいいか。
「前失礼しますね〜」
「あ、どぞどぞ」
前に掛けたのは少し大人びた雰囲気の女性。
パリッとしたスーツに身を包んだ少し歳上くらい。
「あ、うちも同じの貰えます?」
「かしこまりました〜」
一人称がうちとはまた珍しい。ギャップがすごいな。
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