木箱の骨

天川裕司

木箱の骨

タイトル:木箱の骨


恋人を捨てた極悪非道な奴がいた。

その恋人とは俺の姉。

姉はそれが理由で自らこの世を離れてしまい、

今はもう亡き人。


俺は姉の恨みを晴らすため、仲間と一緒に

その極悪非道な男の行方を追った。

奴も運が悪い。

暴力団関係の組織化にある

俺たちの怒りを買ったのだから。


姉とそいつの連絡履歴から、

そいつの居場所は比較的簡単に割れた。


男「ゆ、許してくださぁい!ごめんなさい!」


「俺たちがお前を許すとでも思うのか?せめて、姉が生きている時にそのセリフを言うんだったな」


俺たちは廃屋工場の倉庫に男を監禁し、

男の目の前に1つの木箱を置き、

「その箱に、地面に頭がめり込むぐらい土下座して謝れ!」

とその男に何度も言った。


この男は他に女を何人も作り、

挙句、姉に何度も暴力を働いて捨てた。


姉は生前その事を俺たちに一言も言わなかったが、

この世を離れる時、

自ら正直を書き留めておきたかったのだろう。

姉の遺書が見つかり、その中でこの男に

散々されてきた事を1つずつ綴っていた。

思い出すだけで反吐が出るくらいの悪逆非道。


俺ははじめこの男は絶対に許さず、

この男にも姉のあとを追わせようと思っていたが、

それでも思い直し、姉が1度でも愛した人だからと、

しかるべき処罰を受けさせた後、

適当に見逃してやろうと思った。


現実的に考えて、敵討ちの為とは言え、

人をあやめると言うのはそれだけ大きなリスクともなる。

おそらく組に警察の捜査が入る事になるだろうし、

この男をそうしたからとて、

姉が返ってくるわけではない。


ただ落とし前だけはきっちりつけさせるため、

この男がするべき謝罪の中に、指を詰めさせる

という事は含んでいた。


男は何度も箱に対して謝っていた。謝り続けた。

翌日、俺はどうしても外せない用事があったので

部下にこの男のことを任せ、しばらく外へ出た。


そして帰ってくると、

「おい!お前、どうした!?」

見張りにつかせておいた2人の部下は熟睡しており、

その間にあの男は姿を消していた。


部下「す、すみません!きゅ、急に睡魔が襲ってきて、気づくとあの男は…!」


「馬鹿野郎!!」


俺はその部下2人を殴り倒し、徹底的に焼きを入れた後、

あの男の行方を追わせた。

しかしここからが奇妙な展開になる。


男はそれから数日、数週間、数ヶ月、

数年経っても見つからない。


そしてあの木箱。

「この中に姉が居る」

と脅してあの男に謝らせ続けたその木箱だが、

その木箱に骨が入っていたのだ。


部下「…え?あの箱の中、空(から)だったんですか?」


「あ、ああ」


姉の遺骨はその木箱の中などに無く、

ちゃんと寺院で手厚く弔ってもらい、そこに置いていた。

あの木箱の中は初めから空(から)で、

ただあの男に謝らせ続けさせるために用意した

ダミーの箱だったんだ。

この事を知っていたのは信頼できる俺の部下1人だけ。

だからそいつも心底驚いていたようだ。


「どこ行きやがったんだ…」

あの男の行方が気になる。

全く手がかりがなく、俺たちの特殊な

ルートを使っても一向に網にかからない。


そもそも見張りにつかせた部下2人が

熟睡していたと言うのもおかしな話。


だいたい外から鍵をかけていたのに

あの倉庫からそう簡単に逃げられるはずがない。

俺が場を外し、戻ってくるまで数時間。

その間にあんな形で、忽然と姿を消し

用意周到に逃げおおせたとでも言うのか?


信頼できる部下「この骨が誰のものか、検証する必要があるかもしれませんね」


「…そうだな」


俺たちは2人揃って、

かなり信じられないことを想定していた。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=9ruOC77NhUU

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木箱の骨 天川裕司 @tenkawayuji

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