第4話 どうやらオレ様彼氏は弱っているようです


 その日からの鷹田の落ち込みは酷かった。


 夢乃のことを思うと、眠れないし食事も喉を通らない。


 かろうじて出社してもわずか数日で別人かと思うほどやつれていた。見るに見かねて黒井が知り合いの心療内科に連れて行ったくらいだ。


「いい? この薬飲むと眠れるからね、鷹田チャン」


「……うるせぇ……」


「せめて何か食べなよ〜」


「……食いたくない」


 落ち込む原因を知っているだけに無理強いできない黒井はため息をついた。


「でも頑張って会社来てるじゃない。えらいよー」


「……行けば夢乃に会える……」


「鷹田チャン、その考えヤバいよ」


「……うるせぇ」


 黒井に連れられて帰宅すると玄関を入った瞬間から夢乃のことを思い出す。


 初めて家に誘った時、この玄関に「高級そうなおうちですね」って驚いていたこととか、うちのキッチンで「これくらいしか作れないけど」と言って料理してくれたこととか、「い、一緒にお風呂入るんですか?」と恥ずかしがっていたこととか——。


 ——なんだよもう、この部屋にはアイツの思い出が多すぎる。


 社内で有名なモテぶりはどこへやら、鷹田は夢乃に振られて憔悴しきっていた。




 つづく

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