第24話 約束を忘れた元カレに抱きしめられました


 乾かし終わってドライヤーが止まるとそれがきっかけになって、思わず夢乃ゆめのの手首を捕まえる鷹田たかだ


 ——えっ?


 引き寄せられた勢いに、夢乃の手から落ちたドライヤーが転がる。


 気がつけば鷹田に抱きすくめられている夢乃。お風呂上がりの良い匂いが鷹田の身体からした。


 自分の頬が熱くなるのかわかる。


 夢乃は焦って離れようともがいた。


「へ、変なことしないって言ったじゃないですか」


「……ああ、言ったな」


「離してください」


「……嫌か?」


「——こういう事は、『彼女』として下さい」




 そう言い返されて腹立ちまぎれにきつく抱きしめれば、夢乃の苦しげな吐息が耳に届く。


 その吐息に鷹田は急激な情動を感じて、反射的に自分のものを夢乃の身体に押し付ける。彼女は身をよじってあらがった。


「やめて……か、帰ります……!」


 夢乃の必死の言葉に眉を顰めて彼女から離れる鷹田。解放された夢乃はぱっと彼から離れた。


 鷹田は目を伏せた。


 ——苦しい。


 夢乃は芯の強い女だ。


 頑固だといってもいい。


 無理強いすればこのまま本当に帰ってしまうだろう。


 無表情に戻ると、鷹田は何事もなかったようにソファに沈み込んだ。




 つづく

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