第25話 ダメ! 絶対、流されない!

 夢乃ゆめのは一瞬の嵐に翻弄されて動悸が止まらない。久しぶりに鷹田たかだに抱きすくめられて、身体が熱くなったのを自覚する。


 ——ななな、何!? 急に!


 しかも二人とも風呂上がりだ。


 ——油断した。


 夢乃はうかつな行動をした自分を恥じた。どこか鷹田に対してガードを緩め過ぎたのだと反省する。


 ただ——。


『嫌か?』


 と聞かれた時、一瞬言葉に詰まったのも事実だ。


 ——私……。


 だめだ。


 このままここにいたら、間違いが起きてしまう。


 夢乃は今からでも帰ろうとソファにいる鷹田に声をかけた。


「鷹田さん、私やっぱり帰……」


 言葉が途切れたのは、鷹田の様子がおかしかったからだ。


「鷹田さん?」


「う……ん?」


 先ほど飲んでいた薬が効いて来たらしい。眠くなって来たのだ。


 ソファで眠られても困る。


「仕方ないな、もう」


 夢乃は鷹田に寝室に行くように促す。


「鷹田さん、ほら風邪ひきますよ」


「……ん」


 自分でも自覚しているのか、ゆっくりと鷹田は立ち上がる。


 途中で倒れられても困る、と夢乃も距離をとりつつ、ついて行く。


 きちんと整えられたベッドになんとか潜り込む鷹田を見届けると、間違ってもベッドに引きずり込まれないよう、すぐに離れる夢乃。


 そのまま部屋を出て行こうとすると、鷹田は、横になりながら片手を出してきた。


「ん……」


 眠るまで夢乃に握っていてほしいだけ。


 警戒しつつも夢乃が手を握ってやると、すうと眠りに落ちていく。それを確認した夢乃はリビングで寝る為にそっと部屋を出た。




 つづく

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