第2話
「少し、話は逸れてしまうんだけどね。太陽って言うのは光っているわけではなくて、燃えているんだよ。その余波で光が生じているだけでね」
「……太陽が、燃えてる?」
「そう。燃えてるんだ」
「……ということは、ですよ?誰かが、それこそ神様がお昼はずっと明るく照らし続けている。ってことですか?だって、さっき、燃えるには熱と、可燃物、そして酸素が必要なんですよね?それなら、誰かが可燃物と酸素を供給してあげないと消えてしまいます」
「まぁ、そうなると、仮に光ってても誰かがエネルギーを供給しないといけないんだけどね」
「……た、確かにそうですね。そういえば、太陽について疑問に思ったことなんてありませんでした」
ハッと驚いた表情をした少女は、増える疑問にうーんと頭を抱えて唸る。
「まぁ、詳しいことは今関係ないから置いておいて。さっき君が言ったように、太陽も同じ理屈で燃えてるんだよ。それで、その熱がここまで届いてるの」
「……師匠。太陽の話が気になって仕方がないのですが……?」
何故か手を挙げて、少しジト目で講義が飛んでくる。
「大体。あんなに遠くに、それこそ雲やドラゴンよりも遠くにある太陽がここまで熱を届かせる事なんて可能なんですか?」
「まあ、太陽はこの世界より大きいからね」
「!?こ、この世界っていうと……大陸と海、全てを含めてってことですか?」
口をあんぐりと開けてオーバーに驚く少女。それを今度は青年がジト目で見つめて、話を続けて。
「そうだよ。で、話を戻すんだけど「ちょ、ちょっと待ってください!師匠!」
「はいはい。もうわかったから。太陽の話はまた今度ね。で、レンズを使った発火点についてだけど」
「師匠。発火点ってなんですか?それから、絶対に後で、太陽の話もお願いしますね」
「発火点て言うとは、物にはそれぞれ燃えるために必要な温度があるんだよ。例えばだけど、木材だと180℃を超えたあたりから熱分解が始まって可燃性ガスを発生させるんだけど、250℃を変えた時に火源を近づけると引火するんだよね。これを引火点って言うんだけどね。で、そこから更に木材を熱すると400℃くらいから勝手に火がついて燃え始める。ちなみにこれが、発火点だよ」
「……つまり、自然発火。ということですか?」
「そうだね。でね、物によるって話なんだけど、これが木材じゃなくて木炭になると、発火点は320℃くらいまで下がるんだ。ちなみに、人間の発火点は1000℃以上らしいよ」
「……最後の情報、必要でしたか?」
「いやいや、例えばだよ?例えば、魔法は直接人間には作用しづらい。って話があるでしょ?でも、人間の周り、空気を振動させて、熱すれば勝手にその人は燃えるわけだよ。しかも、工程三つのうち二つを省くからコスパも最強。凄くない?」
「凄くないです。絶対にしないでくださいね」
「まぁ、その前に人間のタンパク質が42℃を超えると変性して、細胞死するんだけどね」
「……」
「魔力消費も極小だ」
少女はジト目だった。完全に目が据わっている。
「まぁ、熱については一旦これくらいかな。といっても後はまぁ、そんなでもないかな」
「といいますと?」
「えーっと、じゃあまず可燃物なんだけど、これは恐らく魔力が使われている。魔力自体が可燃物なのか、それとも魔力が可燃性の何かに変化しているのかは人それぞれというか、不明というか。兎に角、そんな感じなんだよね」
「なるほど?詳しくお願いできますか?」
「そうだね。例えばだけど、魔法には発動方法が複数存在するよね?」
「はい。まず、詠唱ですね。決まった文言を発声することで生じる現象です」
「そう。詠唱。これには恐らく、世界の……というと大袈裟だけど、魔力の改変を語句で行っている。だから、その、語句に可燃物を指定しているものがあれば、魔力が指定の可燃物になっているし、指定がなければ魔力をそのまま燃焼している。因みに、燃費がいい魔法は、この可燃物の発火点が低い物で更に、燃焼のコスパが高い物の可能性が高い」
「……ちょっと待ってください?それって詠唱式の解読をする上でとても大事なことではありませんか?」
「そうだね。でも例えばだけど、詠唱の意味が」
【魔力を振動させて発火。前方に打ち出す】
「だった場合、これに似た詠唱として」
【魔力を可燃性ガスに変更し振動。発火させて前方に打ち出す】
「みたいな詠唱式があるんだよ。でも、実際は魔術文字で書かれていて解読は難しい。更に、解読できたとして、その文字の変更先。魔力を別のものに変えるとして、燃費のいい物質の魔術文字と名前が分からなければ変更は出来ないんだよ」
他人のプログラミングがわからない。上に、自作言語しか使われてない感じ。
「……確かにそうですが、しかし、原語の一覧表などを作成すれば格段に技術は進歩します」
「そうだね。それは君に任せるよ」
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