第2話 お姉さんとの同居生活スタート

「どうぞ」


「おじゃましまーす……」


 佳織姉さんのマンションに入り、彼女に案内されて、恐る恐る家に入る。


 七階建ての結構高そうなマンションで、部屋も広く家賃が高そうな感じがしたが、そんなに稼いでるのか佳織姉さんって?




「ここが私の仕事部屋でーす♪」


 まず、佳織姉さんの仕事部屋に案内されると、高そうなパソコンに液晶タブレットが備え付けてあった机に、よくわからない機材もあり、素人の俺でもイラストレーターやってんだなってのがわかった。


 壁には色々なアニメの美少女キャラのポスターや、イケメンキャラのポスターが貼られ、本棚には漫画本や雑誌、イラストレーター用の教本なんかがビッシリと陳列され、趣味を仕事にしてるんだなって感心してしまった。


(そういや、佳織姉さんの部屋ってこんな感じだったな)


 子供の頃、佳織姉さんの家に遊びに行くと、見たことない漫画やゲームがいっぱいあり、めちゃくちゃ楽しみにしてたの思い出した。


 あの頃から本当に変わって無いんだなとしみじみ思いながら、部屋のポスターを眺めていると、


「あれ? これって四星オリオン?」


 ある金髪の美少女ポスターが目に入る。


 今、人気急上昇中のパーチャルアイドルで、俺もチャンネル登録している四星オリオンではないか。


 もしかして、佳織姉さんも見ているのか、彼女の動画。


「あ、知ってるんだ。この子、私がキャラデザしたの」


「は? ま、マジですか?」


「うん、マジ」


 指差して佳織姉さんが言い、驚いて言葉を失う。


 ま、まさか……こんな可愛いキャラを佳織姉さんが!?


 てか、あの人気Vの産みの親だったなんて……信じられない!




「あと、この子や。あ、このライトノベルのキャラデザも私で、この表紙もそうだよ」


 俺に次々とライトノベルや雑誌、はたまた同人誌を見せつけ、得意気な顔をして説明していくが、もしかして佳織姉さんって結構売れてる?


 確かイラストの専門学校出てたと聞いていたから、それから数年で良くもまあここまで……


「どうだ、凄いだろ」


「マジで凄いです、恐れ入りました」


「へへ。あ、今度は君の寝室へと案内するね。この隣だよ」


 胸を張ってドヤっている佳織姉さんがとても可愛らしくて、ホッコリしてしまい、こんな凄い綺麗なお姉さんと同居してしまうなんて、夢でも見ているのかと思いながら、部屋の中を案内されていく。




「んじゃ、裕樹君がウチに来たのを記念してかんぱーい♪」


 夜になり、俺が来た記念のパーティーをやると言い出した、佳織姉さんが寿司やピザなど、デリバリーで色々なご馳走と酒をいっぱい注文し、彼女と乾杯する。


 もちろん、すべて佳織姉さんの奢りで、本当に良いのかと思っていたが、お姉さんに任せなさいと言わんばかりに、全部現金で支払ってしまい、この人、どんだけ金を持っているのかと


「ほらほら、飲んで」


「俺、未成年なんですけど」


「これはノンアルだから、大丈夫。とりあえず、気分だけでも味わいなって」


「はあ……じゃあ、いただきます」


 ノンアルコールビールを俺のグラスに注ぎ、俺も一気にビールを飲み干す。


 何回か飲んだ事あるんだけど、苦くてちょっとなあ……もう少し大人になりゃおいしさもわかるんだろうか?


「んん……ぷはあっ! ああ、でも裕樹君、来てくれて嬉しいなあ。すごく大きくなってビックリしたよ。前はこんな小さかったのに」


「まだ、小さいほうですけどね」


 恥ずかしながら、身長は百六十七センチと、平均以下で、あまり背は高い方ではない。


 まあ、佳織姉さんよりは高いんだが、それでももうちょっと身長が欲しかったよ、くそ。


「へへ……緊張してる?」


「そりゃ、こんな綺麗なお姉さんと二人暮らしなんて……大丈夫なんですか?」


「大丈夫って?」


「その……彼氏とかいないのかなって」


「居たら、呼ばないよ、いくらなんでも。お姉さん、フリー。だから、安心して


 マジか? それなら、一安心だが、そうなると佳織姉さんが俺を呼んだのって、もしかして俺の事を……。


(余計な期待を持つな。きっと、俺の事は弟くらいにしか見てないはずだ)


 実際、彼女は姉のような存在で、昔はよく面倒を見てくれたし、可愛がってもらってはいたと思うが、流石に好きって事はないだろう。


 と言い聞かせながら、目の前のご馳走をがっついていく。


「ま、心配しなくてもー。明日から、お姉さんのお世話を色々としてもらうよ。だから、今日は思いっきり羽を伸ばして、ゆっくりしてね」


「はは、はい」


「うん。んじゃ、どんどん食べな。足りなきゃ、お姉さんがガンガン注文するから」


「食べきれないですよ、こんなに!」


 ただでさえ、二人じゃ食べきれない位の量があるのに、これ以上は食べられるはずはない。


 が、佳織姉さんは酒を飲みながら大はしゃぎし、俺もそれに乗せられて、彼女との宴会を楽しんでいったのであった。




「お風呂上りました」


「うん」


 夕飯を食べ終え、お風呂から上がると、佳織姉さんは机に向かって、一生懸命にイラストを描いていた。


 早速、仕事か……大変だな、本当に。


「仕事ですか?」


「まあね。依頼がちょっと溜まっちゃって。今日は徹夜かなあ」


 もう夜の十一時過ぎてるのに、徹夜して作業しないといけないとは大変だ。


 手伝おうにもイラストの描き方など全くわからないので、手伝いようがなく、ただ頑張れとしか言えないのが歯痒かった。


「何か、夜食でも用意しましょうか?」


「今日は良いや。いっぱい食べたし。あ、ホットミルクでも頼もうかな。今夜冷えそうだから」


「ホットミルクですね」


 それならすぐに出来ると、キッチンヘと向かい、冷蔵庫から牛乳を出して、ミルクを温める。


 早速、頼ってくれたのが嬉しく、こんな俺でも力になれればと心をこめてミルクをカップに注いで持っていった。




「はい、どうぞ」


「ありがと。んーー、ちょっとリラックス出来たかも。んじゃ、お姉さん、頑張るから、君はもう寝なさい」


「はい。明日、朝食どうします?」


「んーーー。起きたら、考える。いつ起きるかわからないけど、その時は宜しくね」


「はい」


 ホットミルクを飲みながら、佳織姉さんが俺にそう言い、俺もそのまま隣の寝室へと向かって布団を敷いて床に就く。


 今日から本格的に始まる、佳織姉さんとの同居生活。


 早速、夕飯を奢られてしまったが、果たして、上手くやっていけるのかと不安に思いながら、仕事を頑張る佳織姉さんを他所に眠りに就いたのであった。


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