ブルーワールドナイトメア〜"神様"となった僕の仕事は『怪事件』の解決でした〜
第1話 物語の目覚め〜Wake Up〜
蝉時雨が朝日のもとで響く頃、彼は目を覚ました。
普段よりも目覚めの悪い朝だった。
散らかった部屋の中であくびをひとつ漏らし、消し忘れていたであろうテレビの画面を見つめる。
画面には朝のニュース番組が流され、世界の経済状況や芸能人のゴシップ、子猫や子犬などのペット情報が伝えられる。
なんの役に立つのかもわからないことを伝えられるのに嫌気が差してテレビの電源を消そうとした瞬間、番組のコーナーが近所の花火大会の情報へと切り替わった。
その時、彼は思い出すように呟いた。
「そうか。今、夏休みだったな。」
彼の名前は成愛ヤルセ(なるあいやるせ)。
17歳の男子高校生で、恋人はいない。
この蜂ヶ海市の隅に建てられた家で一人暮らしをしている。
成績は常に優秀で、友人にも恵まれ、恋人がいる時期もいくつか存在するような明るく優しい少年だった。
だが、彼は1ヶ月前から学校へ通うことを止め、薄暗い部屋の中で引きこもり生活をしている。
なぜ、彼はこの生活をするようになってしまったのか。
それは、彼の大切な家族を、皆失ってしまったからであった。
彼は父親を幼稚園の頃に亡くし、それからは母親と一つ違いの妹と3人でこの家で暮らしていた。
大黒柱の父親がいなくなっても、貯金や親戚からの支援によって、幸せな日常を送れていたという。
だが、母親は1年前の秋に交通事故で他界してしまった。両親を亡くしたヤルセは妹と2人で支え合って生きようと決意したのだが、その妹は2ヶ月前に男に連れられて家を出ていったという。
家族全員を失ったショックで、彼は鬱となり引きこもりを始めたのだ。
健康的だった彼の身体はやつれ、目の下のクマも目立つようになった。
そして鬱が深まると、それに応じて彼の心に自殺願望が芽生えるようになった。
その証拠に、床にはネットで購入した炭と七輪、安価で作られた首吊り用のロープが転がっている。
その隣りに置かれた机の上には、オーバードーズをする為に大量購入した市販の風邪薬が剥き出しのまま山積みになっている。
だが、どれも使用された形跡は無く、ただそこに存在しているだけだった。
自分の命を手に掛けようとするも、最後には思いとどまってしまう、それが彼の悩みだった。
ヤルセは、死にきれないままでしぶとく生きる毎日にうんざりしていた。
というか、度胸のない自分に腹を立てていたのだ。
テレビの画面にはまだ花火大会の映像が流され続けている。
大きな音を立てながら夜空に打ち上がり散っていく花火は、本物の花が散っていく様子よりも儚く寂しい。
俺も花火みたいに一瞬で弾けて散っていきたい、ヤルセはそう心のなかで唱えた。
すると、彼はある事に気がついた。
花火の映像の奥に、何やら目立つ大きな建造物が見えるのだ。
それはそびえ立つ山の頂点付近に立ち、夜の街見下ろしている。
スマホで調べてみると、それが10年以上前に閉業した観光客用のホテルだということがわかった。
なぜ何も無い山でホテルを建てようとしたのかはわからないが、ヤルセはこの廃ホテルに興味を持ち始めていた。
(ここから飛び降りたら、一瞬で死ねるかもしれない。)
彼は、飛び降り自殺をしようと考えたのだ。
一方その頃、一般の人間が入り込むことは絶対不可能である神々の領域、天界に位置する『神楽連合第12世界支部』にて世界の神々が集められていた。
巨大な円卓を囲み各々異なる姿勢で座る神達は互いに喋ること無く、沈黙の中で過ごしている。
すると、円卓を時計に例えて6時の方向に座っていた白いマントを羽織るオリンポス12柱の知恵の女神、アテナが立ち上がった。
他の神達の注目が全てアテナに集まる。
その時、彼女は咳払いをひとつしてから口を開いた。
「これから、第12世界滅亡防止会議を開始します。」
その言葉が空間に響いた時、神々の表情が真剣なものに変わった。
沈黙が裂かれ、地響のような音が何処からか鳴り始める。
今、世界の命運をかけた重要な会議が始まろうとしているのだ。
ーーー
はじめまして、月雲とすずと申します。
この作品は、2年ほど前に私がカクヨムで投稿していた作品のリメイクです。
以前の作品は完結させることができなかったので、この作品を完結させることを目標に頑張ります。
1週間に1〜2話の投稿頻度で活動させていただきます。
午後6〜7時(18〜19時)に投稿するように心がけます。
コンテストや企画にも積極的に参加したいと思っています。
よければ、フォロー、いいね等々よろしくお願いします!
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